生計を一にする親族が負担すべきものでも自分の所得控除の対象となるものならないもの
目次
年末調整・確定申告で悩ましい「生計を一にする親族」
確定申告(年末調整も)では、各種の「所得控除」というものが控除された上で税金が計算されます。
このときに悩むのは、自分以外の「生計を一にする親族」が負担すべき支出です。
これについては、本人の所得控除の計算上含めても良いものとそれができないものに分かれます。
そこで、今回は、生計を一にする親族に対するものであっても自分の所得控除の計算上対象になるものにはどんなものがあるのかについてまとめてみることにします。
そもそも生計を一にするとはどんな人?
納税者本人に対するもののだけでなく、
・生計を一にする親族が負担すべきものであり
・納税者本人がその負担をしたもの
については、納税者本人の所得控除の計算に含めてもよいこととされています。
では、そもそも「生計を一にする」とはどんな人のことをいうのでしょうか?
国税庁は以下のように説明をしています
日常の生活の資を共にすることをいいます。
会社員、公務員などが勤務の都合により家族と別居している又は親族が修学、療養などのために別居している場合でも、
①生活費、学資金又は療養費などを常に送金しているときや、
②日常の起居を共にしていない親族が、勤務、修学等の余暇には他の親族のもとで起居を共にしているときは、「生計を一にする」ものとして取り扱われます。
つまり、生計を一にする親族とは、まずは、「物理的に生活を一緒にしている同居人」が該当します。
その上で、仮に物理的には別居をしていたとしても、「仕送りなど金銭的に支援をしている場合や余暇には実家に戻ってくるような関係の親族」についても生計を一にする親族であるとしているのです。
要するに、同居親族*のほか、仕送りをしている子供や老親、単身赴任者とその家族についても、生計を一にする親族だということです。
*同居親族であっても、「明らかに互いに独立した生活を営んでいると認められる場合」は「生計を別にする親族」とされます。今回は、生計を一にするほうが有利な場面の話をしていますが、中には「青色専従者給与」など「生計を別」とされる方が有利となるケースもあるのです。
生計を一にする親族のものの支出の所得控除
本来は生計を一にする親族自身が支払うべきものだが、本人がその金銭的な負担をしている場合には、本人の所得控除の計算に含めることが可能なものがあります。
(1)医療費控除
医療費控除は、一定金額(原則10万円)を超える医療費の支払いをした場合、その部分の金額について所得控除の対象となるものです。
この医療費控除については、「自己又は自己と生計を一にする配偶者その他の親族に係る医療費を支払った場合に適用すること」とされています。
例えば、郷里で一人暮らしをしている母親の医療費を子供が支払った場合、母親の年収が少額で子供からの仕送りで生活しているという状況であれば、その子供は、その医療費について本人の医療費控除の額に含めて適用を受けることが可能です。
一方で、母親に十分な資力があり、仕送りで生活をしているという事実が認められない場合には、別居の母親の医療費を子供本人の医療費控除の計算に含めることはできないのです。
同居していない母親の医療費を子供が負担した場合|タックスアンサー
(2)生命保険料控除・地震保険料控除
生命保険料控除、地震保険料控除とはそれぞれの保険に加入した金額に応じて一定金額の所得控除が受けられるものです。
生命保険料控除などの対象となる生命保険契約等とは、一定の生命保険契約等で、その保険金等の受取人の全てをその保険料の払込みをする者又はその配偶者その他の親族とするものと定められています。
契約者が誰であるかは要件とされていません。
したがって、この要件が充たされている限り、実際に保険料を支払った人の生命保険料控除の対象になります。
また、地震保険料控除については、自己や自己と生計を一にする配偶者その他の親族の所有する家屋で常時その居住の用に供するもの又は生活に通常必要な家具、じゅう器、衣服などの生活用動産を保険や共済の対象としているものです。
こちらも生計を一にする親族が居住の用に供するものであっても、実際に保険料を支払った人の地震保険料控除の対象となります。
あくまでも、実際にその保険料を支払った者がこの所得控除対象となりますから、通常は契約者本人の口座から保険料の引き落としがされており、その契約者が支払ったものとされます。
もし、生計を一にする親族名義の保険料控除証明書を別の生計を一にする親族の申告の所得控除に適用するためには、その保険料を本人が支払ったことを明らかにする必要があります。
また、厳密に言えば、契約者以外の保険を別の人が支払った場合には、もらったときの保険金の課税関係で不利になることもあります。
ですから、本当に本人が保険料の負担をしている限り、家族が契約者の生命保険料を一番所得の高い人の生命保険料控除の対象とすることも可能ですが、本来、生命保険料控除の使い方としては、好ましくはありません。
しかし、現実にはそのような申告をしていることは多く、さすがにそこまで細かい吟味がされていないのか、そのことで修正を求められているケースは少ないようです。
妻名義の生命保険料控除証明書に基づく生命保険料控除|タックスアンサー
(3)社会保険料控除
社会保険料控除とは、社会保険料を負担した場合に認められる所得控除です。
この社会保険料控除は、納税者が自己又は自己と生計を一にする配偶者やその他の親族の負担すべき社会保険料を支払った場合には、その支払った金額については本人が所得控除を受けることができます。
こちらも、口座振替については、引き落とし口座として指定した預金名義人が、実際に負担をした人の社会保険料控除の対象となり、そうでない人の社会保険料控除とするのであれば、実際の支払いをした事実の証明が必要です。
親が子供の国民年金や国民健康保険料などを負担したものとして、親本人の社会保険料控除の対象とする申告はよく見られます。
わざわざ、税務署が口座振替の名義人の状況を確認しているとは思えず、実際の負担者を巡って修正申告を求められたというケースはあまりないのではないかと。
しかし、公的年金から特別徴収されている介護保険料については、源泉徴収票にキッチリ記載もされているので、それを覆して別の人が負担したとするのはなかなか難しいでしょうね。
私はやらないです。
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