自社独自のクーポンや商品券の売上げはいつ計上するのか?|会計・法人税・消費税の違い

プリペイド式クーポンや商品券を販売する

顧客の囲い込みや資金繰りの改善のため、自社独自のプリペイド式のクーポンや商品券を発行し販売するということもあるでしょう。

では、そのクーポンや商品券を発行した時には、いつ収益を計上すれば良いのでしょうか?

「会計上のルール」と「税務上のルール」についてまとめてみることにします。

プリペイド式のクーポン券・商品券についての会計上のルール

自社の商品やサービスを利用できるプリペイド式のクーポン券や商品券を販売するというのは、要するにそれらの提供前にお金をもらうということです。

会計上、収益の計上時点は、商品の引き渡しや役務提供が完了した日とするのが原則です。

プリペイド式のクーポンや商品券を販売し、その代金をもらったとしても、まだ商品やサービスの提供は終わっておりません。

そのため、クーポン券等を販売し受け取った代金は、いずれ役務提供等をしなくてはいけない債務として「前受金」や「預り金」となります。

その後、顧客がクーポン券等を実際に使用し、商品や役務の提供をした時点で「売上高」を計上するのです。

なお、クーポン券等が使用されずにそのまま放置されていると、お金はもらったものの商品や役務の提供をせず、”やらずぶったくり”の「退蔵益」が生じます。

ただ、ひょっとしたらいつかそのクーポン等が使われるかもしれないので、その退蔵益は確定した収益とはいえません。

そのため、発行された商品券等に有効期限が定められていた場合に、退蔵益が確定する有効期限到来時点で収益を計上することになるのです。

これが会計上のルールです。

プリペイド式のクーポン券・商品券についての税務上のルール

(1)法人税における収益計上

会計上とは異なり、法人税法では、プリペイド式クーポン券や商品券の益金計上時期について次のように定められています。

(商品引換券等の発行に係る収益の帰属の時期)

法人税基本通達 2-1-39 

法人が商品の引渡し又は役務の提供(以下2-1-39において「商品の引渡し等」という。)を約した証券等(以下2-1-39において「商品引換券等」という。)を発行するとともにその対価を受領した場合における当該対価の額はその商品引換券等を発行した日の属する事業年度の益金の額に算入する。

ただし、法人が、商品引換券等(その発行に係る事業年度ごとに区分して管理するものに限る。)の発行に係る対価の額をその商品の引渡し等(商品引換券等に係る商品の引渡し等を他の者が行うこととなっている場合における当該商品引換券等と引換えにする金銭の支払を含む。以下2-1-39において同じ。)に応じてその商品の引渡し等のあった日の属する事業年度の収益に計上し、その発行に係る事業年度(適格合併、適格分割又は適格現物出資(以下この章において「適格組織再編成」という。)により当該商品引換券等に係る契約の移転を受けたものである場合にあっては、当該移転をした法人の発行に係る事業年度)終了の日の翌日から3年を経過した日(同日前に有効期限が到来するものについては、その有効期限の翌日とする。)の属する事業年度終了の時において商品の引渡し等を了していない商品引換券等に係る対価の額を当該事業年度の収益に計上することにつきあらかじめ所轄税務署長(国税局の調査課所管法人にあっては、所轄国税局長)の確認を受けるとともに、その確認を受けたところにより継続して収益計上を行っている場合には、この限りでない

(昭55年直法2-8「六」により追加、平12年課法2-7「二」、平14年課法2-1「七」、平22年課法2-1「七」により改正)

つまり、

原 則

クーポン・商品券を発行し代金を受領した時点で益金計上

特 則

商品・役務提供時点で益金計上

クーポン等発行から足掛け5年目の事業年度末(発行した事業年度終了の日の翌日から3年経過した日の属する事業年度末)で退蔵益計上*

とすることを事前に税務署に届け出て確認を得た上で継続適用することも可能

*その前に有効期限が到来するものについては、その有効期限の翌日に退蔵益計上

ということになっているのです。

なお、単に無料や割引クーポンを発行しただけで益金の計上が必要になるわけではありません。

あくまでも、プリペイド式のクーポンや商品券の代金を受領した際には、その代金について商品券等の発行時に益金とするのが原則ということです。

(2)消費税における課税取引

消費税法では、法人税法とは異なり、プリペイド式のクーポン券・商品券の発行は「資産の譲渡等」には該当せず、それらの代金を受け取っていたとしても消費税の課税取引にはなりません。

法人税法上、原則としての「クーポン等発行時に益金計上」、特則の「商品等引換時に益金計上」のどちらが採られていたとしても、消費税については、商品・役務の提供時点で課税取引となるのです。

また、商品券等が発行されたものの未使用のままであるため生じた「退蔵益」については、消費税の課税対象とはなりません。

商品券の発行に係る売上げの計上時期|タックスアンサー

プリペイド式のクーポン等発行に伴う法律の適用

プリペイド式のクーポンや商品券と言えども換金性のある有価証券であるため、その発行や管理について「資金決済法」の適用を受けることになります。

ただし、自社の店舗においてのみ使用することができる商品券等「自家型発行型」について、 発行する商品券等の未使用残高(=商品券等の総発行額-総回収額)が基準日(3月末又は9月末)において、1,000万円以下であれば、この法律の適用を受けることはなく、届出等は不要です。

逆に言うと自社独自の商品券等であっても、基準日の「商品検討の未使用残高」が1,000万円超になると資金決済法の適用を受け、財務局長への届出や利用者保護のための表示義務・情報提供義務を負う他、発行保証金の供託も必要になるのです。

商品券・プリペイドカード等発行についてご案内|一般社団法人日本資金決済業協会

合理的な会計処理

会計上の処理と税務上の処理が異なると申告書上での調整が煩雑になります。早く益金の計上をすることで早く税金を支払うメリットもありません。

ですから、法人税の特則を受けるための確認を受け、会計上も法人税も消費税法上も商品・役務提供時点で収益等の計上をするというのが良いのではないでしょうか。

なお、税務署への届出の様式については特に定めがないので、その商品券の券面額や対象商品、有効期限などの概要を記載して提出をすることになります。

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