6、「なぜ、銀行が門前払いをしたか」を考えたのか?
「75番の札をお持ちのお客様」
機械のアナウンスを聞き、
雑誌を置いた拓海は点滅するカウンターへと立っていく。
メガバンク最大の規模を誇る
「三友東京ユニバーサル銀行。」
度重なる合併で名前をまともに言うのも大変である。
「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件でしょう」
窓口係の女性が笑顔で応える。
「実は、お金を借りに来たんです。」
「住宅ローンですか?
そうでしたら、ただいまキャンペーン金利が
適用出来るこちらのタイプがお勧めです。」
「いやいや、事業資金なんですよ。」
「それでは、担当を呼びますので少々お待ちください。」
女性行員が支店長の横にいた男になにやら耳打ちをした。
目があったのを確認したのか、軽く会釈をした後その男が窓口までやってきた。
「どうぞ、こちらへ」
応接へ案内してくれたその男は、
後退した髪の毛のせいか、やたらと「おでこ」が広い。
それに眼鏡に出っ歯、これでクビからカメラを提げていれば
「ハリウッド映画で見る典型的な日本人」だ。
ただ渡された名刺には「支店長代理」と書いてある。
意外とエライみたいだ。
「え~、どんなご商売をなさっているのでしょう。」
「アパレルです。」
「あのシオックスがもうすでにうちと
取引を検討してくれているんです。」
まだ、何も決まっていないがきっと決まるはず。
拓海は「ポジティブシンキング」という根拠のない自信に満ち溢れていた。
「中国の商社も見つけすぐに生産もできるのですが、
「先にお金を支払え」なんていわれちゃって。」
「それでちょっとお金を貸してもらおうかな~ってね。
まあ数ヵ月後には入金はあるでしょうから。」
ネズミ男のようなこの支店長代理は、
目を輝かせてもみ手をはじめた。
「あのシオックスさんとお取引ですか。
当行にお声をかけて頂きありがとうございます。」
「で、ご商売はどれくらいつづけていらっしゃるのですか。」
拓海は、なぜそんなことを聞かれるのか
わからないと思いながらも応えた。
「いや、独立したばかり、
いま会社設立の手続きをしています。
やっぱり借り入れは法人でしたほうがいいんですよね?」
目の前の「ネズミ男」の眼鏡が冷たく輝いた。
「申し訳ございません。
当行ではご要望に応じられないようです。」
「え?天下のシオックスだよ。
それもまだ申込書も書いていないのになんで?」
「ええ、残念ながら当行では、
独立したばかりの方にお貸しできる融資はございません。」
笑顔の中にも、早く帰れと言わんばかりの
冷たいという態度に私の体感温度は急上昇した。
この感覚はどこかで味わったぞ。
そうだ、会社を辞めるときの
会議室の情景が頭をよぎった。
「話も聞かないうちになんだ!二度とこないからな!」
絶対に許さない。
どんなことがあっても絶対にこの銀行だけは利用しない!
ビックになってあの「ネズミ男」の顔を見返してやるからな!
★ポイント 銀行は、貸出先10件のうち1件でも
潰れれば赤字になる。
1年で4割が廃業すると言われる
独立起業者には冷たいがそれも当然。
【編集後記】
勝間さんの本のほかにもこんな厄介な本が
同じ日に発売。
ウェブ時代 5つの定理 この言葉が未来を切り開く!
儲かる会社にすぐ変わる! 社長の時間の使い方
門前の狼、後門の虎ですな。