つぶれない会社に変わる! 社長のお金の残し方
法人は、原則として事業年度終了の日から2ヶ月以内に確定申告書を
提出することになっています。
3月決算の会社が多いため、これから5月末まではまたまた税理士の繁忙期に
入ります。
では、なぜ、3月決算の会社が多いのでしょうか?
理由の一つは、公官庁の年度末が3月であるため、
公官庁と取引のある会社がそれに倣ったという事があると思います。
ただ、別にそんな取引もない会社でも3月決算にしている例をよく見ます。
そのような会社に「なぜ3月決算にしたのですか?」
と聞いてみると、
その答えの多くは
「ただ、なんとなく」
「創業以来そのまま」
「決算期は3月にしなくちゃいけないと思い込んでた」
など、3月決算にした明確な理由があまり見当たらないのです。
そこで今回は、
本当に決算は3月でよいのか?
決算はいつにするのが良いのか?
について考えてみようと思います。
■繁忙期を期首にせよ?
決算作業というのは手間と時間がかかります。
そのため期首を繁忙期にしてしまうと、
ちょうど前期の決算申告の時期と被ってしまいます。
そのため、できれば、決算申告の時期と繁忙期はズラしたほうが良いと言えます。
ただ、仮に決算申告時期と繁忙期が被ったとしても、
あえて繁忙期を期首にした方が良いこともたくさんあります。
それはどういうことかというと、
繁忙期を期首にするとその事業年度の利益予想が立ちやすい
ということです。
繁忙期というのはそれだけ売上のボリュームが大きいということ。
その分、売上高のブレの幅も大きくなります。
そのブレの幅の大きい時期が期首になれば、
その分だけ年間の売上・利益予想が早期に立ちやすく、
その誤差も小さくなります。
逆に、繁忙期が期末だと、期末の繁忙期の業績次第で
大きく年間の売上・利益がブレることになり、
いつまでたっても確度の高い利益予想が立ちません。
例えば、学習塾などは1-3月に入塾生のピークを迎えます。
その生徒数で年間の売上高の予測がほぼ立ちます。
そのため、この会社が12月決算であれば、早期に確度の高い
年間の利益予想ができるのに対し、
3月決算だと決算ギリギリまで利益の予想が立ちにくい
ということになるのです。
■節税のためにも早期に確度の高い利益予想が必要
いわゆる節税対策というのは、期末に慌てて行うのでは
選択肢が非常に少なくなります。
無理に慌てて行おうとすると、リスクやコストに合わない
節税商品に手を出してしまうこともあるでしょう。
安定的で効果の高い節税対策を行うには、できるだけ
早い時点で確度の高い利益予想が必要なのです。
一例を挙げれば、法人個人を通じた税負担が最小になる
「最適な役員報酬額」を設定する場合にも、
会社の利益額がわからなくてはその計算はできないでしょう。
一方で、その年度の役員報酬額は事業年度開始の日から3ヶ月以内
に決定をしなくてはならず、それ以降に役員報酬額を変更すると
むしろ大きな税金上のペナルティを支払わなくてはなりません。
つまり、安定的な節税対策のためには、
「業績のブレの大きな時期を期首にして、確度の高い利益予想を
できるだけ早い時期に立てられる」ようにすることが不可欠なのです。
このように、繁忙期を期首になるように決算期を決めることのメリットは、
そのデメリットを上回ることが多いと言えるのです。
■初年度は消費税の納税義務に注意
原則として、消費税の納税義務は基準期間の
課税売上高により判定がされます。
その基準期間とは、2期前の事業年度の事なので、
結果的に事業を開始してから2期間は、
原則として消費税の納税義務がないことになります。
事業開始間もない資金繰りが不安定な時期に、
消費税の納税義務がないというのはありがたいもの。
できれば、その期間が1日でも長いほうが良いことになります。
(多額の設備投資をした場合などは、消費税の納税をしたほうが
有利な場合もあります)
そのためには、1期目の事業年度ができるだけ長くなるように
決算期を設定することが有効になるのです。
たとえば、3月12日に設立した会社であれば、2月決算とすることで
1期目を11ヶ月以上とすることができますが、
3月決算にしてしまうとたった20日しかなくなってしまうことになるでしょう。
(ただし、1期目の課税売上高の年換算額が1000万円以下であれば
どちらにせよ、3期目の消費税の納税義務はありません)
■決算期の変更は簡単だが、頻繁に行うのはマズイ
実は、決算期を変更するというのは、簡単です。
登記をする必要もなく、定款を変更し、税務署に異動届を提出すれば良いのです。
定款の変更をするのは面倒だと思うかもしれませんが、
実際に変更後の定款を提出しなくても、定款の「計算期間」を変更する旨の
議事録を作成して添付をするだけで事足ります。
なので、これから決算期を変更して繁忙期を期首にするというのは
それほど手間のかかる手続きではないのです。
また、それ以外にも決算期を変更することが効果を発揮することもあります。
消費税の「簡易課税取りやめの届出書」や「課税事業者選択届出書」などは、
原則として適用したい期の始まる日の前日までに提出しなくてはなりません。
ところが、多額の設備投資が決定し実行されるのも当期だということになると、
その消費税の控除ないし還付を受けるための手続きが間に合わない
ということもあります。
そのような時には、あえて決算期を設備投資が完了する前に変更し、
その期間内に消費税の届出書を提出することで、設備投資に伴う
消費税の控除ないし還付を受けることも可能になるのです。
ただし、だからといって、
「このままだと期末に一気に利益が出そうだからその前に決算期をズラしてしまえ」
とやみくもに決算期を変えるのはオススメしません。
銀行員に言わせると、対比が取りづらく、ものすごくイラッとするそうです。
当然、自分自身も業績の前期対比が取りづらくなるので、
緊急避難的に決算期を変更することはあっても、
節税のための頻繁な決算期の変更はやめておいた方がよいでしょうね。