こんな社員旅行は行ったら給与課税されるぞ

社員旅行の実施率は激減したが

民間シンクタンク、産労総合研究所の調査によると社員旅行の実施率は、1994年には88.6%であったものが、2020年の調査では27.8%に減ってきているとのこと。これはコロナ禍の影響はあるようですが、前回の2014年の調査でも36.9%ですから、まあ、年々減ってきていることは間違いないでしょう。

休みの日まで会社の人と過ごしたくないという人も多いのでしょうが、実際に「社員旅行や合宿には、効果がある」と語る社長は、意外と多いものです。

そこで今回は、会社が役員や社員を旅行に行かせる場合、参加者は誰で、どんな条件で行き、どのくらいの期間、どのくらいの金額の旅行ならば、給与課税されずに損金になるのかをまとめてみることにします。

給与課税されないための3つの条件

本来、社員旅行代を会社が負担するということは、社員はタダで旅行ができることになるので、その分の経済的な利益を得ているということになります。

「休みを潰されておいて税金まで取られるのか」といいたくなる人もいるでしょうが、税務の考え方では、この経済的な利益については、原則、給与として課税がされます。

しかし、その金額が僅少なものについては、”お目こぼし”として課税をしないでも良いということにされているのです。

具体的には、次の3つの条件を満たした場合、社員旅行の費用を会社が負担していても、給与課税はされず会社の損金となります。

概ね会社負担が一人10万円まで

まず社員旅行に行くことで生じる経済的な利益が、社会通念に照らして妥当なものでないといけません。

具体的な金額は定められていませんが、一般的には、会社負担が10万円程度のものまでというのが一つの目安になります。

旅行の期間が4泊5日以内であること

期間としては、宿泊日数は4泊5日までが対象です。

なお、海外旅行の場合には、「現地での滞在日数が4泊5日以内」であるので、機中泊はカウントしません。

旅行に参加した人数が全体の人数の50%以上であること

特定の人だけの旅行はNGで、少なくとも半数以上の人が参加することが必要です。

なお、工場や支店ごとに行う旅行は、それぞれの職場ごとの人数の50%以上が参加することでもよいので、必ずしも全社員で一律に実施なくても、部署単位などで実施したのであれば、その50%以上が参加すればOKです。

これらの点については、質問が多いのか、国税庁のタックスアンサーでも給与課税か損金かの例をわざわざ提示しています。

事例1

  1. イ 旅行期間3泊4日
  2. ロ 費用及び負担状況 旅行費用15万円(内使用者負担7万円)
  3. ハ 参加割合100%

 旅行期間・参加割合の要件及び少額不追及の趣旨のいずれも満たすと認められることから原則として非課税

事例2

  1. イ 旅行期間4泊5日
  2. ロ 費用及び負担状況 旅行費用25万円(内使用者負担10万円)
  3. ハ 参加割合100%

 旅行期間・参加割合の要件及び少額不追及の趣旨のいずれも満たすと認められることから原則として非課税

事例3

  1. イ 旅行期間5泊6日
  2. ロ 費用及び負担状況 旅行費用30万円(内使用者負担15万円)
  3. ハ 参加割合50%

 旅行期間が5泊6日以上のものについては、その旅行は、社会通念上一般に行われている旅行とは認められないことから課税

ちなみに、過去の裁決例では現地2泊3日でほぼ全員が参加していた社員旅行であっても、会社負担が一人につき241,000円だったことをもって高額と判断、給与課税がされたものがあります。

国税不服審判所裁決例(平成22年12月17裁決)

こういう旅行は給与課税がされる

一方で、このような旅行をして会社がその費用を負担すると給与課税されるので注意が必要です。

不参加者に現金を支払う

上記の本来であれば給与課税をされない範囲の社員旅行であっても、バランスをとるために不参加者に金銭を支給すると社員旅行に参加した人まで給与課税がされます。

だったら、休みを潰して社員旅行なんて行かずにお金をもらったほうがいいと考える人が多いでしょうが、税務上は一人でも「自己都合での不参加者」が金銭をもらうと、参加者までその「不参加者がもらった金銭の額」について、お金はもらっていないのに給与課税がされるので注意が必要です。

成績優秀者へのご褒美旅行

営業コンテストでの成績優秀者やノルマ達成のご褒美として、特定の個人だけを旅行に行かせると、上記の参加者割合の要件を満たさないので、その旅費は、給与として課税がされます。

ただ、部署全体でノルマを達成したご褒美として、その部署の全員が旅行に行ったのであれば、上記の要件を満たす限り給与課税はされないでしょう。

なお、永年勤続の表彰として旅行に招待する場合、概ね10年以上の勤務に対して社会通念上相当な金額であれば、給与課税はされません。

中には旅行券で支給をする場合もあるでしょうが、旅行券は換金が可能なので、そのまま渡し切りだと給与課税される可能性が高いです。

税務調査で指摘されても良いように、実際の旅行の行程表や領収証は提出してもらい、きちんと旅行券が消費されたことを明らかにしておく必要があります。

役員だけの慰安旅行

役員だけで行った慰安旅行というのは、その費用は、役員への給与とされます。

それも定時同額の支払いではないので、損金にもならず、税務調査で指摘されると法人税も所得税も負担する”往復ビンタ”になるのです。

じゃあ、「夫が社長、妻が従業員の会社で社員旅行」にいけば、「役員だけじゃないし、全員参加だし、給与課税はされない」かというと、そりゃ難しいだろうと。

通達でも「実質的に私的旅行と認められる旅行」は給与とされています。親族でない従業員に一人でも参加していればまず問題はないですが。

実際の税務調査では、他の指摘事項について認める代わりに、これは指導に留めてもらうということも多いでしょうけどね。

従業員レクリエーション旅行や研修旅行(タックスアンサー)

2020年社内イベント・社員旅行等に関する調査(産労総合研究所)

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