地方の中古不動産が都心の物件よりも利回りが高い本当の理由
都心はバブルでもうまともな利回りが取れない?
先日のファイナンス理論のクローズドの勉強会で説明した話をここでもさせていただきます。
さて、最近は都心のマンションが高騰しており、賃貸してもまともな利回りが取れないなどと言われています。
そのため、まだ利回りの高い地方の物件に投資家の注目が集まるというのは、二十数年前のバブル初期に似た感じがします。
当時、その尖兵の一人であった私も、都心では土地の割合が高くて節税効果が少なくなると、名古屋→福岡→札幌→仙台→花巻温泉とより利回りが高く土地の価格の低い物件を追い求め節税商品に選定していったものです。
では、なぜ、地方の物件は都心の物件よりも利回りが高いことが多いのでしょうか?
ー都心は既に買い尽くされてしまっているが、まだまだ地方には利回りの高いお宝物件が眠っているー
「どうもそういうことではないよ」という地方の物件の利回りが高い本当の理由についてファイナンス理論を元に考えてみようと思います。
都心の物件の家賃と地方の物件の家賃は同じ価値?
「今日の100円は明日の100円よりも価値がある」
これはファイナンス理論で最も大切な考え方の一つです。
投資した資金は、時の経過によりリターンが期待できます。
例えば、年利2%のリターンが期待できるのであれば、100円は1年後には102円になるので、今の100円は1年後の102円と同じ価値ということになるわけです。
逆にいうと1年後の100円は現在の価値に置き直すと約98円(100円÷1.02)の価値しかないことになります。
この時の将来の価値を現在の価値に置き直した金額を「現在価値」といい、その算出の際に用いた係数を「割引率」といいます。
投資をするかしないかという検討をする場合、将来どうなるかわからない収入を、今すぐ手にできるお金と同じ評価をしてはその判断を誤ります。
投資するお金は今すぐ支出するのですから、投資による将来の収入も現在価値に置き直した上で比較をする必要があります。
この将来の収入を現在価値に割り引くのであれば、将来のリスクを加味してそれぞれ割引率を変えなくてはならないでしょう。
つまり、将来不安定なものほど、その価値は割り引いて評価する必要があるのです。
さて、都心の物件であれば、仮に空室になってもすぐに埋まります。
少子化になっても地方から人が集まるのでその影響が出るのは他の地域よりも遅い。
長期的にみても今の家賃からみて大きく目減りはしないと期待できるはずです。
一方で地方の物件であれば、少子化の影響も出やすく、特に中古物件であれば長期間にわたってみると今の家賃がそのまま維持できるのか微妙でしょう。
ちょうど、今の年収が同じ1000万円だったとしても若手官僚(都心の新築物件)と一発屋のオッサン芸人(地方の中古物件)では将来の収入に対するリスクに差が出てくるのと同じです。
もし、投資をするのであれば、今の年収が一緒なら同じ投資価値とは考えず、前者に高い評価を与え、人気が集まるのではないでしょうか。
利回り=家賃/投資額
つまり、今の家賃が同じ金額だとしても、将来その家賃が維持されるという期待が高いものほど人気が集まり物件の取得価額が高くなるのに対し、将来その家賃が維持されるかは不透明だというものほど
人気がなく物件の取得価額が安くなるわけです。
不動産の利回りは家賃÷投資額という算式で表されます。
そのため、今の家賃が同じであれば、人気がなく金額が安くて買える地方の中古物件の方が都心の物件よりも投資額は小さくなるので、当然利回りも高く見えるわけです。
しかし、本当の意味での不動産投資の効果を考えるのであれば、将来の家賃を今のお金と同様に評価するのではなく、リスクに応じた割引率で現在価値に置き直した上で判断をしなくてはなりません。
これをNPV法(正味現在価値法)といいます。
事実、不動産投資ファンドなどでは、不動産投資の適否の判定の際には、エリアや築年数ごとに独自に定めた割引率によりその物件の適正投資額を弾き出しているのです。
要するに、地方物件にせよ、海外物件にせよ、中古物件にせよその物件の投資利回りが高いということは、将来の家賃についてそれだけ不安定な要素が多いということかもしれません。
将来の家賃を現在価値に割り引けば、その期待利回りもぐんと下がるはず。
投資先が若手官僚だと思っていたら、実は一発屋オッサン芸人だったと。
別に、利回りが高い=お得なお宝物件というわけではなさそうですね。
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