少額減価償却資産のレンタル事業で突発的に生じた利益を消し去る節税対策のリアルな効果

予想外に儲かったときの税金をどうしても払いたくない

事業を行っていると突発的に期末に多額の売上が上がり、予想外の利益が計上されることがあります。

儲かることは良いことなのですが、多くの方は、この利益はたまたまであって、来期の業績は全く予想がつかない。なので、できるだけ当期の税金は支払いたくないと考えるようです。

そんなときに一番好都合なのは、高齢の創業者などの役員に退職をしてもらい退職金を支給することなのですが、そんなにタイミングよく退職させられる身内の役員がいるとは限りません。

そこで、今回は、予想外に生じた利益を消し去るために即時償却できる減価償却資産取得とその節税効果についてまとめてみることにします。

少額減価償却資産は即時償却が可能

その使用可能期間が1年を超える減価償却資産については、支出時に損金算入に全額損金算入は出来ず、その法定耐用年数に渡って減価償却により損金に算入しなくてはいけません。

しかし、一定金額未満のいわゆる「少額減価償却資産」については、支出時に全額損金算入することが可能です。

(1)10万円未満または耐用年数1年未満

一つあたりの取得価額が10万円未満の減価償却資産やその使用可能期間が1年未満の減価償却資産については、支出時に全額を損金算入することが可能です。

使用可能期間が1年未満のものであるかの判断基準

「使用可能期間が1年未満のもの」とは、法定耐用年数でみるのではなく、その法人の営む業種において一般的に消耗性のものと認識され、かつ、その法人の平均的な使用状況、補充状況などからみて、その使用可能期間が1年未満であるものをいいます。

例えば、テレビ放映用のコマーシャルフィルムは、通常、減価償却資産として資産計上し、法定耐用年数2年で減価償却しますが、テレビ放映期間は1年未満であることが一般的です。

したがって、テレビ放映の期間が1年未満のコマーシャルフィルムは、「使用可能期間が1年未満のもの」に該当します。

取得価額が10万円未満のものであるかの判断基準

この取得価額は、通常1単位として取引されるその単位ごとに判定します。

例えば、応接セットの場合は、通常、テーブルと椅子が1組で取引されるものですから、1組で10万円未満になるかどうかを判定します。

また、カーテンの場合は、1枚で機能するものではなく、一つの部屋で数枚が組み合わされて機能するものですから、部屋ごとにその合計額が10万円未満になるかどうかを判定するのです。

少額の減価償却資産になるかどうかの判定の例示|タックスアンサー

なお、これらが支出時に損金算入できる金額に上限はありません。

(2)10万円以上30万円未満

青色申告法人である中小企業者又は農業協同組合等で、常時使用する従業員の数が1,000人以下の法人が一つあたりの取得価額が10万円以上30万円の減価償却資産を取得した場合、支出時に全額損金算入することが可能です。

しかし、適用を受ける事業年度における少額減価償却資産の取得価額の合計額は、年換算で300万円までとされています。

即時償却が可能になるレンタル商材

いくら支出時に損金算入できたとしても、事業に不必要な商材を購入するのは単なる無駄遣いです。

あえてそれらの支出をするのは、後日その投資額が回収できるからでしょう。そのためには、自分でその商材を使用し売上を上げるか、それが出来ないのであれば、その少額減価償却資産を商材としてレンタルする事業を行うことが考えられます。

そうすることで、支出時にはその取得価額を全額損金算入することで利益を減らし納税を回避しながら、後日レンタル料金と売却代金によってその取得価額分の資金を回収するのです。

そのときに、最近節税商品として用いられる少額減価償却資産には次のようなものがあります。

(1)足場

足場とは、建設現場で、高所作業をする作業員の拠点となる構造物のこと。

一般的にはパイプや丸太などを組み上げて足場を組んでいきます。

これらの足場を購入し、そのままレンタル事業者に貸与し、レンタル事業者は建築会社などにサブリースをします。

貸与期間中は、レンタル事業者からレンタル料を受け取り、後日足場を売却して売却代金をもらいます。

(2)LED

LEDとは、白色の発光ダイオードによる電球であり、耐久性や省電力の観点から白熱灯や蛍光灯よりも優れているとされています。

このLEDを購入し、そのままレンタル事業者に貸与し、レンタル事業者は病院などにサブリースをします。

貸与期間中は、レンタル事業者からレンタル料を受け取り、後日LEDを売却して売却代金をもらいます。

(3)ドローン

ドローンとは無人で遠隔操作や自動制御が可能な小型の航空機のことです。

ドローンは、搭載したカメラで撮影をするだけでなく、農薬の散布などに利用することも可能です。

このドローンを購入し、そのままレンタル事業者に貸与し、レンタル事業者は農家などにサブリースをします。

貸与期間中は、レンタル事業者からレンタル料を受け取り、後日ドローンを売却して売却代金をもらいます。

要するに、レンタル事業者が一括借上げをすることをパッケージにしてこれらの節税商品の販売をしているということですね。

なので、実際には長期利用ができるためレンタル可能な一組で10万円未満の商材だったら何だっていいわけです。

ただの税金の繰延で税負担軽減効果はない

これらへの支出は決算直前にされたものであっても即時償却が可能ですから、決算間際になって予想外の利益が計上された会社にとってみれば、なんともありがたいもの。

しかし、支出時に全額損金になるということは、その事業年度の利益を減らすことが出来ますが、翌年以降はもう減価償却費は生じません。ですからレンタル料は全額が利益に上乗せされ課税対象となります。

仮に合計100万円投資して、もらったレンタル料と売却代金が合わせて100万円だった場合、支出時に100万円損金が生じて税金が安くなる反面、回収したレンタル料や売却代金100万円は全額益金となって税金が増えます。

つまり、トータルで利益も資金収支もトントン。ですから税金もプラスマイナスなどないことになります。

支出したときに損金にしたものは入金があったときには益金になり、支出したときに損金にならなかったものは入金があったときに益金にはなりません。

結局、両者の利益も収支も全く同じなので、支出時に損金になること自体には利益も税負担も減らす効果はないのです。

確かに、予想外の利益が出てしまった場合、その利益をなんとか消して納税を回避したいという気持ちはわかります。

これらの少額減価償却資産のレンタル事業への投資額を調整すれば、自分の好みの利益に毎年着地させることすらできるのですから。この対策の本質は、合法的に会社の損益計算を歪めることができることと言っても良いでしょう。

しかし、それは単なる税金の支払期限を将来に延期しただけのものですし、税金の支払期限を延期する金額以上にお金を先に流出させるものであり、その分手許の資金を減らしてしまうことに注意が必要です。

途中でレンタル業者が倒産したら、投資額は回収不能になることもありますし。

「全額損金」ということばを聞いただけで、脳から”変な汁”が出て、思考能力が低下しちゃう社長も多いですが、節税業者の都合の良い話を鵜呑みにせず、その正しい効能について理解できるようになっていただきたいものです。

<追記2021.12.10>

令和4年度の税制改正により、貸付用の償却資産については、即時償却の対象外となります。

結果的に上記の合法的に損益計算を歪める効果の他、一部で横行していた、償却後の簿価0円で会社から社長に譲渡し、社長が資金負担なしにリース料を受け取るというスキームも封じ込められることになりました。

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