新型コロナの先行きは不透明ではありますが、飲食、観光、イベント業など特定の業種以外は、思ったほどは被害が大きくないというところも多いのではないかと。
「売上高そのものは1割減」という微妙な業績悪化ながら、固定費の大きい業種ほど利益減少幅が大きいというなんとも真綿で首を締め付けられるような感じです。
一方で、緊急融資のお金で手許資金が潤沢になったため、良くないと思いながらも今ひとつ切迫感がないという「気づいたときには手遅れ」になりやすい状況でもあります。
こういう環境下では、緩んだ企業体質を改めて、”ダイエット”モードに切り替えていかねばなりません。
固定費と言っても、中小企業では、人件費、支払家賃、支払利息の三大固定費が大半で、さらに家賃、利息も人件費を”センターピン”として増えていくもの。
ですから、本気で固定費削減をするのであれば、人的生産性の向上に手を付けないと大した効果はないです。
それでも、今回は、緩んだ企業体質を改めるという”ファイティングポーズ”として、諸経費の削減について「こうやって手を付けよう」という話をしてみようと思います。
人件費などの主要な固定費以外の細かい諸経費についても、知らず知らずのうちに増えていることが多いもの。
そんなムダな諸経費の”大掃除”が必要です。
そのために必要なことは、まずどんな諸経費がかかっているのかを明らかにすることです。
ですから、諸経費一覧表を作ってみます。
そこに書くべきことは、
・支出内容
・現状の支払金額
・削減可能額
・重要度
・改善案
の5つです。
その中でも、「支払内容」「現状の支払額」はすぐに埋まるはずです。
その上で、その支出がどれだけ不可欠なものであるのかを重要度としてA→B→Cなどとつけてみます。
<諸経費一覧>
支払内容 | 現状の支払額 | 削減可能額 | 重要度 | 改善案 |
観葉植物レンタル | 20,000円 | C | ||
ウォーターサーバ | 10,000円 | C | ||
社内清掃 | 50,000円 | B | ||
業界紙購読 | 30,000円 | C | ||
備品倉庫 | 60,000円 | A |
どんな諸経費がかかっているのかを明らかにしたあとで、今度はそれを本当に減らせるものなのか、減らすならばどうすればよいのかを検討します。
その際に、現場に意見を求めると「ムダな諸経費を削減しよう」という総論では賛成されていたものも、具体的に自分たちの活動経費を削減されるとなると「できない」理由がたくさん上がってきます。
ところが、思い切ってカットしてみたところ、最初は多少の混乱はあるものの時間が立てばなくても影響のないことの方がはるかに多いものです。
具体的に、諸経費削減のための改善案を考える場合、重要度の低いものから次の4つのステップで検討をしてみるとよいでしょう。
重要度の低いものは、とりあえず「全面廃止」を前提に考えます。
今までは惰性で支払っていたものも、いざなくなると思うと急になくてはならないものに思えてきますが、実際に重要度の低いものはなくなっても大して影響はありません。
「今から新たにお金を払ってでも必要なものなのか」「やめて浮いたお金で他のものが買えるとしてもあえて支払う必要があるのか」という問いかけを基準にして思い切って全面廃止から考えてみましょう。
例えば、本当に観葉植物のレンタルやウォーターサーバが必要なのか。元々なかったときにはどうであったのかを思い返し、廃止を検討してみるということです。
重要度はさほど高くはないが、全面廃止までは出来ないものいついては「総数削減」が出来ないかを考えます。
具体的には、数量や種類、あるいは頻度などについて、減らしたところでさほど影響がないものについて、これも「今から新たにお金を払ってでも必要なものなのか」「減らして浮いたお金で他のものが買えるとしてもあえて支払う必要があるのか」という問いかけを基準にして、総数の削減が出来ないかを考えてみましょう。
例えば、定期購読をしている雑誌の種類を減らしたり、依頼している清掃の頻度を減らしたりということとです。
どうしても必要な商材だということだとしても、よりコストが安い代替品や代替サービスがないかを考えます。
例えば、電話代についてはSkypeやZoomといった無料通信サービスに、スマホ通信料金についてはキャリアからMVMO(格安SIM)に変更できないかを考えるということです。
なくてなはならい商材で総数も減らせない、代替サービスも見つからないという場合には、相手先に対して金額削減の交渉をします。
例えば、支払家賃など、どうやっても他のもので済ませることは出来ないものについては、大家さんに一定期間の家賃減額のお願いをしてみるということです。
これらを鑑みて実際に削減できそうな金額を諸経費一覧の「削減可能額」の欄に記入をしていってください。
自分の経費というのは、相手にとっての売上です。みんなが一斉に「経費削減・節約モード」になるということは回り回って自社の売上高が下がることにもつながるでしょう。
ですが、業績が地味に落ちながらも緊急融資で資金繰りに逼迫感がないという現在の状況では、このままダラダラと赤字が積み上がる体質になりがちです。
ですから、コロナを乗り切るという強い意志と緊張感を取り戻すためにも、「それって自腹でも必要なものなの?」という問いかけをベースに「絶対にカットできないと思っている諸経費もまずは切ってみる。それでどうしてダメならもう一度復活させればいい」という姿勢で今こそ諸経費削減に挑む必要があるのです。