親から相続や贈与を受けた不動産や株式を売ったときの課税関係を丁寧に説明します

不動産や株式の値上がり益には課税

不動産や株式を譲渡した場合、その「値上がり益」については、譲渡所得税が課税されます。

この値上がり益とは、譲渡対価-(取得費+譲渡費用)とされるのですが、意外と間違えるのが、親から贈与や相続で取得をした時の取得費です。

多くの方は、相続税や贈与税を支払って自分のものにしたのだから、その時の相続税評価額(時価)から売ったときまでの値上がり益に課税がされると思っているようで。

そこで、今回は、親から相続や贈与を受けた不動産や株式を譲渡したときの課税関係についてまとめてみることにします。

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結論は、相続や贈与で取得した資産は取得費を引き継ぐ

結論からいうと、

相続や贈与により取得した不動産や株式を譲渡した場合、原始取得者(親や祖父母など最初にお金を払って取得した人)の取得費や取得した日を引き継ぐことになります。

例えば、祖父から父に相続された株式を父から贈与されたとし、その株式を第三者に譲渡したとします。

祖父は創業者であり、額面50円でその株式を取得したとし、その株式が祖父の相続時には500円に値上がりをしており父が相続税の納税をしたとします。

その後、さらに株式の評価額は上がり800円となったところで、父から子供に贈与がされ、子供が贈与税の支払いもしました。

その上で、後日、その株式を子供が1,000円で第三者に譲渡したとします。

このときの譲渡益は(譲渡費用はないものとします)譲渡対価1,000円から原始取得者である祖父の取得費50円を差し引いた950円となり、まとめて子供がその譲渡所得税を支払うということです。

相続税・贈与税と譲渡所得税は課税対象が全く別のもの

「バカ高い相続税や贈与税を支払ったのに、その上、親父や爺さんの代までの値上がり益について譲渡所得税が取られるのは納得がいかない。」

たしかにそうなのですが、そもそも相続税・贈与税と譲渡所得税は、その課税対象が全く別のものです。

相続税・贈与税というのは、財産を受け取った側の課税です。一方、譲渡所得税というのは、財産を売った側の課税です。

また、日本の所得税では、資産の評価額が上がりいくら含み益が生じていたとしても、課税はされず、実際に譲渡をしたときに課税がされるのです。

先の例をよく見て下さい。子供が第三者に売るまで、株式の値上がり益は確定せず、ずっと含み益のままなので一度も譲渡所得税は課税がされていません。

その含み益は譲渡した時点ではじめて確定する。

今まで一度も値上がり益について課税がされていないのですから、原始取得者の取得費から譲渡対価までの利益がまとめて譲渡所得税が課税がされるということなのです。

いい変えれば、含み益への課税も相続や贈与で引き継いだということ。そのため、譲渡所得の計算では、取得費や取得日が引き継がれるのです。

*原始取得者の取得費が不明な場合、取得費を譲渡対価の5%とすることができます。

相続税、贈与税は値上がり益には関係ない

じゃあ、あの相続税や贈与税はなんだったんだと。

あくまでも、相続税や贈与税は、無償で財産移転を受けることによる利益に対する課税であり、資産の値上がり益は関係はないでしょう。

仮に1億円で購入した不動産が3,000万円に値下がりしていたとすれば、原始取得者7,000万円の損をしていますが、その不動産を相続または贈与を受けた子供は3,000万円を無償で受け取ることになるので、その分の経済的利益に相続税、贈与税が課税されるということなのです。

その資産が買ったときより値上がりしていようが値下がりしていようが、子供が3,000万円儲かったという事実には変わりはないですから。

もちろん、その後6,000万円まで値上がりしてから子供が売ったとしても、3,000万円(6,000万円-3,000万円)儲かったというのではなく、4,000万円(1億円-6,000万円)の譲渡損が生じたものとして譲渡所得税は課税はされないんです。

とにかく、譲渡所得税は、確定した財産の値上がり益に対する課税なので、途中で、相続や贈与があってもその値上がり益には関係がない。その時に、値上がり益への譲渡所得税は支払ってないですよね?

ですから、譲渡所得税の計算では「相続や贈与はなかったものと考え、譲渡の事実だけを見ておく」とわかりやすいでしょう。

*相続した土地を相続税の申告期限から3年以内に譲渡した場合、その土地に対応する相続税額を譲渡所得から控除することができる特例もあります。相続税の納税のために土地を売ったら、譲渡所得税を取られて相続税が払えないというのはあまりにかわいそうということですね。

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