他社との競合の中で生き残るためには、自社の「強みを活かせ」とよく言われます。経営資源の少ない中小企業にとっては、有効な方策だとは思います。
しかし、中小企業ほど「強みなど見つからず、弱みばっかりじゃないか」ということになりがちです。
では、そんな強みの見つかりにくい中小企業・フリーランスが、他社ではなく自分があえて選ばれるためのポジションのとり方について検討してみようと思います。
事業を継続するには「誰に何をどうやって売るのか」という設計図が必要です。
そのために、まずは自分の内部資源と外的な環境をS(強み・Strength)W(弱み・Weakness)O(機会・Opportunity)T(脅威・Threat)に分けて明示するSWOT分析をします。
その上で、「顧客からの要望があり自分が得意でありながら、自分よりも強い競合の少ないポジション」を事業領域に選定するため、C(自社・Company)C(顧客・Customer)C(競合・Competitor)を明確にする3C分析というものがよくされます。
しかし、経営資源が脆弱な中小企業やフリーランスほど強みと言えるようなものはなく、真面目に考えるほど自社には弱みしかないことに気が付きます。
かといって、強い競合がいないところはないかと逃げ続けていると、行き着くところには相思相愛の顧客など”誰もいない海に釣り船を出している”ことにもなりかねません。
では、どうすれば弱みばかりの企業が強みを見つけることができるのか。
それは、一見弱みと見えることも見方・見せ方を変えることで強みに見せるしかありません。
そのための具体的な例が「売れるサイトづくり」について書かれたこの本に挙げられていて、とても参考になりました。
ですが、「弱み」は、見方を変えれば「強み」に転換でき、ここに大きな伸びしろがあります。
たとえば一般的には弱みだと思われていることの多い次のような特徴も、反面の強みや思い、代わりに提案できることが、ほとんどのケースで見つかります。
・価格が高い→高いからこそ提供できる価値を提示 など
・品揃えが少ない→専門性が高い/本当におすすめできるものだけを厳選 など
・納期が遅い→職人が一つ一つ手作業/在庫を持たず、常に新鮮な商品をお届け など
・場所が遠い→自然豊かな環境/家賃などの余分なコストをかけずお求めやすい価格で提供 など
・社歴が浅い→だからこそ、業界の慣習にとらわれない/誠実さや安心感、しっかりした組織であることを伝えて不安をカバーする など
・会社が小さい→社長や顔が見えるスタッフが直接担当 など
・お客さんが探している商品がない→納得感がある理由を書く/取り扱い商品の中でお客さんのニーズに応えられるものを代替手段として照会 など
事実、私も26歳のときに節税対策の提案書しか書いておらず、税務申告や会計入力すらまともにやったことのない段階で勢いだけで独立開業をしてしまい、慌てて中小企業診断士の知識でSWOT分析をしてみたものの大した強みもない。
そんな中で、「自分ひとりしかいない」という弱みを「専任担当制のコンシェルジュ型税理士事務所」を標榜することで、担当者の交代スピードの早いことに不満を持つ中小企業オーナーに刺さる強みに変えたのです。
(出典|はじめての独立・起業なるほど成功ガイド|吉澤大著 日本実業出版社)
結果的に、これが当時の唯一の強みである「若さ」と相まって、一気に事業を軌道に乗せるのに役立ちました。
ただ、おそらくこのやり方だと顧問先数は30件が限界だろうと思っていたものの
・自社経理を原則とし、経理代行ついてはお客様と経理代行業者との直接契約にしてもらうことで、相談・申告業務特化を維持
・自分にしかできないこと以外は可能な限りアウトソーシング
・事故や病気のバックアップや一人では対処できない大型・特殊案件に対応するための税理士・会計士の連合体「アライアンスLLP」を組成
・距離の制約と移動時間のロスを無くすことでレスポンスを上げるため、原則Zoomでの対応に切り替え
こうやってその都度限界を突破していくことで、当初の経営理念を変えることなく、あまり比較されることのない独自のポジションのまま、28年経った今でも好き勝手なことを言いながら相思相愛の顧客数を増やし対応できる事業領域を広げ続けています。
これが、一人でやるために「あれはやらない、これはできない」と決めて現状維持に満足していたら、スキルも経験値も高まらず、「若さ」という強みがなくなってきた今では誰からも選ばれなくなっていたことでしょうね。
ということで、弱者が弱みをそのまま弱みとしてちゃダメ。まずは強みに見せる工夫をし、その上でホントに強みに変えていくことが大切ということなんです。