税務調査で「おみやげ」という名の修正申告をわざとするなんてこと本当にあるの?

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税務調査の「おみやげ」ってなによ?

どうも税務というのは、巷ではおもしろおかしく語られることが多く、よくわからない都市伝説がまことしやかに語られています。

例えば、ベンツは4ドアだったら損金になるが、2ドアだと損金にならないとか。はっきりと言ってそれは誤りであり、ドアの数で損金性が判断されるようなことはありません。

税務調査についても、税務調査を早く終わらせるためにあえて修正申告をするという「おみやげ」を持たせたほうが良いだとか、いやいや、そんなことをしたらカモだと思われてまた調査に来られるだの
と言われたりします。

そこで、今回は、税務調査で「おみやげ」なんてものが必要なのかどうかについて話をしてみます。

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税務調査は公務員の仕事である

税務調査は、会計監査と非常によく似ています。

ですから、税務署員がどんな思いで仕事をしているのかというもの私たちはよく理解できるのです。

では、税務署員はどんな行動原理で動いているのでしょうかそれは、現場では好かれていないことを十分理解しながら、公務員として淡々粛々と仕事をこなしているというものです。

よほど正義感やコンプレックスを刺激して本気で仕事をする気にさせない限り、別に租税正義の実現のために不正を正そうとしているわけでもないのです。

要するに「ちゃんと仕事をしましたよ」と上司に報告ができるような体裁が整うことが最低限必要ということです。

つまり

・ちゃんと調べていないとあとで叱責される重要な項目はすべて調査をする

・なので、重要な項目で一つ指摘事項を見つけても、他の重要な事項もチェックする

・何も指摘事項がないとちゃんと仕事をしてきたのかといわれるので出来れば何か指摘をしたい

・なので、重要な項目から調べるが、何も指摘事項がないと指摘することが細かくなる

・もちろん、それでも何もなければそれはそれでやむを得ない

と言うことになるわけです。

ですから、わざと修正申告をするようなミスをあえてしたからと言って、それを税務署員が見つけたら「ハイ、仕事はオシマイ」なんてサッサと税務調査を終わらせるということもありません。

ましてや、本来支払うべき必要もない修正申告をすることで、税務調査を早く終わらせるということもないでしょう。

と、言いたいところですが、昔はそれに近いことはあったんですよ。

20年以上前に私がまだ勤務税理士だった頃には、昼飯にビールを飲みながら「在庫を1500万円修正申告してくれれば調査終わらせてもいいですよ」なんてことを言ってくる退官前のやる気のない調査官も実際にいました。

でも、大蔵省のノーパンしゃぶしゃぶ接待騒動以来、税務署の綱紀はやり過ぎだろうと言うくらい厳しいので、今ではそういう人はまずいないはずです。

なにせ、お茶やコーヒーと言った液体は出されても手をつけてもいいが、お菓子やケーキのような固体には手をつけてはいけないなんて言われているんですから。

もし、そのような論拠のない大雑把な修正を「おみやげ」などと言っているのであれば、当然「そんなことはする必要がない」というが正解になるでしょう。

まあ、そういうことを求めてくる調査官には、独立して100回以上税務調査の立ち会いをしてきて一度もあたったことはないですが。

でも、否認覚悟で一発勝負に出ることはある。

ただ、正直に言うと、場合によっては、否認覚悟で損金に入れると言う処理をすることはあります。

詳細は、今後の申告に影響が出るのでぼんやり話しますが

例えば、支出時の損金にするか、固定資産とするかについて通達に明記されていないものがあったりします。

それを一度固定資産とすると、損金になるのに非常に時間が掛かるというのであれば、お客様に説明をした上で、税務調査で確実に否認されるとわかっていてもあえて一時の損金として処理をするのです。

当然、税務調査では、固定資産であると指摘をされるのですが、その根拠となる通達が曖昧なのでその点をついた反論をします。

最終的には、税務署の指摘に従うことになるのですが、他にも指摘事項があった場合に「この点を認めたのだから他の指摘事項は指導にとどめて欲しい」という交渉の材料に使うのです。

なお、この場合の修正は「見解の相違」であるため、重加算税の対象となることはまずありません。

要するに、否認されたところで、元々の処理に戻る+過少申告加算税等の負担で済むのであれば、否認覚悟で損金に埋め込んでおくことで、税務調査でのトータルのダメージを小さくするように仕掛けておくという事はあるのです。

このあたりは、税務署だって「とりあえず言ってみるか」と考えたとしか思えないような屁理屈で無理筋の修正を求めてくることもあるのでお互い様というか。

なので、この否認覚悟の損金算入を「おみやげ」と言われれば、あるといえばあるし、単純に「修正申告に応じるような税理士はダメ」って言われるのもチョット違うかなと。

修正申告をすると次に税務調査に来る間隔が短くなるとも言われますが、悪質な脱税があれば、要巡回監査先として税務調査の頻度は確かに上がります。

ただ、この程度の軽微な修正申告であれば、その後の税務調査の間隔が短くなったと感じたことは、私自身は今のところありません。

(幅はあるのですが、還付請求をしない限り5年に一度というのが最近の中小企業の税務調査の間隔の目安ではないかという気がしています。なお、年商が1億円未満程度の小規模法人だともっと間隔は長くなります。)

一切修正を求められない申告というのは、むしろ簡単にできるんです。

そのほうが税理士も税務調査の対応はラクなので、お客様がそれを望むのであれば税理士は喜んでそういう申告をします。

頼まれてもいないのに、「自分の趣味」でわざわざ危ない橋を渡ろうとする税理士なんていやしません。

実際に、私の所でも細かいどうでもいいような指摘だけしてきたのを含めれば、何の修正もしない申告のほうが多いくらいです。

だから「うちはいつも税務調査で何も修正に応じない税務調査に強い税理士」というのも少し違う気がするのです。

税務調査の対応というのはまさにケースバイケース。

お客様の要望は「税務調査は不安なので少しでも早く終わらせてほしい」「多少否認されてもいいから1円でも税金が安くなるように申告してくれ」「本業で稼いだほうがずっといいからキッチリ申告をして欲しい」と千差万別です。

その上、会社の事業規模や経理業務処理の量も全く違いますし、こちらの知らないところで勝手に脱税をされていることもあれば、明らかに会社が経理処理を間違えている場合や、そもそも自分が申告したわけでもないものの税務調査の対応をする場合もあります。

なので、どんな税務調査の対応方法が正解と言うことは一言では言えないと思います。

要するに、認められた範囲内でお客様の要望に合うように最善を尽くすのがプロというものの正義なのではないかなと思うわけでして・・・。

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