リース契約の種類ごとの税務処理|売買取引、賃貸借取引、金融取引
目次
リース取引の会計と税務処理は複雑だが
資産の賃貸借については、レンタカーのように使いたい時に使いたいだけ使いいつでも返却できるものから、中途で解約しても残金の支払いを求められる実質的に購入したものや一旦所有した資産を売却したのち同じ資産をリースしてリース料を支払う実質融資のような取引もあります。
それぞれ、税法上の取扱いが異なるので、今回は、「中小企業が借り手」であるリース取引の種類とその税務処理についてまとめておくことにします。
まとめ
話がゴチャゴチャになりそうなので先にまとめておきます。これだけ理解していただければ十分です。
・一般的に「リース取引」と言われるのは「所有権移転外リース取引」のこと
・法人税法上、「売買取引」として資産計上と減価償却が必要なのが原則
・ただし、「リース料」の支払い時点で損金にすることも可能
・消費税については、資産取得と考え、取得時に一括して消費税を控除するのが原則
・ただし、賃貸借処理とズレが生じるので、面倒なら消費税もリース料支払い時に控除が可能
・早く消費税を控除したければ「取得時一括控除」、面倒なら「支出時分割控除」を選択
リース取引の種類
リース取引は会計上次の区分に分かれます。
ファイナンス・リース
所有権移転リース
所有権移転外リース
オペレーティング・リース
ファイナンス・リースとオペレーティング・リースかの区分は、ザックリというと
(1)中途解約が禁止ないしそれに準ずるペナルティあり
(2)借り手がほぼその資産全部を取得したのと変わらない便益を得てその負担をする(フルペイアウト)
のどちらも満たしたものを「ファイナンス・リース」、それ以外のものを「オペレーティング・リース」としています。
ファイナンス・リースは、ものすごくザックリというと対象資産の所有権が借手に移る「所有権移転リース」と所有権は貸手のままの「所有権移転外リース」に分けられます。
一般的に「リース取引」といった場合の多くは、中途解約が出来ないか、解約をすると未消化分の残債の支払いを求めるものの、リース期間終了後には、その資産を貸手に返還を求められるか再リース料の支払いを求められる「所有権移転外リース」であるということです。
リース取引の会計処理
所有権移転リース
所有権移転リースは、リース(賃貸)だと言いながら、所有権まで移転をするのですから、資産を購入したのと変わりがありません。
そのため、会計処理も「売買取引」として、資産を購入したとの同様、取得時に資産に計上し、その資産の法定耐用年数に応じた減価償却をすることになります。
所有権移転外リース
所有権移転外リースは、中途解約が不能でその資産の大半の便益と費用負担をするので、こちらも自身で取得したのとさほど変わりはないです。ただ、いずれ資産を返還することになる。
そのため、資産を取得したのと同様、取得時に資産に計上した上で、リース期間を耐用年数とみなした「リース期間定額法」による減価償却をすることになるのが原則です。
なお、中小企業については、所有権移転外リースについては、資産計上をせず、リース料の支払いがされた時に費用化する「賃貸借処理」を選択することも可能です。
オペレーティング・リース
資産計上をせずに、リース料の支払いがされた時に「リース料」として費用計上する「賃貸借処理」をします。
リース取引の法人税の取り扱い
会計上の処理と法人税法上のリース取引の定義は若干異なりますが、中小企業では、税務に合わせて会計がなされることが一般的です。
法人税法上のリース取引とは、資産の賃貸借のうち、次の要件の全てを満たすものをいいます。
(1)リース期間中の中途解約が禁止されているものであること又は賃借人が中途解約する場合には未経過期間に対応するリース料の額の合計額のおおむね全部(原則として90%以上)を支払うこととされているものなどであること。
(2)賃借人がリース資産からもたらされる経済的な利益を実質的に享受することができ、かつ、リース資産の使用に伴って生ずる費用を実質的に負担すべきこととされているものであること。
なお、リース期間(契約の解除をすることができないものとされている期間に限ります。)において、賃借人が支払うリース料の額の合計額がその資産の取得のために通常要する価額のおおむね90%相当額を超える場合には、リース資産の使用に伴って生ずる費用を実質的に負担すべきこととされているものであることに該当します。
要するに、レンタルのようにいつでも返還できるものではなく、実質的に購入するものの資金調達を融資ではなくリースという形式を用いた取引を「法人税法上のリース取引」と言っているのです。
法人税法上の税務処理については、上記のような「売買があったものとされる場合」と「金銭の貸付があったものとされる場合」に分けられます。
「金銭の貸付があったものとされる場合」とは、自身が所有する資産をリース会社に売却して譲渡代金を受け取った後、その資産をリースしリース料の支払いをする「リースバック」のことです。
それぞれの法人税法上の取り扱いは次のように定められています。
売買があったものとされる場合
法人税法上のリース取引が売買があったものとされる場合には、そのリース資産を取得したものとして資産に計上したのち、次の方法で減価償却をします。
(1)所有権移転外リース取引
リース期間定額法
(2)所有権移転外リース以外のリース取引
資産の種類に応じてその法人が選定している償却方法
リース料の額を損金経理しているときには、そのリース料の額は償却費として損金経理をした金額に含まれます。
ただし、資産計上をせず、リース料の支払いがされた時に損金とする「賃貸借処理」を選択することも可能です。
金銭の貸付けがあったものとされる場合
法人税法上のリース取引が金銭の貸付けがあったものとされる場合には、その資産の売買により譲渡人(賃借人)が譲受人(賃貸人)から受け入れた金額は借入金の額として取り扱われ、譲渡人が支払うべきリース料の額の合計額のうちその借入金の額に相当する金額については、その借入金の返済額として取り扱われます。
つまり、リースバックによる形式的な譲渡について、その譲渡損益は計上せず、融資取引として、借り入れとその返済及び利息の支払いとして損益を認識するということです。
リース取引の消費税の取り扱い
法人税法上、原則として「売買取引」とされるのであれば、消費税については、課税資産の譲渡等に該当する場合、そのリース資産の譲渡対価の全額がその引渡しを行った日の属する課税期間における資産の譲渡等の対価の額に含まれまれます。
要するに、リース取引をした時点でその支払総額に対する消費税額が仕入税額控除の対象となります。
確かに、自社で資産計上をする場合には、それが合理的です。しかし、賃貸借処理をする場合には、リース料の支払い時に消費税分だけズレが生じて経理処理が煩雑になります。
そこで、賃貸借処理をした場合の消費税については、原則は「取得時一括控除」としながらも、例外的に「支出分割控除」を選択できるようになりました。
所有権移転外ファイナンス・リース取引について賃借人が賃貸借処理した場合の取扱い|タックスアンサー
「だったら、今までどおり、リースは資産計上せずに、支出時に損金算入して消費税も控除でいいじゃん」ということなのですが、紆余曲折を経て結局この様になったのです。
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