10,不良品が出来るリスクは想定していたのか?
サンプルが来てから2週間後、やっとシオックスオリジナル商品の納品があった。
これぞ一発逆転の宝の山に見えたものだ。
しかし、満面の笑みが一気に曇ったのだ。
糸がほつれているものがある。
それによく見ると一つ二つではない。
むしろほつれているものばかりだ。
中にはケチャップの跡のついたものまである。
「なんだこれは、サンプルと全く違うじゃないか!」
あわてて無料電話スカイプを手にした拓海は、
上海の商社を呼び出した。
「どういうことだ!周さん。不良品ばかりじゃないか。」
「そんなことはない。ちゃんとチェックしている。」
「こんなものは日本じゃ売れないんだ。」
「中国じゃそんなことをいう人はいないよ。
日本人が細かすぎるんだよ。」
また、怒りで体感温度は40度に上がったようだった。
「もういい、返品するからサッサと返金してくれ!」
「残念ながら返金は出来ないよ。うちは悪くない。
どうしてもというなら次に頼んでくれたときに
値引きをしてあげてもいいがね。」
「ふざけるな!すぐに返金しろ!」
ヘッドフォンをたたき付けながらも、気がついた。
相手は上海。それも金は既に払い込んでいる。
沸々と胸が泡立ち、怒りを抑えるために
残りの缶ビールを煽ったのだ。
ちくしょう!埒があかない。
でもシオックスへの納品期限は近づいている。
だいたい、あの金は明代が俺との結婚のために貯めていた資金だ。
それを俺は「うまく言ったら結婚しよう」とまで言って借りたのだ。
この金だけは何とかして返さないと。
★ポイント 海外の業者は交渉が日本の業者以上に手強い例が多い。
委託する場合はその当たりのリスクも織り込んで判断を。
【編集後記】
先日、「俺100」の聖幸さんが東京にお見えだというので、smoothさん
を交えて、今回の新刊について「何が良くて何が悪かったのか」
の総括をお願いしまして。
聖幸さん、smoothさん、貴重なご意見ありがとうございました。
場所は、私のホームグラウンド銀座うかい亭。
オッサン3人で行くには、微妙な場所でしたね。