売上至上主義はいけないというけれど融資で売上高は超重要です|コロナで年商を超える融資を受けたなら

売上至上主義ではなく利益第一主義へ

企業経営のスローガンとして「売上至上主義ではなく利益第一主義」へということが言われます。

要は、無理に売上の数字を上げることを目指すのではなく、利益を軸に判断せよということでしょう。

儲かりもしない売上を伸ばしても意味はないのは当然のことですが、融資を受ける際には、そうも言っていられません。

そこで、今回は、融資の余力はどのように決められるのかと売上高の関係、そして、コロナ禍での融資が平常時に戻ったときの影響について見てみることにします。

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融資の余力を判断する主な2つの指標

金融機関では、その会社に対してどれだけの融資の余力があるかについて、各種の指標を用いて計算をしていますが、主なものに次の2つがあります。

債務償還年数

債務償還年数とは、その借金を何年で返せる稼ぎがあるのかということです。

会社の稼ぎとは、利益に対する納税額を支払った残りである「当期純利益」がベースになります。

ただ、減価償却費は、「その年度」に支出されたものではないので、当期純利益に減価償却費を加えることで簡便的に「一年間で稼ぎ出したお金」としています。

この「一年間で稼ぎ出したお金」を毎年融資の元本返済に当てることのできる「返済可能財源」と考えるのです。

返済可能財源=当期純利益+減価償却費

借金の総額をこの「返済可能財源」で割ることで、このままの稼ぎを生み出し続ければ何年で会社の借金を返済できるのかという「債務償還年数」を計算することができます。

債務償還年数=総借入金残高/返済可能財源

一般的には、この債務償還財源は10年以内であることが望ましいとされています。

平均月商倍率

返済可能財源ともう一つ、金融機関からよく指摘されるものに「平均月商倍率」というものがあります。

これは、借入金の残高が平均月商の何ヶ月分あるのかという指標です。

平均月商倍率=借入金残高/平均月商

業種によって粗利益率は大きく異なるので、一律でどこまでなら良いのかは言いにくいですが、返済余力としてみると、粗利益率の低くめの「卸売業であれば平均月商の三ヶ月分」、粗利益率の高めの「製造業・小売業・サービス業であれば平均月商の六ヶ月分」までであれば融資が過大とされることは少ない。

しかし、平均月商倍率が8ヶ月を超えるレベルから金融機関は何らかの改善策を求め始め、平均月商倍率が12ヶ月、つまり、借入金残高が年商を超えると新規の融資のハードルが一気に上る傾向があるのです。

やっぱり融資を受けるには売上高が重要

「借金が過大である」という状況は、借り入れる時点で起きていることはそれほど多くはないです。

端から返せないような借金をさせるメリットは銀行には少ないですから。

多くの場合、借金過多であるとされるのは、その借金によりなされた投資が失敗したときです。

見込んでいた投資が失敗して、思うように売上高が上がらない。売上高が上がらないから平均月商倍率が高くなって借入過多と評価される。

つまり、借りるときには問題がないと思っていたものが、その後、売上高が増えなかったり減少したりすることで融資が過大だということになるのです。

このような状況から新規の融資を受けるためには、是が非でも売上高を確保し、平均月商倍率を改善する必要がある

利益至上主義が叫ばれたとしても、融資については、依然として売上高というのは大きな意味を持つのです。

コロナ禍での融資は平常時にも尾を引く

新型コロナウィルスという未曾有の危機に対応するため、国は、破格の条件で緊急融資に応じています。

その審査内容についても、平常時にはありえないほど鷹揚であり、中には年商を超えるのような融資を受けられた会社も多々あるでしょう。

どれだけコロナ禍の影響が大きくそして長く続くのかが誰にもわからない状況では、「できるだけ高台に逃げる」かのようにとにかく融資を受けてお金を多く積んでおくということは、安全を確保するためにも残存者利得のためにも大きな意味を持ちます。

しかし、これは、あくまでも緊急避難です。

国も金融機関も有事の対応をしたものであり、あなたの会社の返済余力を吟味して融資をしたわけではありません。

要するに「ゲタを履かせて」もらって実力以上の融資を”前借り”したようなものなのです。

年商を超えるような融資に応じたのも、コロナ禍を乗り切るためという特別な事情があってのこと。

平常時には、融資に対する姿勢はまた元に戻ります。

その平時に戻った時に、年商を超えるような融資残高となっている場合には、追加の資金調達は相当難しいことを覚悟する必要があるでしょう。

その中で新たな融資を引き出すには、それを可能にするだけの売上高を増やさなくてはならない。

なので、売上高を増やすために緊急融資のお金を使うのであれば何ら問題はないです。

しかし、思わぬ形で好条件の融資を受けられたことでフトコロに余裕ができたのか、まるで使いみちを考えるかのように散財をすると、あとで思うような資金調達ができずに苦労することも。

巷では、コロナ禍の緊急融資のおかげで、中小企業オーナーにポルシェが売れているとか。実際に私の周りにもそのような声はちらほらと聞かれます。

今のところ思ったより悪影響は小さかった会社であったとしても、コロナによる経済的なダメージはここからが本番なんじゃないですか?

それに、良いか悪いかは別にして、間違いなく国は、バラ撒いたお金をキッチリと増税で早期に回収するつもりです。

瀕死の状態なのに増税ですからね。生き延びるのは並大抵のことじゃないはず。

せっかく「とにかくお金をかき集めて」とお願いして一時はちゃんと「高台に避難した」のに、なんで、「田んぼの様子を見に行く」ような支出をするんですかね。

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