税理士は20年後には無くなってると言われるので25年前はどうだったか思い返してみます

食えなくなった弁護士・会計士・税理士―週刊東洋経済eビジネス新書No.28
食えなくなった弁護士・会計士・税理士―週刊東洋経済eビジネス新書No.28

税理士業務は自動化される?

人工知能の発展により20年後には”消える職業”として、よく税理士・会計士や弁護士などの士業が挙げられます。

確かに、近年のクラウド会計の進化のスピードなどを見ると数年先には仕事のやり方は大きく変わっているかもしれません。

一方で、私自身、既に独立してもうすぐ丸22年、この業界に入ってからは25年が経とうとしているわけです。

そこで、20年後の未来を考えるために、25年間で税理士業界はどんな感じに変化したのかを思い返してみることにします。

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会計データはフロッピーディスクに保存

25年前といえばバブル最盛期。私は、当時、某大手公認会計士事務所で富裕層向けに相続事業承継対策や利益水準の高い会社向けに節税商品の提案を日々行っていました。

そのため、会計ソフトに触ることは退職間際までほとんどなかったのですが、当時の会計システムはMS-DOSベースの会計専用機。

これを、一般事業会社で購入するのは高額だったため、会計事務所に経理代行業務を依頼しているという状況でした。

データの保管は、今はなきフロッピーディスクに。

それも5インチというペラペラでバカデカイものが主流で、3.5インチのディスクを壊れにくくて小さく、なんて便利になったのかとありがたがっていた頃です。

それが、独立して数年後には、ハードディスクに直接会計データを保存するようになり、会計ソフトも会計専用機ではなくWindows版の市販の会計ソフトで十分対応できるようになりました。

そのため、会計処理は会社で行う自計化が一般化され、経理代行は不採算で税理士も極力手を出さないビジネスになってきています。

なので、仮に経理代行が人工知能で自動化されても利益のダメージが大きい税理士は意外と少ないかと思います。(うちは当初から経理代行は受託していません)

確定申告は入力よりも印字のほうが大変だった

税務申告については、当時は、確定申告の用紙もA3の変形で、A3プリンタに謎のキットを取り付けて印字をするのですが、これが印字がズレてしまい、何度も苦労してやっと印字が終わった頃に細かいミスを見つけて夜中に呆然とするというのが確定申告時期の風物詩だったのです。

それが、今では、確定申告書はA4プリンタで簡単に印字ができ、連絡手段はメールやチャット、ファイルの送付もDropboxなどでの共有でできるわ、電子申告で送信できるわ、会計入力についても預金データからの自動仕訳も実用レベルになってきたのですから、ツールの進化によって業務効率が大きく改善したのは間違いないです。

ただ、会計・税務申告業務としてやっていることって、びっくりするほど変わってないんですよね。

25年経ってもそれほど変わっていないものが(実際はもっと前から変わってないですが)、あと20年でどう変わるのかと言われれば、方法やツールは変わっても、会計・税務申告業務に関しては、やるべきことはあまり変わらないかもしれません。

節税コンサルティングは永遠のイタチごっこ

25年前は、日々一太郎とLotus1-2-3というソフトで、節税コンサルティングのレポートを作っていました。

節税コンサルティングといっても、中身は、ワンルームマンションや生命保険や航空機のレバレッジド・リース、果てはコンテナ型カラオケボックスなど法解釈の盲点をつくような”微妙な”金融商品の販売です。

別に保険会社や銀行などがそのまま言ってもいいことを、税理士がいうことで”販売促進に貢献”していたわけです。

確かに、その時点ではそれらの節税商品の導入で税負担は軽減されるのですが、法人税の節税商品は、大抵単なる税金の支払を繰り延べる効果しかなく、相続税の節税商品は、実際の相続までの期間が空くのでその間に税制改正という国の”後出しジャンケン”をくらうというのがほとんど。

さらにバブル崩壊で経済状況が変化し、その前提条件が崩壊したものも多かったです。

その意味では、「時代が一気に逆回転していく激流の最先端」にいることを痛感しました。

当時、節税用の保険のセールスで日本のトップを争っていた会計事務所の先生たちは今どうしているのかなと思って、事務所のWEBサイトをみてみたら、みんな「保険のホの字」も書いていない。

その後のバブル崩壊で、たくさん”痛い目”に会い、あつものに懲りてしまったのでしょうか。

ただ、節税コンサルティングが消滅したかといえば全くそんなことはないです。

節税コンサルティングのプレーヤーは、バルブ崩壊の後の”訴訟地獄”を知らない若手税理士にとって代わり、法解釈の盲点をつくような新たな金融商品が次々と開発された後にそれを無効化する税制改正がされるというイタチごっこが繰り返されています。

どう考えても素直に税金を支払ったほうが手許のお金が残る場合であったり、全く関係のない赤字法人までが節税したいと考えるほど、「節税」という言葉に”悪魔的な魅力”がある以上、節税コンサルティングは、姿形を変え、プレーヤーを変えるにしても20年先、30年先も残っているはずです。

税理士事務所の二極分化?

複数の拠点を持つことのできる税理士法人化やインターネットでの集客力向上により大規模法人もここ25年で生まれるようになりました。

実際に私のいた大手会計事務所も私が在職中に規模拡大をし、現在では日本でも有数の規模になっています。

ただ、イオンが進出してきた街の商店街のように、個人税理士事務所が淘汰されているかというと決してそんなことはないかと。

私の周りを見ても、税理士一人の事務所は低コストゆえに一人あたりの採算では大手税理士法人を上回るようなところも多く、むしろ数人から十数人の従業員を抱える税理士事務所のほうが採算が悪いことが多いのではないでしょうか。

「大規模と小規模の利益率が高く、中規模の利益率が低い」といういわゆる「V字カーブ」現象がこの業界でも起きていると言えそうです。

ただ、この辺りは飲食業界などでも見られるような現象であり、特に税理士だけに特異なものではないと思います。

別にサイゼリヤが台頭したからといって、恵比寿の人気イタリアンが淘汰されていないでしょう。

自分が一人税理士事務所として行っている個人秘書というか時には社長を守る”用心棒”や”汚れ役”までやっているサービスの特性から考えて、将来すべて大手に収斂されていたり人工知能が代替しているというイメージは湧きません。

税理士はもう食えなくなった?

雑誌等でも「税理士や弁護士はもう食えなくなった」という特集がよく組まれます。

当事者から言わせてもらうと、元々資格は”入場チケット”であり、生活を保証するものではありません。

単に、供給が少なかったので、本来食えちゃいけない人まで食えていたのが、供給が需要に追いついたので、本来食えなくて当然の人が食えなくなっただけだと思います。

個人の確定申告のご用命を頂いた理由が「寒い中、会計事務所の前で資料を持って待つのが辛くなってきたので税理士を変えたい」などと言われると、そんな税理士まで食えていたこと自体がおかしかっただけで、まともに仕事をしている人にとっては、むしろまだまだビジネス拡大の余地がいっぱいあると思わざるを得ません。

顧問料は長期的に下落しているというもの、明確な料金表も示さず、取れるところから取ろうという水増し部分がネットなどで比較されることで削げ落ちただけであり、料金に見合ったサービスを提供していればそれほど顧問料値下げ圧力が強まったと感じることはないかなと。

事実、うちは、22年経っても既存契約の値引きはしていないし、むしろ料金表を改訂し新規契約から値上げをしましたが、それにより新規顧問契約受託の件数が減ったということはありません。

ネット上で格安の顧問料を謳う会計事務所も見られますが、現実には、極めて小規模の会社が対象であったり、通常税理士が行う業務がオプションとなっており、それらを積み上げていくとそれほど一般的な税理士の顧問料と変わらないということのほうが多いのではないでしょうか。

それだけ多額のマーケティングコストを支払わなくてはならないのですから、当然といえば当然です。

つまり、上から目線に聞こえるかも知れませんが、食えなくなったとしたらそれは正常な淘汰の結果であり、きちんとお客様に評価されている税理士は、別に食えなくなるということはないと思っています。(私も年齢によりいずれは淘汰されますが)

そもそも20年後も残ることが約束されたビジネスってなによ?

そうはいっても、実際に税理士は職業として消えているかも知れませんし、残っていてもまともに食えない職業になっているかもしれません。

では、20年後も残ることが約束されている安泰なビジネスってなんでしょう。

確かに、ITの進化により、20年前にはなかったアフィリエイターやネットマーケティングコンサルタントの中には多額の利益を上げ破竹の勢いで組織拡大をしている方もいます。

うちは、”そっち系”のお客様が多いのですが、競争が激しくルールの変化も早いので、実際に数年前には収益の柱だったものが既に思うように稼げなくなっており、有能な経営者ほど今は利益が上がっていても来年同じことをしていられるか不安だと新たな商材を必死に探し続けている状況です。

それこそ「20年後ってなんだよ」と言われそうです。

個人で考えても、著者にせよ、アフィリエイターにせよ、コンサルタントにせよ、ブロガーにせよ、フリーランスで20年後も同じことをやり続けて競争を勝ち残るほうが、税理士で生き残るよりもずっと大変でしょう。

そもそも「税理士は食えなくなる」と書いている雑誌社のほうが、税理士より早く食えなくなるのではないでしょうか。うちら、あんなに毎年売上減ってないですよ。

「税理士はもう食えない」はずっと言われ続けてきた

私が独立した22年前は、既にバブルが崩壊していて、「今から独立してももう食えないから無理」と嫌になるほど周りから言われました。

その後、税理士法人化が認められた時にも、「もう街の個人税理士は食えなくなる」とも言われましたが、うちは、売上も顧問先も増え続けています。

要するにずっと「もう税理士は食えない」って言われているんですよ。

確かに、最近独立した税理士は本当に食っていくのすら大変な人もいるでしょう。

でも、それは業界のせいじゃないです。

別に業界は新しいメンバーをみんなで支える互助会じゃないのです。

協力して新しい価値を創造することは素晴らしいですが、基本は競争相手なのですから。

そもそも仮にどんなに業界が苦しくても、その中で自分が生き残れば良いだけのことではないでしょうか。

「このままだと食えなくなるから税理士などやっても無駄だ」と煽られ、横道にそれるくらいなら、目の前のお客様に評価されることを目指したほうがずっと20年後も生き残る確率は高くなるはずです。

情報がカネになる時代からネットで情報がタダ同然になり、アドバイスでカネを得ようとしたらそのアドバイスすら無料や低廉になり、その中でカネを稼ぐには、提案だけでなくプロを集めてその方策を実行することが求められています。

なので「税理士は20年後にはなくなる」という言葉を受け止めるならば、十年一日のごとくダラダラとやっていたら20年後には食えなくなると危機感を持ち、お客様が求めているものと環境の変化に順応できるよう常に新しい解決策はないかとアンテナを張り、実行部隊のネットワークを築きあげることで、お客様とプロフェッショナルとの通訳としてどんな時代も生き残る強かさを身につけよということかなと。

まあ、そう言ってる私は、20年後にはもう”現役”の税理士ではないとは思いますけどね。

週刊エコノミスト 2016年1月12日号 [雑誌]
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