役所も法人の利子割を廃止したし、会社も受取利息のグロスアップなんかやめちゃえば?

受取利息からは、国税・地方税が控除されている

ただでさえ雀の涙ほどの受取利息ですが、そこからちゃんと国税(利子源泉税)と地方税(利子割)が控除されています。

この二つの税金は、利息を受け取る相手が法人であれ個人であれ違いはなかったのですが、平成28年1月以降法人が受け取る利息について、利子割は控除されなくなりました。

そこで、今回は、法人の経理処理についてどんな影響があるのかをみてみましょう。

スポンサードリンク

法人で控除された利子割は損金不算入の上、道府県民税から控除される

法人の経理処理上は、税金控除後の金額をそのまま受取利息(収益)として計上する方法も税金控除前の金額を受取利息(収益)とし、差し引く税金を両建てにする方法のどちらも認められております。

受取利息から控除される利子源泉税と利子割は、それぞれ法人税と(都)道府県民税の前払いであり、その支払いをしたとしても損金不算入となります。

代わりに、所得に対して課税される道府県民税の「所得割」からこの利子割を控除することができます。

本来、控除された税金は、それぞれ控除された金額を利息計算書で確認すべきですが、普通預金の利息は通帳に金額が印字されただけなので、その金額から税金控除前の金額を”グロスアップ”して計算をしなくてはなりません。

具体的には、利子源泉税の税率が15.315%(復興特別所得税含む)、利子割の税率が5%の合計20.315%。

つまり、税金控除後の金額は、税金控除前の金額の79.685%になります。

ですから、税金控除後の金額を0.79685(1-20.315%)で割り戻すことで税金控除前の金額を算出することが可能になります。

そうやって算出された税金控除前の金額にそれぞれ15.315%と5%を掛けて利子源泉税と利子割の金額を求めます。

平成28年1月以降法人が受け取る利息からは利子割は控除されていない

しかし、平成28年1月以降法人が受け取る利息からは利子割が控除されません。

そのためグロスアップする時に用いる割合は、0.84685(1-15.315%)になります。なんとも面倒ですね。

ちなみに税負担上は、受取利息は、収益として課税所得になり、そちらに道府県民税の「所得割」が課税されることになります。

控除の後の受取利息額で計上していれば、この改正により課税所得が増加して所得割の金額が増加しますし、控除前の受取利息額で計上していれば、所得割から控除する利子割が減るので所得割の金額が増加します。

要するに、今回の改正は別に法人の税負担が軽減されるということではないということです。

集計処理の手間が税負担軽減に見合うのか

利子源泉税の税率が15.315%(復興特別所得税含む)、利子割の税率が5%の合計20.315%。

それが平成28年1月以降は見た目15.315%に下がります。しかし、その分、法人税割が増えるので結局負担は減っていません。

利子割の金額が数十円などであれば(そもそも道府県民税は100円未満切り捨て)、還付する自治体はむしろ管理や振込のコストが掛かるので、「法人の利子割なんかもういらない」ってことになるわけです。

「なんて税金の無駄遣いなんだ。でも、役所はこういうのを変えられないのだろうな」と思っていたところ、自治体が課税の理念を置き去りにしても実利を選んだのは意外でしたし、正しい判断だと思います。

同様に、経理処理をする会社もグロスアップして税金控除前の金額にする節税効果とそのための手間を冷静に比較することは忘れてはなりません。

セミナー音源No.13:どこまでならOK?税務のさじ加減

9割の人が間違えている「会社のお金」無料講座公開中

「減価償却で節税しながら資産形成」
「生命保険なら積金より負担なく退職金の準備が可能」
「借金するより自己資金で投資をするほうが安全」
「人件費は売上高に関係なく発生する固定費」
「税務調査で何も指摘されないのが良い税理士」

すべて間違い。それじゃお金は残らない。
これ以上損をしたくないなら、正しい「お金の鉄則」を