◆生産性をみる
「付加価値の高い仕事をしろ!」
などといわれたことはありませんか?
この場合の付加価値の高い仕事とは、
私は「お客様も喜んで会社も儲かる仕事」
という意味だと思っています。
経営分析を行う上での「付加価値」とは、
会社が「新たに稼ぎ出した価値」のことであり、
その会社の生産性を知るためには、
この「付加価値をいかに効率よく作り出しか」
を判断する必要があります。
なお、この付加価値の算式には
いろいろなものがある上に、
その算式も非常に煩雑であるため、
ここでは簡便的な算式を利用することにします。
まずは、製造業以外であれば、
付加価値はほぼ総利益(粗利益)と同じになります。
製造業であれば、「売上高―外注費―材料・消耗部材費」
と考えてもよいでしょう。
この生産性を判断するための指標としては
「従業員一人当たりの付加価値」が挙げられます。
この比率は、その名のとおり一人の従業員が
どれだけの付加価値を稼ぎ出しているのかをあらわしています。
この数値が高いほど生産性が高い元気の良い会社であり、
そうでない会社は全体の総利益は
大きいにしても決して効率の良い会社ではない
ということになるのです。
算式は
一人当たりの付加価値=付加価値合計÷従業員数(円)となり、
業種平均値は概ね
製造業(金属製品製造業)11,000千円
卸売業(電気器具卸売業)9,500千円
小売業(婦人服小売業) 7,000千円
サービス業(理容業) 4,000千円
程度と考えてよいでしょう。
A社のこの数値は(2,000-700)÷150人=8,667千円となり、
一人当たりの生産効率は決して高いとは言えないようです。
「一人前の従業員なら給料の3倍を稼げ!」
とよく言われます。
これは、利幅である粗利益額の3分の1程度が
従業員の給与として支払える金額として
妥当な水準ということを表わしています。
この粗利益額(正確には付加価値)
に占める人件費の割合を示したものが
「労働分配率」というものです。
算式は
労働分配率=人件費総額÷付加価値です。
<まとめ>生産性を知るには、
一人当たりの稼ぎ(付加価値)を算出することが大切
さて、3回に分けて安全性、収益性、生産性を分析してみた結果、
このA社の場合、ある程度の利益も確保し、
安全性にそれ程問題はないものの、
従業員一人当たりの生産性が高くないため、
結果として生産性や収益性にまだまだ改善点があるようです。