人に何かを依頼するときに「目的」を伝えるだけで一気に生産性が上がる

ムダなキャッチボールを減らしたい

我々税理士はお客様からのご質問やご依頼に応えるのが仕事です。

ですから、お客様と何度でもやり取りをすることは問題はないのですが、中には最初に「なぜこの作業が必要なのか」という「ご依頼の目的」をきちんと共有していれば、もっと早く問題解決につながっていたのではないかというやり取りを目にすることも。

そこで、今回は、人に何かを依頼したり依頼されたりする時には、「なぜこの作業が必要なのか」という「目的」を共有するようにしたいという話をしようと思います。

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目的を伝えるだけでこれだけムダが省ける

人に何か依頼をする場合には、「誰に」「何を」「いつまでに」「いくらで」やってほしいという事項はまず間違いなく伝えるはずです。

しかし、「なぜ」それをしてほしいのかと言うのは、伝えられないことも多いもの。

ここに「なぜ」という作業の目的を伝えるだけで、次の3つの効果が生まれるのです。

求められる精度がわかる

お客様から「◯◯」を作って欲しいというご依頼だけでは、果たしてそれがどのくらいの精度を要求されるものなのかがわかりません。

例えば、自社株式の評価についても、何に使うのかで評価方法が変わりますし、それが将来に自社株移転をするかどうかの検討をするために概算値として知りたいのか、すぐに事業承継対策として自社株の譲渡をし、申告をするために知りたいかで、求められる数字の精度は全く異なるのです。

当然、高い精度を求められるものであれば、作業も多くなるので、時間もコストも多くなります。

目的をよく確かめもせず、全力で細かい作業を詰めて時間を掛けて金額を出したところで、お客様が、意思決定のための概算値が知りたいだけであれば、その作業はムダなものです。

その上、余計に時間を要した結果、すぐに概算値を伝えるよりも満足度は低くなってしまうでしょう。

一言「何にその数字を使うのですか?」とその作業の目的を共有しておくだけで、求められる精度を把握でき、求められた精度での最適な成果物をスピーディに提示することが可能になるのです。

臨機応変な対応ができる

マニュアル化を進めようとすると「画一的な対応ばかりで臨機応変な対応ができない」などという反論がよく聞こえてきます。

しかし、臨機応変な対応をするには、実は判断基準となる「基本の型」がなければできません。

「なぜこの作業をするのか」が明示されていれば、基本の型に合わないようなケースでも、その目的に照らせばどうすべきであるかがわかるとともに、できない場合の代替案の提示も可能になります

ですから、良品計画(無印良品)の「赤字からのV字回復」に大きく貢献したと言われる業務マニュアル「MUJIGRAM」には、それぞれの作業の各項目の最初に「何を実現するために作業を行うのか」という目的が「何・なぜ・いつ・誰が」の4項目で示されているのです。

無印良品は2000+6600ページの「マニュアル」で生き返った|ダイヤモンドオンライン

やらなくていいことが判断できる

そもそも依頼をする側がその目的を正しく理解していないケースも意外と多いものです。

例えば「とにかく早く税金を還付するための申告書を出してほしい」と依頼されることがあります。

依頼されたとおり、他の仕事よりも優先してその還付申告を至急に提出することは可能でしょう。

しかし、その目的が「早くお金が帰ってくれば、その分資金調達が不要でムダな金利を支払わなくて済むからだ」というのであれば、むしろ還付申告は急がないほうが良いことになります。

というのも、還付申告の場合には、還付金を受け取るまでの期間に応じて市中の調達金利よりも高いこともある「還付加算金」がもらえるからです。

その場合には、還付金が帰ってくるのは遅いほうが有利であり、金利削減のためならばわざわざ急いで還付申告をする必要性はそもそもないということになるのです。

ですから、何か人にものを頼まれたときにその目的を共有すると、実はやらなくても良い作業であることを見分けることができることもあり、無駄な作業をしなくても済むのです。

いきなり目的は?と聞かずやんわりと

このように人に何かを頼むとき、頼まれるときには、その目的を共有しておくだけで一気に生産性が上がります。

何でも頼まれたら急いで一心不乱に作業に取りかかれば良いというものではないのです。

しかし、人から何かを依頼されて「で、その目的はなんなんです?」とストレートに聞くのはどうなのかなと。

「うるせえな、グダグダ言わずにサッサとやれば良いんだよ」という反発を買うのではないかと。

ですから

「承知いたしました。」

「ご参考までにお伺いしますが、それはなんのためになさるのですか?」

一旦は全力で要望を受け入れる姿勢を見せた上で、広い視野から他のより良い選択肢を見つけるためにも「なぜその作業が必要なのか」という目的を共有したいという姿勢を示す必要はあるでしょう。

これは、頼まれる側に求められる姿勢であるのとともに、頼む側にも求められる姿勢でもあります。

より生産性の高いコミュニケーションを取るためには、頼む側からも積極的に「こういう目的のためにこの作業をしてほしい」ということを最初に伝えるようにしたいものですね。

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