よく聞かれることに「株式投資をするのなら個人でやるのが良いのか、法人でやるのが良いのか」というものがあります。
新たなグループ会社を設立する際の株主を決めるのであれば、「その目的による」ということになると思いますが、上場株式や第三者の会社へ投資をするということですと、要するに儲かった時と損した時の税金はどうなのかということになるのではないかと。
そこで今回は、個人と法人では、株式投資の課税関係がどう違うのかをみてみることにします。
株式投資による譲渡益については、「売った時の価格ー買った時の価格ー諸費用」であるということは個人であっても法人であっても変わりがありません。
個人の場合は、「申告分離課税」といって、他の給与所得などと合算することなく、その譲渡益(株式の譲渡所得)に対して20.315%の税率で、譲渡益の金額にかかわりなく一律で課税がされます。
では、株式投資で損をした場合にはどうなるのでしょうか?
上場株式や上場している投資信託などの金融商品の損失については、他の上場株式や上場投資信託などの譲渡益や配当と通算(相殺)をすることができます。
さらに、それらを通算してもさらに損失が残る(「欠損金」といいます)場合には、確定申告をすることで、その欠損金を翌年以降3年間に渡り繰り越すことができ、その間に発生した上場株式や上場投資信託等の譲渡益や配当と相殺をすることができるのです。
一方、非上場の株式等の損失については、平成28年より上場株式等の譲渡益と相殺はできなくなりました。
つまり、他の非上場株式等同士でしか利益と損失を相殺できない上に、欠損金が生じても翌年以降に繰り越すことはできず切り捨てられてしまうのです。
*個人での配当についての課税はこちらをご覧ください
法人の場合には、上場か非上場かの区別以前に、株式投資自体を他の事業活動と区別することなく、すべての利益と損失が合算された上でその事業年度の所得となります。
法人の課税所得に対する実効税率(事業税を損金と考える)は原則約32%です。
ただし、資本金が1億円以下などの中小法人に対しては課税所得800万円までの部分については、その実効税率が約20%と軽減されます。
なお、事業活動全体で生じた欠損金は、翌期以降9期間繰り越され、その期間の利益と相殺することが可能です。
個人と法人での株式投資の課税関係をまとめてみると次のようになります。
個人 | 法人 | |
儲かった時 | 20.315%の申告分離課税 ★★ | 他の事業の所得と合算した上で (1)課税所得が800万円超の部分 約32%の課税 ★ (2)課税所得が800万円以下の部分 約20%の課税 ★★ |
損をした時 | (1)上場株式等 他の上場株式等の譲渡益・配当と通算し、欠損金は翌年以降3年繰り越し ★★ (2)非上場株式等 他の非上場株式等とのみ通算し、欠損金は切り捨て ★ | 他の事業の所得と合算した上で、欠損金は翌期以降9期繰り越し ★★★ |
(★の数が多いほど有利)
ザックリといえば、
上場株式等の投資であれば、儲かった時の課税は個人の方がやや有利で、損をした時のリスクヘッジは法人のほうがやや有利。
非上場株式等の投資であれば、儲かった時の課税は個人のほうがやや有利で、損をした時のリスクヘッジは法人の方がずっと有利ということでしょう。
あとは、儲かった時を優先するか損した時のことを優先するかを、上場か非上場かも考慮の上、好きな方を選べばいいということ。
その株式投資で儲かるか損をするかは誰にもわからないですからね。