【確定申告】寄付金控除と寄付金特別税額控除どっちを使うのが得なのか?
目次
所得控除と税額控除
個人が、国や自治体、日本赤十字社などの公益の活動をしている団体に寄付をした場合、税制上の優遇措置があることはご存知でしょう。
しかし、この税制上の恩典には、「寄附金控除」という所得控除と「寄付金特別控除」という税額控除のどちらかを選べることはご存知でない方も多いのではないかと。
そこで、今回は、個人が国や公益法人などに寄付をした場合の税制上の恩典についてまとめてみることにします。
寄付金控除(所得控除)
寄付金控除とは?
国や地方公共団体、特定公益増進法人などに対し、「特定寄附金」を支出した場合には、所得控除を受けることができます。これを「寄附金控除」といいます。
所得控除とは、所得税の課税対象となる「課税総所得金額」を計算する際に、給与所得等所得の合計額から差し引くことが出来るもので、他には、医療費控除や社会保険料控除、扶養控除、配偶者控除などがあります。
寄附金控除の対象となる寄付金
寄付をすれば何でも寄付金控除の対象になるわけではなく、次に掲げる「特定寄附金」として寄付した場合に、寄付金控除を受けることができるのです。
(1) 国、地方公共団体に対する寄附金(寄附をした人に特別の利益が及ぶと認められるものを除きます。)
(2) 公益社団法人、公益財団法人その他公益を目的とする事業を行う法人又は団体に対する寄附金のうち、次に掲げる要件を満たすと認められるものとして、財務大臣が指定したもの
イ 広く一般に募集されること
ロ 教育又は科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に寄与するための支出で緊急を要するものに充てられることが確実であること
(3) 所得税法別表第一に掲げる法人その他特別の法律により設立された法人のうち、教育又は科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与するものとして、所得税法施行令第217条で定めるものに対する当該法人の主たる目的である業務に関連する寄附金((1)及び(2)に該当するものを除きます。)
なお、所得税法施行令第217条で定めるものとは、次の法人をいいます(以下「特定公益増進法人」といいます。)。
イ 独立行政法人
ロ 地方独立行政法人のうち、一定の業務を主たる目的とするもの
ハ 自動車安全運転センター、日本司法支援センター、日本私立学校振興・共済事業団及び日本赤十字社
ニ 公益社団法人及び公益財団法人
ホ 私立学校法第3条に規定する学校法人で学校の設置若しくは学校及び専修学校若しくは各種学校の設置を主たる目的とするもの又は私立学校法第64条第4項の規定により設立された法人で専修学校若しくは各種学校の設置を主たる目的とするもの
ヘ 社会福祉法人
ト 更生保護法人
(4) 特定公益信託のうち、その目的が教育又は科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与する一定のものの信託財産とするために支出した金銭
(5) 政治活動に関する寄附金のうち、一定のもの(寄附をした人に特別の利益が及ぶと認められるもの及び政治資金規正法に違反するものを除きます。)
(6) 認定特定非営利法人等(いわゆる認定NPO法人等)に対する寄附金のうち、一定のもの(寄附をした人に特別の利益が及ぶと認められるものを除きます。)
(7) 特定新規中小会社により発行される特定新規株式を払込みにより取得した場合の特定新規株式の取得に要した金額のうち一定の金額(1千万円を限度とします。)
実務上は、寄附金控除の対象となる寄付をすると、寄付先から「この寄付は寄附金控除の対象になる」旨の記載された領収証が発行されるので、そちらを見て控除の可否を判断することになります。
寄附金控除限度額
上記の特定寄附金であれば、いくらでも寄付金控除が受けられるわけではなく、次の算式で計算された金額が寄附金控除の限度額となります。
次のいずれか低い金額-2千円=寄附金控除額
イ その年に支出した特定寄附金の額の合計額
ロ その年の総所得金額等*の40%相当額
*「総所得金額等」とは、純損失、雑損失、その他各種損失の繰越控除後の総所得金額、特別控除前の分離課税の長(短)期譲渡所得の金額、株式等に係る譲渡所得等の金額、上場株式等に係る配当所得の金額、先物取引に係る雑所得等の金額、山林所得金額及び退職所得金額の合計額をいいます。
要するに、いくら特定寄付金を支出したとしても総所得金額の40%から2,000円を差し引いた金額が、寄附金控除の上限であるということ。まあ、そんなに寄付をする人はあまりいないとは思いますけどね。
公益社団法人等寄付金特別控除(税額控除)
公益社団法人寄付金特別控除とは?
公益社団法人等特別控除とは、公益社団法人等に対するに寄附金で一定のものについては、「寄付金控除」ではなく一定金額の「税額控除」を選択することが出来るというものです。
税額控除とは、課税総所得金額に税率をかけて計算された算出税額から税額を差し引くもので、他には、住宅ローン控除などがあります。
公益法人等寄付金特別控除の対象となる寄付金
対象となる寄付先は次のようなものがあります。
(1) 公益社団法人及び公益財団法人
(2) 私立学校法第3条に規定する学校法人及び同法64条第4項の規定により設立された法人
(3) 社会福祉法人
(4) 更生保護法人
(5) 国立大学法人、公立大学法人、独立行政法人国立高等専門学校機構又は独立行政法人日本学生機構
公益法人等寄付金特別控除額の計算
税額控除の金額は、上記の対象寄付金額から2,000円を差し引いた金額に40%を掛けた金額となります
税額控除額=(公益法人等への寄付金ー2,000円)☓40%
ただし、税額控除額は所得税額の25%が上限です。
また、「その年中に支払った公益法人等への寄附金の額の合計額」については、その年分の総所得金額等の40%相当額が限度とされます。
寄付金控除と公益法人等寄付金特別控除どちらが有利か
では、寄付金控除も公益法人等寄付金特別控除もどちらも適用できる場合には、どちらを選べばよいのでしょうか?
答えは、その人の所得金額次第ということになりますが、通常は「寄付金特別控除」を選択したほうが有利なことが多いということになります。
公益法人等寄付金特別控除は、寄付金額の40%が課税総所得金額に税率をかけた算出税額から控除されるとなると、所得控除である寄附金控除のほうが税額を軽減する効果が大きくなるには、課税総所得金額に対する最高適用税率が40%超でないといけません。
所得税の最高適用税率が40%を超えるのは課税所得が4,000万円超なので、所得税額の25%を突破してしまうほど高額な寄付をしない限り、一般的な所得水準の方はまずは税額控除から適用を検討しておけば良いことになるはずです。
(課税総所得金額が1,800万円超部分は所得税の最高税率が40%なのでどちらを適用しても税額は同じです)
私が申告する場合には、とりあえず申告ソフトに両方入れてみて所得税額が少ない方を選びます。
受験生じゃないので、こんなの手計算でやる自信ないですわ。
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