決算書特集-その6:安全性を見る

<A社(金属製品製造業)の決算書>


◆「安全性」をみる
「安全性」とは要するに
お金が足りなくなって支払不能
になるリスクがどれだけあるか
ということです。
この安全性を知るための比率として
多くのものが掲げられますが、
今回は「短期的な安全性」
「長期的な安全性」について
それぞれ二つずつ紹介することにします。
◆短期的な安全性
すぐにその会社が資金繰りで
ショートを起こさないかという
支払能力を見る指標の代表例として
「流動比率」
というものが挙げられます。
これは、1年以内に支払わなければならない
買掛金や支払手形などの流動負債を、
おおむね1年以内で換金可能な
現預金や売掛金、在庫などで
支払うことができるのかを表わしています。
算式としては、
流動比率=流動資産÷流動負債(%)となります。
業種平均値を挙げると
製造業(金属製品製造業)160%
卸売業(電気器具卸売業)110%
小売業(婦人服小売業) 170%
サービス業(理容業)  200%となります。
なお、A社の流動比率は500÷300=167%となり、
やや業種平均値を上回っています。
理想的な数値としてはこの
「流動比率が200%」などと多くの
教科書には書かれていますが、
それは、在庫やその他の資産については、
流動資産といいながらも決して
そのまま簡単には換金などできない
ことから当然流動資産の方が
流動負債を大幅に上回る必要があるということです。

このほかに短期的な安全性を
見るための指標として
「当座比率」というものがあります。
これは、流動資産の中でも
特に換金性の高い現金預金と
受取手形・売掛金を「当座資産」いい、
その当座資産と流動負債を比較
することで安全性を判断します。
算式は
当座比率=当座資産÷流動負債(%)となります。


◆長期的な安全性
今度は短期的な支払能力ではなく、
構造的にこの会社は資金繰りに
困らないか
を知る必要があります。
そのための代表的な指標として
「固定長期適合率」というものが挙げられます。
土地や機械などの固定資産は、
投下した資金が回収されるには
非常に長い時間を必要とします。
ですから、この固定資産を
購入するための資金も返済の
必要のない自分のお金か、
あるいは長期間での返済でも
良い長期借入金でまかなう必要があるでしょう。
これが、短期借入金やましてや
支払手形などで土地や機械を購入したのであれば、
当然資金ショートの可能性が高くなります。
このようなことがおきていないかを
知るための指標が固定長期適合率です。
算式は
固定長期適合率=固定資産÷(固定負債+純資産)(%)
業種平均値は
製造業(金属製品製造業)80%
卸売業(電気器具卸売業)95%
小売業(婦人服小売業) 60%
サービス業(理容業)    70%となります。
なお、A社のこの比率は500÷700=72%となり
業種平均値よりはやや良いといえます。
この固定長期適合率は絶対に100%以下でなければなりません。
もし100%を超えているのであれば、
資金回収に極めて時間のかかる
固定資産をすぐに返済の必要なお金で
無理矢理なんとかしながら必死に
返済していることになるからです。
このほかに長期的な安全性を見る指標に
「自己資本比率」というものがあります。
これは総資産に占める自己資本(純資産)
の割合を見るもので、
この比率が高いほど、必要なお金を
自分の資金でまかなっていることに
なるので健全といわれます。
なお、算式は
自己資本比率=自己資本÷総資本(%)
です。
<まとめ>安全性は短期的・長期的に見る。
まずは短期は「流動比率」、長期は「自己資本比率」を!

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