従業員の永年勤続の記念品に旅行券や商品券を渡したら課税されるの?

永年勤続表彰の記念品の課税関係

10年、20年など節目の年に、長期間の勤続の労をねぎらおうと従業員の表彰を行うケースは中小企業でもよく見られます。

表彰といっても、ホントに感謝状や盾だけだとなんだかなあということになるので、記念品として副賞を渡すことが多いもの。

では、この永年勤続表彰の記念品としてもらった物品に課税はされるのでしょうか?

今回は、永年勤続表彰の記念品として商品券や旅行券を渡した場合の課税関係についてまとめてみることにします。

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会社から物品を受け取れば原則給与課税

会社から何らかの物品を受け取れば、それは会社からの贈与となりますが、会社からの贈与は、個人からの贈与と異なり、贈与税ではなく一時所得として所得税がかかります。

ただし、その経済的の利益の供与(贈与)が、その会社の役員や従業員という身分ゆえにもたらされた場合には、給与として課税がされるのです。

永年勤続表彰の記念品についての課税関係

しかし、永年勤続表彰などによる記念品として提供された物品については、一定の要件に該当する場合、給与として課税しなくても良いことになっています。

36-21使用者が永年勤続した役員又は使用人の表彰に当たり、その記念として旅行、観劇等に招待し、又は記念品(現物に代えて支給する金銭は含まない。)を支給することにより当該役員又は使用人が受ける利益で、次に掲げる要件のいずれにも該当するものについては、課税しなくて差し支えない。(昭46直審(所)19改正)

(1) 当該利益の額が、当該役員又は使用人の勤続期間等に照らし、社会通念上相当と認められること。

(2) 当該表彰が、おおむね10年以上の勤続年数の者を対象とし、かつ、2回以上表彰を受ける者については、おおむね5年以上の間隔をおいて行われるものであること。 

つまり、対象者が10年以上の勤続年数の者であり、社会通念上相当な金額であれば、永年勤続の表彰に対して支給した記念品については給与として課税をしなくても良いということです。

汎用性のある金券は金額にかかわらず給与課税が原則

ただし、現金はもちろん、換金が可能な商品券など金銭と同等のものを記念品として受け取った場合には、金額にかかわらず給与として課税がされます。

旅行券の支給が非課税とされる条件

永年勤続表彰の副賞として、休暇とともに旅行をプレゼントするケースが良く見られます。この場合には、社会通念上相当な金額であれば、給与としないことができます。

一方で、換金可能な商品券を支給すると、金額にかかわらず給与として課税がされます。では、記念品が「旅行券」である場合はどうでしょう。

旅行券は、換金しようと思えば換金もできてしまいます。

ですから、旅行券で支給する場合、その旅行が確実に実施されたことを領収証や対象者からの報告書などで証明をする必要があります。

ここからは個人的な見解ですが、旅行券ではなく、旅行に充てる代金として現金で支給をしたとしても、速やかに旅行が実施され、すべてが旅行に使われたと認められれば、旅行券と同様の扱いになるはずです。

所得税基本通達の説明でも

Q

当社では勤続20年に達した使用人に対し、一人当たり10万円の旅行券を支給しています。永年勤続者の表彰に当たり旅行に招待する場合には課税の対象とされないそうですが、旅行券を支給した場合も同様に取り扱ってよいでしょうか。

A

一般的に、旅行券は有効期限もなく、換金性もあり、実質的に金銭を支給したことと同様になりますので、原則として給与等として課税されます。
ただし、次の要件を満たしている場合には、課税しなくて差し支えありません。

(1) 旅行の実施は、旅行券の支給後1年以内であること。

(2) 旅行の範囲は、支給した旅行券の額からみて相当なもの(海外旅行を含みます。)であること。

(3) 旅行券の支給を受けた者が当該旅行券を使用して旅行を実施した場合には、所定の報告書に必要事項(旅行実施者の所属・氏名・旅行日・旅行先・旅行社等への支払額等)を記載し、これに旅行先等を確認できる資料を添付して貴社に提出すること。

(4) 旅行券の支給を受けた者が当該旅行券の支給後1年以内に旅行券の全部又は一部を使用しなかった場合には、当該使用しなかった旅行券は貴社に返還すること。

(所基通36-21、昭60直法6-4)

創業記念品や永年勤続表彰記念品の支給をしたとき|タックスアンサー

とされており「旅行券=現金同等なので給与課税。ただし、一定の要件を満たした旅行に費やされたのであれば非課税」と読めます。

ということは、「現金なので給与課税。ただし、一定の要件を満たした旅行に費やされたのであれば非課税」ということでもあるのではないかと。

「旅行券を1年以内に使わなければ会社に返還する」ということからも、金銭として旅行以外に使用または貯蓄されると課税されるということを示唆しているように読めるでしょう。

つまり、永年勤続の記念のために従業員に提供された旅行が、給与として課税がされるかどうかは、現金か旅行券かという形式よりも、実際にその支給された金員が確実に旅行に使われたかのほうが重視されるのではないかということです。

少なくとも、私が受けた税務調査では、そのような議論がされましたし、永年勤続の規程に基づき「旅行代金に充当するためとして支給された金銭」も、確実に旅行にされた旨の従業員からの報告書により給与課税はされませんでした。

もちろん、旅行券で支給がされたとしても、金員が旅行代金に充当されたことが証明されず、旅行券が”渡しきり”である場合には、商品券と同様、金額に関わりなく、給与として課税がされるでしょう。

なお、ある税理士さんから税務調査で「旅行代金を現金で支給した時点で、問答無用に給与だと主張されているがどう対処すべきか」というご質問を頂いた際にも

■従業員が享受した経済的利益

「従業員が得た会社からの経済的利益は、原則給与課税でありながらも、一定の範囲内での福利厚生的な趣旨のものについては課税しなくても差し支えない。」というのが所得税基本通達の基本的な考え方でしょう。

その一例として、通達上、一定の要件に合致する永年勤続表彰での行については、「会社が行代金を直接負担した場合」には、給与としなくても良いことになっています。

さらに、「従業員に対してが支給された場合」についても確実に行費用に充当されたことが明らかであれば給与としなくても良いとも明示されています。

「会社が行代金を直接負担」

「従業員にを支給し行代金に充当」

「従業員に行代金を現金で支給し行代金に充当」

のどれも従業員側から見た経済的利益は「本来自分で負担すべきところを無償で行に行くことができた」というものでどれも同じです。

源泉所得税の課税は、従業員に対する経済的利益に対して求められるものです。

それであれば、同じ経済的利益を享受しているのに「従業員に行代金を現金で支給し行代金に充当」することのみを課税対象とするのはバランスを欠くのではないかと思われます。

■福利厚生目的であることの担保としての流用禁止

一方、行代金支給の名目であったとしても、他に流用され、従業員が自由に金銭等を消費できる場合には、もはや福利厚生目的ではないため原則どおり給与課税がされます。

そのため、通達では、実際には他に流用されることへの防止策として「会社が直接行代金を負担する」「が確実に費に充当されていることを確認する」という要件を求めているのではないか。

その視点に立てば、永年勤続表彰での行代金については、「現金で支給をした」という形式に着目するよりも「他に流用されることなく確実に費に充当されている」という事実認定にこそ注目すべきなのではないかと考えます。

とお伝えしたところ、証拠資料を提示することで給与課税は回避されたとのことでした。

確かに、現物給与課税の取り扱いを記した書籍などでも「旅行代金を現金で支給=給与課税」という記載が見受けられますが、税務調査では、理論的に合理性があれば柔軟な対応もされているのではないかと思われます。

(あくまでも、個人的な経験に基づくものです。申告はご自身の責任でお願いします)

社会通念上相当な金額とは

では、きちんと旅行が実施されたとして「社会通念上相当」とはどの程度なのでしょうか。

勤続年数ごとに個別の金額は提示されていないのですが、日本放送協会(NHK)からの個別の照会について国税庁が回答をしています。

それによると

(1)満25年勤続者|10万円相当の旅行券
(2)満35年勤続者|20万円相当の旅行券

そのどちらも給与として課税する必要はないとのことです。

永年勤続記念旅行券の支給に伴う課税上の取扱いについて(昭60.2.15付照会に対する回答)|タックスアンサー

ですが、必ずしもこの金額が非課税で支給することができる上限金額ということではありません。

実際に、税務調査を受けた際に、勤続20年の従業員に対して20万円の旅行代金を支給したケースでも、その旅行が確実に実施されたかの確認は細かくチェックされましたが、金額について過大であるという指摘はありませんでした。

個別に「この金額が上限」というのを提示することはできませんが、「10年で10万円」程度の記念品であれば、税務調査で指摘はされても修正まで求められることはないのではないかと個人的には考えます。

ただ、どうなんでしょう。

もらう側からすれば、行きたくもない旅行に無理やり時期を定められて行かされるより、給与課税されたとしても現金でもらって好きに使わせてもらった方がありがたいという人も多いのではないでしょうか。

少なくとも私はそうです。

表彰なんだし、社員の定着率を上げるためなら、課税がどうのこうのより、もらう側のモチベーションが上がらないと意味ないですよね。

セミナー音源No.13:どこまでならOK?税務のさじ加減