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医療費控除とは、一年間で一定金額(原則10万円)を超える医療費の支出をした人は、その一定金額を超える部分の金額について所得控除が受けられる税制上の措置です。
高額療養費制度とは、 医療機関や薬局の窓口で支払う医療費が1か月単位の上限額を超えた場合、その超えた額を支給することで、過度な医療費の負担とならないようにする社会保障制度です。
高額療養費制度の対象となるのは、いわゆる「保険診療」であり、保険の”効かない”「自由診療」や差額ベッド代などは対象となりません。
一方、医療費控除の対象については、保険診療だけでなく常識的な自由診療や薬局での医薬品の購入なども含まれるのです。
では、医療費控除の対象になりそうだけどならない費用にはどんなものがあるのか。今回はその点についてまとめてみることにします。
一見、医療費控除の対象になりそうだけどならない費用には次のようなものがあります
認知症という病気のケアのために要する訪問介護やデイサービスなのですから、その費用は当然医療費控除の対象だと思われるのですが、実際には、医療費控除の対象とならないものも多々あります。
同じデイサービスでも医療機関で実施される医療系のものは医療費控除の対象ですが、医療機関以外で実施される福祉系の場合には、単独での利用では医療費控除の対象になりません。
同様に、看護師による訪問看護は医療系で医療費控除の対象ですが、介護士による訪問介護は福祉系なので単独利用では医療費控除の対象にはなりません。
施設サービスについては、その利用した施設の種類ごとに医療費控除の対象となる範囲が次のように定められています。
施設サービスの対価(介護費、食費及び居住費)として支払った額の2分の1に相当する金額
施設サービスの対価(介護費、食費及び居住費)として支払った額
施設サービスの対価(介護費、食費及び居住費)として支払った額
これら以外の「日常生活費」「特別なサービス費用」は施設の種類に関わらず医療費控除の対象とはなりません。日常生活費とは、主に理美容料金のようなものです。
また、認知症などのために入居したとしても「有料老人ホームの入居費用」は、併設する医療機関で治療を受けた費用以外、医療費控除の対象とはなりません。
病気の予防のために受診した健康診断や人間ドックの費用は医療費控除の対象となりません。
ただし、その受診の結果、重大な疾病が発見され引き続き治療をした場合には、それらの健康診断や人間ドック受診の費用も医療費控除の対象となります。
入院治療をする際には、その治療に当たる医師に謝礼金を手渡すこともあるでしょう。これらの医師に手渡した謝礼金は医療費控除の対象にはなりません。
病院以外の薬局等で購入した疾病の治療のための医薬品代についても医療費控除の対象になります。
ただし、ビタミン剤など健康増進目的や病気予防のために購入した医薬品購入費用については医療費控除の対象とはなりません。
あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整体師による施術の費用も医療費控除の対象になります。
ただし、疲れを癒やしたり体調を整えるといった治療と直接関係のない施術については医療費控除の対象とはなりません。
保健師、看護師等に療養上の世話を依頼した対価だけでなく、家政婦さんに病人の付き添いを依頼したときの対価については医療費控除の対象となります。
しかし、家族や親類縁者に支払った病人の付き添い費用は医療費控除の対象となりません。
医師等による診療等を受けるための電車賃やタクシー代などの通院費は医療費控除の対象となります。
ただし、自家用車で通院する場合のガソリン代や駐車場の料金等は医療費控除の対象となりません。
医師等による診療や治療を受けるために直接必要な義手、義足、松葉杖、補聴器、義歯などの購入費用は医療費控除の対象になります。
ただし、治療を受けるために直接必要としない近視や遠視のための眼鏡、補聴器等の購入費用は医療費控除の対象となりません。
出産で入院する際に、電車、バスなどの通常の交通手段によることが困難なためタクシーを利用した場合、そのタクシー代は医療費控除の対象となります。
ただし、実家で出産するため実家に帰省する交通費は医療費控除の対象にはなりません。
入院に際し、寝巻きや洗面具など身の回り品を購入した費用は、医療費控除の対象になりません。
病院に対して支払う入院中の食事代は、一般的には医療費控除の対象になります。
しかし、他から出前を取ったり外食したりしたものは、医療費控除の対象にはなりません。
相部屋が満室などによる「病院の都合」や治療に要するとの医師の判断で個室に入院した場合の差額ベッド代は医療費控除の対象となります。
ただし、「本人や家族の都合」だけで個室に入院したときなどの差額ベッド代は、医療費控除の対象になりません。
発育段階にある子供の成長を阻害しないようにするために行う不正咬合の歯列矯正のように、歯列矯正を受ける人の年齢や矯正の目的などからみて歯列矯正が必要と認められる場合の費用は、医療費控除の対象になります。
しかし、同じ歯列矯正でも、容ぼうを美化するための費用は、美容整形費用と同様医療費控除の対象になりません。
医療費控除については、従来の領収証を送付する方式から「医療費控除の明細書」を記載し、領収証は自身で保管しておく方式に変更されました。
当初の申告よりも税額が少なかったとして税金の還付を求める「更正の請求」をすると「それじゃ医療費控除も見せて」などと言われることもごく稀にありますので、領収証はきちんと保管しておいてくださいね。