クラウド型会計ソフトとして人気のある「マネーフォワードクラウド」。
会計を中心に請求書発行、給与計算、経費精算、マイナンバー管理などのアプリがあり、それらがクラウド上で連携されるというのがウリです。
以前は、それらを別々のアプリとして選択することが可能でしたが、2019年6月以降、原則として一体での利用となり、合わせて料金も改定されました。
今まで使っていなかったアプリも利用できるというメリットもありますが、会計ソフトしか使用するつもりのないユーザーにとってみれば、望んでもいない抱き合わせ販売であり実質的な値上げと言わざるを得ません。
そこで、今回は、この「クラウド型ソフト」とパッケージで販売されパソコンにインストールされる「インストール型ソフト」の料金体系の特色、そして、どちらを選ぶかのポイントについてまとめておくことにします。
まずは、結論をまとめておきます
クラウド型ソフト
・会社ごとに基本料金が必要
・グループ法人化している場合には、それぞれの会社ごとに基本料金が掛かる
・ユーザー数の制限内であれば、複数の担当者で共有しても1会社分の課金のみ
・給与計算等は一定件数以上の利用では従量課金での追加支払いが必要
・従業員の多い法人で利用をすると利用料金がインストール型よりはるかに高額に
・ソフトのアップデートは基本料金で自動で行われる
インストール型ソフト
・インストールするPCごとに課金。作成する会社数には制限なし
・グループ法人化しても、操作するPCが一台ならば課金は1台分のみ
・複数のPCへのインストールをする場合、データ共有だけでも追加ライセンス料支払い
・同時分散入力をする場合には、ネットワーク版が必要
・給与計算対象者が増えても操作するPCが1台ならば課金は1台分のみ
・ソフトのアップデートは年間サポート契約で対応。改正がなければそのまま使用も
クラウド型ソフトの料金体系は、1企業ごとに「基本料金」が必要となります。ですから、子会社や兄弟会社などを束ねるグループ法人化をしている場合、それぞれの企業ごとに「基本料金」が必要になります。
会計処理等をする企業数が増えれば、掛け算で基本料金が増えていくということです。
一方で、1企業のデータを操作するPCが増えた場合、マネーフォワードクラウド・freeeはプランごとの最大人数までは基本料金でそれ以上は追加料金が必要、PCAクラウド・勘定奉行クラウドはサーバー同時使用者数に応じて掛け算で料金が上がっていくなどそれぞれです。
その上、freeeやマネーフォワードクラウドで給与計算をする場合、一定人数以上の処理をすると、「従量課金」での追加料金が必要になります。
そのため、freeeの「人事労務」だと7人以上で、マネーフォワードクラウドだと一括使用の基本料金での5人を含めても16人以上の給与計算をすると、インストール型の「弥生給与」の年間サポート料金を超えてしまいます。(プログラムアップデートのみ対応の「セルフプラン」年36,100円)
実際に、アルバイトやパートの出入りの多い業種の場合、支給額はさほどないのに人数がやたらとかさんでしまい、ものすごく高額な使用料金になったという人もいますので注意が必要でしょう。
なお、法改正に合わせたり、新しい機能の追加にソフトのアップデートは、基本料金で自動に行われます。
弥生会計などのパッケージソフトをPCにインストールして使用する「インストール型」の場合、その使用をするPCごとにパッケージ購入またはライセンス料支払いが必要となります。(同時使用しなければ1ライセンスで2台のPCでの使用が認められるケースもあります)
ですから、経理担当者が複数で、それぞれのPCで作業を行う場合、操作をする台数に応じて利用料金が増えていくということです。
複数の経理担当者がいても、パソコンのデスクトップ上で使用することを前提とした「スタンドアロン版」であれば、それらのデータの共有にはDropboxを使用したり、弥生会計であれば独自のオンラインストレージである「弥生ドライブ」上を利用すれば良い。
ですが、拠点ごとに分散して入力をしたデータを本部で集計処理をするような場合や同時に分散して入力し3台以上で運用する場合には、「ネットワーク版」という独自のソフトウエアが必要です。(2台での同時入力ならば弥生会計プロフェッショナルの2ユーザー版があります)
どのような状況で使用するのか、何を優先したいのかにより、スタンドアロン版、ネットワーク版の選択が必要です。
給与計算などについては、計算をする会社が増えたとしても、操作するPCの台数が増えない限りライセンス使用料は増えません。計算対象となる従業員数が増えても料金は増えません。
ですから、従業員数が多い場合には、インストール型のほうが料金が少なくて済むケースが多いと言えます。
なお、法改正や新機能追加などは、会計・販売は年に一度の新バージョンの発売によって、給与などは改正のタイミングでオンラインなどで新バージョンの配布がされます。
年間保守契約に加入していると、それらアップデート版のソフトウエアが無償で提供がされるのです。
会計や販売などは新バージョンが発売されても旧バージョンの利用で問題のないことが多く、どうしても対応が必要な法改正がされたときのみに新バージョンを購入するという人も多い一方、給与は社会保険料の改定など頻繁に行われるので、サポート契約は必須と言えるでしょう。
クラウド型のソフトウエアは、イニシャルコストがほぼ0で利用期間に応じて料金が発生する「サブスクリプションモデル」が多いもの。
当初はユーザーを獲得するため、赤字覚悟の大バーゲン特価の利用料となっているものの、その価値が認められ利用者が増えてくると徐々に値上げをしていく傾向が強いです。
freeeやマネーフォワードクラウドも「料金プラン見直し」という名の実質値上げがされてきているのは、ご承知の通りです。
ネットフリックスなどもう5回も値上げがされていますし、この先もシェアを獲得した会社が値上げをしていく可能性は高いのではないかと。
もちろん、インストール型のソフトが値上げをしないわけではなく、マイクロソフトのWordが日本での発売当初、一太郎からシェアを奪うべく、Excelとセットでタダのような料金でパソコンにバンドルされていたこともあります。
それでも、小売店などでパッケージで売られる弥生会計は、10年以上スタンドアロン版の値段がほとんど上がってないことと比較すると、そのビジネスモデル上、クラウド型ソフトウエアのほうが今後利用料の値上げがしやすいのではないかと個人的には思います。(弥生会計の保守サポート料金が改定されたのは13年分ぶりです)
freeeもマネーフォワードのクラウド会計部門もずっと大赤字ですから。
クラウド型が良いのか、インストール型が良いのかは、その機能や処理スピードだけでなく、どちらの料金体系が自社により馴染むのかをも考慮する必要があるでしょうね。
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