粉飾した利益について払った税金は還付されるの?されないの?

利益を実際より大きく見せる粉飾をすれば税金も余計に支払うことになる

金融機関からの融資を円滑に受けるために、実際よりも赤字額を小さくしたり黒字額を大きくしたりすることを「粉飾」と言います。

利益が実際よりも大きくなれば、その分余計に税金を支払うこともあるでしょう。

では、この粉飾により余計に支払った税金は、「やっぱり払いすぎていたので返して」ということができるのでしょうか?それとも「自分であえて余計に申告したんだから返せない」ということなんでしょうか?

今回は粉飾と税金の還付についてまとめてみます。

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法人税の取り扱い

法人税は正しい課税所得に基づいて計算がされます。

もし、当期の損金とされていたのにならないものがあったり、当期の益金とすべきものが漏れていたりすれば、正しい課税所得となるよう修正申告が求められたり、税務署から更正がされることになります。

同様に、既に支払義務が確定していた経費が漏れていた、当期の益金として計上していたものの実際には翌期以降のものとすべきものであったなどの誤りがあれば、それも正しい課税所得となるように更正がされることになります。

しかし、それであれば、銀行の融資を受けるために粉飾して利益を過大にみせておき、その後、税務署に対して過大に支払った税金の還付請求をするなどということが自由自在にできてしまいます。

かといって、実際に稼いでもいない所得について税金を課す理由はないことに変わりはありません。

そこで、法人税法上、仮装経理(粉飾)による過大な申告・納付の場合、還付はするものの直ちに還付はしない制限が設けられています。

具体的には、

・法人が「過年度損益修正損」として会計上の修正をし確定申告書を提出するまで減額更正は行われない

・仮装経理による過誤納金は、減額更正のされた日の属する事業年度の前事業年度の法人税額のみ還付をし、残額はその後5年間に渡ってそれぞれの事業年度で生じた法人税額から順次控除をし、5年経過後にまだ残額があれば還付をする

(仮装経理に基づく過大申告の場合の更正に伴う法人税額の還付の特例)
第百三十五条  内国法人の提出した確定申告書又は連結確定申告書に記載された各事業年度の所得の金額又は各連結事業年度の連結所得の金額が当該事業年度又は連結事業年度の課税標準とされるべき所得の金額又は連結所得の金額を超え、かつ、その超える金額のうちに事実を仮装して経理したところに基づくものがある場合において、税務署長が当該事業年度の所得に対する法人税又は当該連結事業年度の連結所得に対する法人税につき更正をしたとき(当該内国法人(当該内国法人が連結親法人である場合には、その事実を仮装して経理したところに基づく金額を有する連結法人。以下この項において同じ。)につき当該事業年度又は連結事業年度終了の日から当該更正の日の前日までの間に第三項各号又は第四項各号に掲げる事実が生じたとき及び当該内国法人を被合併法人とする単体間適格合併(連結法人以外の法人が当該法人を被合併法人とし、連結法人以外の他の法人を合併法人とする適格合併を行う場合の当該適格合併をいう。以下第三項までにおいて同じ。)又は連結内適格合併(連結子法人が当該連結子法人を被合併法人とし、当該連結子法人との間に連結完全支配関係がある他の連結法人を合併法人とする適格合併を行う場合の当該適格合併をいう。以下第三項までにおいて同じ。)に係る合併法人につき当該単体間適格合併又は連結内適格合併の日から当該更正の日の前日までの間に当該事実が生じたときを除く。)は、当該事業年度の所得に対する法人税又は当該連結事業年度の連結所得に対する法人税として納付された金額で政令で定めるもののうち当該更正により減少する部分の金額でその仮装して経理した金額に係るもの(以下この条において「仮装経理法人税額」という。)、次項、第三項又は第七項の規定の適用がある場合のこれらの規定による還付金の額を除き、還付しない。
 前項に規定する場合において、同項の内国法人(当該内国法人が同項の更正の日の前日までに単体間適格合併又は連結内適格合併により解散をした場合には、当該単体間適格合併又は連結内適格合併に係る合併法人。以下この項において同じ。)の前項の更正の日の属する事業年度(連結子法人が第四条の五第一項又は第二項(第四号及び第五号に係る部分に限る。)(連結納税の承認の取消し等)の規定により第四条の二(連結納税義務者)の承認を取り消された場合(第十五条の二第一項(連結事業年度の意義)に規定する連結親法人事業年度開始の日にその承認を取り消された場合を除く。)のその取り消された日の前日の属する事業年度(次項において「取消前事業年度」という。)を除く。)開始の日前一年以内に開始する各事業年度の所得に対する法人税又は当該更正の日の属する第十五条の二第一項に規定する連結親法人事業年度開始の日前一年以内に開始する各連結事業年度の連結所得に対する法人税の額(附帯税の額を除く。)で当該更正の日の前日において確定しているもの(以下この項において「確定法人税額」という。)があるときは、税務署長は、その内国法人に対し、当該更正に係る仮装経理法人税額のうち当該確定法人税額(既にこの項の規定により還付をすべき金額の計算の基礎となつたものを除く。)に達するまでの金額を還付する。
 第一項の規定の適用があつた内国法人(当該内国法人が単体間適格合併又は連結内適格合併により解散をした場合には当該単体間適格合併又は連結内適格合併に係る合併法人とし、当該内国法人が連結親法人である場合には同項の事実を仮装して経理したところに基づく金額を有する連結法人(当該連結法人が連結内適格合併により解散をした場合には、当該連結内適格合併に係る合併法人)とする。以下この条において「適用法人」という。)について、同項の更正の日の属する事業年度(取消前事業年度を除く。)開始の日(当該更正が当該単体間適格合併に係る被合併法人の各事業年度の所得に対する法人税について当該単体間適格合併の日前にされたものである場合には、当該被合併法人の当該更正の日の属する事業年度開始の日)から五年を経過する日の属する事業年度の第七十四条第一項(確定申告)の規定による申告書の提出期限又は当該更正の日の属する第十五条の二第一項に規定する連結親法人事業年度開始の日から五年を経過する日の属する連結事業年度の第八十一条の二十二第一項(連結確定申告)の規定による申告書の提出期限(当該更正の日から当該五年を経過する日の属する事業年度又は当該五年を経過する日の属する連結事業年度終了の日までの間に当該適用法人につき次の各号に掲げる事実が生じたときは、当該各号に定める提出期限。以下この項及び第八項において「最終申告期限」という。)が到来した場合(当該最終申告期限までに当該最終申告期限に係る申告書の提出がなかつた場合にあつては、当該申告書に係る期限後申告書の提出又は当該申告書に係る事業年度若しくは連結事業年度の法人税についての決定があつた場合)には、税務署長は、当該適用法人(当該適用法人が連結子法人である場合には、当該適用法人に係る連結親法人)に対し、当該更正に係る仮装経理法人税額(既に前項、この項又は第七項の規定により還付すべきこととなつた金額及び第七十条(仮装経理に基づく過大申告の場合の更正に伴う法人税額の控除)又は第八十一条の十六(仮装経理に基づく過大申告の場合の更正に伴う法人税額の連結事業年度における控除)の規定により控除された金額を除く。)を還付する
<以下省略>
(仮装経理に基づく過大申告の場合の更正に伴う法人税額の控除)
第七十条  内国法人(連結法人を除く。)の各事業年度開始の日前に開始した事業年度(当該各事業年度終了の日以前に行われた当該内国法人を合併法人とする適格合併に係る被合併法人(連結法人を除く。)の当該適格合併の日前に開始した事業年度(以下この条において「被合併法人事業年度」という。)を含む。)の所得に対する法人税につき税務署長が更正をした場合において、当該更正につき第百三十五条第一項(仮装経理に基づく過大申告の場合の更正に伴う法人税額の還付の特例)の規定の適用があつたときは、当該更正に係る同項に規定する仮装経理法人税額(既に同条第二項、第三項又は第七項の規定により還付されるべきこととなつた金額及びこの条の規定により控除された金額を除く。)は、当該各事業年度(当該更正の日(当該更正が被合併法人事業年度の所得に対する法人税につき当該適格合併の日前にしたものである場合には、当該適格合併の日)以後に終了する事業年度に限る。)の所得に対する法人税の額から控除する。

要するに、仮装経理により余計に支払っていた法人税は、還付請求をしたとしても、すぐに還付されず、最大5年間以上もの時間を掛けて返されるということです。

消費税の取り扱い

売上の過大計上や仕入れの過小計上がされてた場合、法人税だけでなく消費税も過大に納付がされていることになり、減額更正により還付がされます。

消費税については、法人税のような「仮装経理による還付制限」はされていません。

つまり、仮装経理であったとしても、消費税額に過誤納額があれば、減額更正により直ちに還付を受けることができるということです。

仮装経理とミスの境界線

そうはいっても、具体的にどこまでがミスでどこからが仮装経理なのかは判断に悩むところ。

決算時点では正しいと思っていたことが、税務調査前によく調べてみたら前受分の売り上げが”前倒し”で計上されていたとか、税務調査で売上計上漏れが発見されたのでその対抗策として買掛金を洗ってみたら未計上のものが発見されたとか。

粉飾なのか、ミスなのかは、本人の「意思」しかわかりません。

そのため、税務調査で「利益が過小である」と修正事項の指摘がされたものの、調べてみたらそれ以上の金額の「利益の過大計上」があったことが発覚した場合、それが粉飾であるかミスであるかはさほど議論されることなく、結果的になんら修正を求められないということがあるのも事実です。

それを超えて「本当はそんなに儲かってないんだからやっぱり還付してよ」といえば、税務署も「全くの架空計上など明らかな粉飾だったら法人税については還付には制限を加えますよ」ということ。

わざわざこんな規定があるというのは(消費税に規定がないのは謎ですが)以前にそういう方策が横行したということなんでしょう。

そう言えば、相続税の税務調査でせっかく申告漏れの財産を見つけても、それを配偶者が相続し配偶者の税額軽減を適用することで思うように追徴課税できなかったことに業を煮やし、「配偶者の税額軽減については隠ぺい仮装した財産を含めず計算」するように改正しましたからね。

隠ぺい仮装行為があった場合の配偶者の税額軽減の計算方法|タックスアンサー

「仮装経理に基づく過大申告の場合の更正に伴う法人税額の還付の特例」という申告がされるのは、私自身実際にみたことがなく、現在はレアなものだとは思います。

いずれにせよ、粉飾で余計に払った法人税は、いつでも簡単に取り戻せて還付加算金までもらえるなんて便利なことはないようです。

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