【基礎】締め後の売上高・仕入高の翌期での再振替仕訳はいつやるの?

税務会計では収益・費用は発生主義での計上が原則

税務・会計では、売上高などの収益とその収益獲得のための犠牲である費用については、現金での入出金があった時点で計上するわけではありません。

入出金とは関係なく、それらの取引が生じた時点で、収益や費用を計上します。

そのため、売上高や仕入高などについては、請求書をベースにして収益、費用を計上します。

しかし、その請求書にも締日というものが取引先ごとに定められており、最後の締日から事業年度終了の日までの収益、費用については、決算時点で追加計上が必要です。

では、締め後の収益、費用については、翌期にどんな処理をすればよいのか。

そこで、今回は、締め後の収益、費用や期中は現金支払い日ベースで計上していたものを期末に発生日ベースで調整をした場合の翌期での合理的な処理方法についてまとめてみることにします。

スポンサードリンク

期中は現金主義、期末で発生主義に調整するケースが多い

収益、費用について、取引が生じた時点で計上する「発生主義」の場合、

取引が生じた時点では、

売掛金/売上高

仕入高/買掛金

その代金の入出金がされた時点で

預金/売掛金

買掛金/預金

と一つの取引で二回の記帳をしなくてはなりません。

現金の収入、出金の時点で収益、費用を計上する「現金主義」であれば、記帳が一回で済むのに比べると面倒です。

そのため、中小企業では、期中については、「現金主義」で記帳をしておき、決算時に「発生主義」に調整をするということが行われることが多いです。

いや、売上高と仕入高などはちゃんと「発生主義」で計上しているぞ。

ですが、クレジットカード決済については、預金から引き落とされた時点で、クレジットカード利用一覧を元に経費計上をする。

その上で、決算時に実際に利用されたもののクレジットカード代金の引き落としがされていない分について、「未払費用」などの費目で追加計上をするということも多いのではないでしょうか。

領収証のないカード引き落としなども紛れているとクレジットカード利用一覧を見ながら、領収証ですでに経費計上したものとまだ経費計上していないものをチェックするのは、かなり面倒ですから。

発生主義で調整した分は翌期でマイナスしないと重複計上に

期中は、現金主義で計上していたものを、決算時に発生主義に調整をした場合、翌期その処理を”戻す”作業が必要になります。

たとえば、

請求日の翌月末に入金のある得意先の売上高について、期中は現金主義で計上していたものを決算時(12月決算)に発生主義に計上したとします。

前期決算

12月分の売上高の入金は翌期の1月であり、まだ売上高の計上がされていないため

売掛金/売上高 12月分

の追加計上がされます。

翌期首

翌期の1月に12月分が入金されるため

預金/売上高 12月分

の計上がされますが、これだと前期に既に計上された12月分の売上高が翌期にもう一度重複して計上されることになります。

そのため

売上高/売掛金 12月分

という仕訳を”戻す”(再振替仕訳といいます)ことで、その売上高の重複計上を回避するとともに、売掛金の残高を0にすることができるのです。

この処理は、現金主義を発生主義に変更した場合だけではなく、締め後の売上高や仕入高を計上した時も同じです。

前期末の追加計上は翌期の期末で洗い替え処理を

問題は、この前期末の追加計上分をいつ”戻す”のかということです。

上記のように翌期首である1月に前期の12月分の売上高追加計上の再振替仕訳をしたとします。

これが簿記検定での「正解」です。

すると、翌期1月の売上高はどうなるのか?

現金での入金により計上された売上高と前期の売上高の戻しで相殺され、売上高が0になってしまいます。

つまり、翌期首に前期追加計上分の再振替仕訳を行うと、期中はずっと一月分の売上高や仕入高が足りない状態で、期末に一月分が追加計上されるということになるのです。

これで、期中の業績を正しく判定できるのでしょうかね?

では、どうすればよいのか。

この収益、費用の期末での調整は毎期必ず行われるものです。

それであれば、翌期首で振替仕訳をするのではなく、毎期決算期に前期末の分を再振替仕訳をし、当期分を追加計上をするという「洗い替え処理」を行うことで、期末での”ブレ幅”は、前期の計上分と当期の計上分の差額のみになる。

そうすることで、期中での業績予想の確度を高めることができるはずです。

いや、それでは、決算が来るまで、売掛金や買掛金の残高を合わせられず、チェックができないのではないか?

大抵の会計ソフトでは、仕訳入力に「決算」というコードがあるはずです。

前期末に決算整理で追加計上した売上高や仕入高については、この「決算コード」で翌期首に振替仕訳を入れておけばよいのです。

そうすることで、期末の段階での売掛金、買掛金の残高として把握ができるので、売掛金や買掛金の残高のチェックは、期中でも問題なくできるはずです。

決算時点で、いきなり一月分余計に売上高や経費の追加計上がされて、予想していた利益が大きく狂ったということがないようにしたいものですね。

まあ、クレジットカード決済の経費なんざ、どうせ翌期に経費算入されるんだし、いちいち締め後経費として追加計上なんかしなくてもね。

税務調査でなにか追徴されそうになったら、「確定債務だからこれも追加費用計上してくれ」とかいう「やさぐれ税理士」には、なっちゃいかんですよ。

セミナー音源No.13:どこまでならOK?税務のさじ加減

9割の人が間違えている「会社のお金」無料講座公開中

「減価償却で節税しながら資産形成」
「生命保険なら積金より負担なく退職金の準備が可能」
「借金するより自己資金で投資をするほうが安全」
「人件費は売上高に関係なく発生する固定費」
「税務調査で何も指摘されないのが良い税理士」

すべて間違い。それじゃお金は残らない。
これ以上損をしたくないなら、正しい「お金の鉄則」を