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会社の資金が底をつき倒産をする場合、以前はそのまま放置されることが多かったものの、最近では、法改正により、破産などの法的整理がされることが大半を占めているようです。
中小企業が破綻した際には、代表者が会社の借り入れについて連帯保証をしているはずであることから、会社の破産=代表者も自己破産となるケースがほとんどだと言えます。
では、自己破産をした会社代表者は、もう別の会社の役員になることはできないのでしょうか?
そこで、今回は、自己破産と役員等の就任の制限についてまとめてみることにします。
会社が自己破産手続きをするとほぼ同時に代表者個人の自己破産手続きもなされます。
自己破産をすると、プラスの財産は売却等により現金化され、その資金で債務の弁済がなされたのち、返しきれない債務については、「免責」されその支払を免れることができるのです。
なお、自己破産については、保有する資産の状況などにより「管財事件」と「同時廃止」の2つに分かれます。
自己破産をする人が「高額な資産」(33万円以上の現金や20万円以上の価値のあるもの)を有している場合などでは、裁判所から選任をされた「破産管財人」が財産の精査や免責とするにはなじまない理由がないかのチェックをした上で、債務の支払いの免除をする必要があります。
このような手続きが必要なケースを「管財事件」といいます。
管財事件の場合、破産の申立から免責までは少なくとも6ヶ月の期間は必要といわれています。
なお、個人事業主が自己破産をする場合には、原則この管財事件とされますが、引き継ぎ予納金が少額で済む「少額管財」として取り扱われることが多いようです。
自己破産をする人が「高額な資産」(33万円以上の現金や20万円以上の価値のもの)がない場合、財産の換金をしたところで債務に充てるような資金はさほどできません。
なので、これらの「高額な資産」を保有していない場合で、その後の免責について、破産管財人の調査の必要がないのであれば、破産開始手続きと同時に破産手続きを完了させる「同時廃止」という手続きが採られます。
この同時廃止の場合には、自己破産の申立から3-4ヶ月程度で免責がされ、債務はなくなります。
なお、マイホームを保有していたとしても、破産申し立て前に「任意売却」をし、その代金はすべて住宅ローンの返済に充てるなどをして「高額な資産」がない場合には、同時廃止とされるのです。
取締役や監査役などの役員は、会社と委任契約をすることで就任をしています。
取締役などが個人的な借入金などを理由にして自己破産の開始決定がされた場合には「委任終了事由」に該当し、自動的に、役員を退任させられます。
しかし、自己破産をしたとしても株主総会等で取締役や監査役にすぐに就任することは可能です。
以前は、自己破産手続きが開始してから免責になるまでの期間については、「破産者」として会社の役員にはなれないと定められていましたが、今はそのような取り扱いはなされていません。
ですから、自分の会社が破綻し、その役員が自己破産をしたからといって、すぐに別の会社の役員となることは可能なのです。
取締役については、自己破産をしたとしてもすぐに就任できるものの、自己破産手続きが開始した「破産者」がなれない職業があります。
それは、弁護士や税理士、公認会計士、司法書士、警備員、宅地建物取引士などです。
自己破産手続きがされてから免責がされるまでの期間については、これらの職業につくことはできません。
万一、その期間にこれらの業務に従事をすれば「無資格」で業務に従事したことになり、相当まずいことになる。
まあ、所属団体が一個人の破産申し立てを把握できるとは思いませんが、もし、そんなことをしていることが発覚したら債権者は黙ってないでしょうし。
なお、自己破産をしたことをもって、これらの資格が剥奪されるということではなく、免責されるまでの間は業務に従事することができないということであり、免責されたあとは「復権」をし元通りの業務に従事することができるのです。
だからといって、そういうことにならないよう質素倹約に務め、ミスをして訴えられることのないよう慎重な処理を心がけるようにしたいと思います。