マイホームを売った時の税金は3000万円特別控除と買換特例どっちが得なのか?

都心の地価高騰はバブル期を彷彿させる

湾岸のタワーマンションを中心にコロナ禍を物ともせず、その価格が大きく上昇を続けています。

まさに、私がこの業界に入った30年前のバブル期によく見た風景によく似ています。

これまでは、不動産については譲渡損の処理ばかりでしたが、近年は、譲渡益の課税関係についてのお問い合わせのほうが多くなってきています。

特にマイホームについては、譲渡損益についてはいくつかの優遇措置があります。

そこで、今回は、マイホームを譲渡した場合の課税関係について、何を選択するのが有利なのかを検討してみようかと思います。

(1)居住用不動産3,000万円特別控除

マイホーム(居住用財産)を売ったときは、所有期間の長短に関係なく譲渡所得から最高3,000万円まで控除ができる特例があります。

適用要件

(1) 自分が住んでいる家屋を売るか、家屋とともにその敷地や借地権を売ること。なお、以前に住んでいた家屋や敷地等の場合には、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。

(2) 売った年の前年及び前々年にこの特例または「マイホームの譲渡損失についての損益通算」及び「繰越控除の特例の適用」を受けていないこと。

(3) 売った年、その前年及び前々年に「マイホームの買換え」や「マイホームの交換の特例の適用」を受けていないこと。

(6) 売手と買手が、親子や夫婦など特別な関係でないこと。

特別な関係には、このほか生計を一にする親族、家屋を売った後その売った家屋で同居する親族、内縁関係にある人、特殊な関係のある法人なども含まれます。

マイホームを売ったときの特例|タックスアンサー

(2)10年超所有居住用不動産の軽減税率

自分が住んでいたマイホーム(居住用財産)を売って、一定の要件に当てはまるときは、長期譲渡所得の税額を通常の場合よりも低い税率で計算する軽減税率を受けることができます。

適用要件

この軽減税率の特例を受けるには、次の5つの要件全てに当てはまることが必要です。

(1) 日本国内にある自分が住んでいる家屋を売るか、家屋とともにその敷地を売ること。

なお、以前に住んでいた家屋や敷地の場合には、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。

また、これらの家屋が災害により滅失した場合には、その敷地を住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。

(注) 住んでいた家屋又は住まなくなった家屋を取り壊した場合は、次の3つの要件全てに当てはまることが必要です。

イ 取り壊された家屋及びその敷地は、家屋が取り壊された日の属する年の1月1日において所有期間が10年を超えるものであること。

ロ その敷地の譲渡契約が、家屋を取り壊した日から1年以内に締結され、かつ、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。

ハ 家屋を取り壊してから譲渡契約を締結した日まで、その敷地を貸駐車場などその他の用に供していないこと。

(2) 売った年の1月1日において売った家屋や敷地の所有期間がともに10年を超えていること。

(3) 売った年の前年及び前々年にこの特例を受けていないこと。

(4) 売った家屋や敷地についてマイホームの買換えや交換の特例など他の特例を受けていないこと。ただし、マイホームを売ったときの3,000万円の特別控除の特例と軽減税率の特例は、重ねて受けることができます。

(5) 親子や夫婦など「特別の関係がある人」に対して売ったものでないこと。

「特別の関係がある人」には、このほか生計を一にする親族、家屋を売った後その売った家屋で同居する親族、内縁関係にある人、特殊な関係のある法人なども含まれます。

マイホームを売ったときの軽減税率の特例|タックスアンサー

軽減税率

所有期間5年超の長期譲渡所得には所得税15%、住民税5%の課税がされますが、上記の要件を満たす場合には、以下の部分について軽減税率が適用されます。

課税所得 所得税 住民税 合計
6,000万円
以下の部分
10% 4% 14%

*2037年までは、復興特別所得税として所得税の10.21%が課税されます。

(3)特定居住用不動産の買換特例

特定のマイホーム(居住用財産)を、令和3年12月31日までに売って、代わりのマイホームに買い換えたときは、一定の要件のもと、譲渡益に対する課税を将来に繰り延べることができます。

例えば、3,000万円で買ったマイホーム*が8,000万円で売れた時にはその差額の5,000万円が譲渡所得となります。

しかし、8,000万円のマイホームを新たに購入した場合には、旧マイホームを売った譲渡益についての課税をせずに、その新たに購入したマイホームの譲渡損益と合わせて課税をするというものです。

決して、買換特例は旧マイホームの売値以上の新マイホームを購入すれば、旧マイホームの譲渡益が非課税になるというわけではないのです。

あくまでも、旧マイホームの売値と同額以上の新マイホームを買うと手許のお金がないのに、旧マイホームの譲渡益についての譲渡所得税を納税するのは困難になり、新マイホーム取得にも支障が出るだろうとの判断で、「今回は」課税を見送るが、次に新マイホームを売ったときにまとめて課税をするというものなのです。

*譲渡所得の計算上差し引く取得費は、買った時の取得価額から時の経過に応じた建物の「減価の額」を差し引いたものとなります。

適用要件

(1) 自分が住んでいる家屋を売るか、家屋とともにその敷地や借地権を売ること。なお、以前に住んでいた家屋や敷地等の場合には、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。

(注) 住んでいた家屋又は住まなくなった家屋を取り壊した場合は、次の3つの要件全てに当てはまることが必要です。

イ 取り壊された家屋及びその敷地は、家屋が取り壊された日の属する年の1月1日において所有期間が10年を超えるものであること。

ロ その敷地の譲渡契約が、家屋を取り壊した日から1年以内に締結され、かつ、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。

ハ 家屋を取り壊してから譲渡契約を締結した日まで、その敷地を貸駐車場などその他の用に供していないこと。

(2) 売った年、その前年及び前々年にマイホームを譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例またはマイホームを売ったときの軽減税率の特例若しくはマイホームの譲渡損失についての損益通算及び繰越控除の特例の適用を受けていないこと。

(3) 売ったマイホームと買い換えたマイホームは、日本国内にあるものであること。

(4) 売却代金が1億円以下であること。

(5) 売った人の居住期間が10年以上で、かつ、売った年の1月1日において売った家屋やその敷地の所有期間が共に10年を超えるものであること。

(6) 買い換える建物の床面積が50平方メートル以上のものであり、買い換える土地の面積が500平方メートル以下のものであること。

(7) マイホームを売った年の前年から翌年までの3年の間にマイホームを買い換えること。また、買い換えたマイホームには、取得した時期により次の期限までに住むこと。

イ 売った年かその前年に取得したときは、売った年の翌年12月31日まで

ロ 売った年の翌年に取得したときは、取得した年の翌年12月31日まで

(8) 買い換えるマイホームが、耐火建築物の中古住宅である場合には、取得の日以前25年以内に建築されたものであること、又は一定の耐震基準を満たすものであること。

(9) 買い換えるマイホームが、耐火建築物以外の中古住宅である場合には、取得の日以前25年以内に建築されたものであること、又は、取得期限までに一定の耐震基準を満たすものであること。

(10) 親子や夫婦など特別の関係がある人に対して売ったものでないこと。

 特別の関係には、このほか生計を一にする親族、家屋を売った後その売った家屋で同居する親族、内縁関係にある人、特殊な関係のある法人なども含まれます。

特定のマイホームを買い換えたときの特例|タックスアンサー

3,000万円控除と買換え特例のどちらを選択するのか

では、「3,000万円控除」と「買換特例」のどちらを選択すればよいのでしょうか?

まず、もう一つの「10年超所有の軽減税率」ですが、「3,000万円控除」との併用はできますが、「買換特例」との併用はできません。

旧マイホームの売値以上の新マイホームを購入すれば、買換特例を選択することで全額今回税金の支払いは次回まで繰り延べられますが、新マイホームの購入額のほうが小さい場合には、譲渡所得も発生します。

その譲渡所得には、3,000万円控除はもちろん、10年超所有の軽減税率も適用できないのです。

ですから、居住用不動産の譲渡益の特例については、「3,000万円控除」+「軽減税率」と「買換え特例」のどちらかが得なのかを考えることになります。

「買換特例」はあくまでも、今回の課税は次回に先送りしてあげるというものであり、それ自体に税負担軽減効果はありません。

それに対して、「3,000万円控除」も「10年超所有の軽減税率」も今回の税負担を直接軽減するものです。

ですから、譲渡所得が生じた場合には、まずは「3,000万円控除」を、さらに要件に合致すれば「10年超所有の軽減税率」を適用することから検討したほうが有利なことが多いのです。

ーいや、新しく購入するマイホームは終の棲家にするつもりで売るつもりはない。それであれば、税金が一切出ない「買換特例」のほうが得ではないか

しかし、自分自身は売ることはなくとも、自分が亡くなったあとでその相続人がその新マイホームを譲渡することはあるかもしれません。そのときの譲渡益の計算でも旧マイホームの取得費が引き継がれることになります。

つまり、被相続人が支払うべきであった税金が、相続人にまで引き継がれてしまうということなのです。

では、あえて「買換特例」を選択するのはどういう場合でしょうか?

一つは、あまりに譲渡益が大きく、今回納税資金が確保できない場合です。

例えば、1億円の譲渡所得が生じたら、3,000万円控除と10年超の軽減税率を使っても譲渡所得税は約1,060万円。

後で支払うにしても、今回は納税を回避したいという選択はあるでしょう。

もう一つは、今回はたまたま不動産市況がよくて値上がりしたが、新マイホームは値上がりが期待できないというケース。

旧マイホームの譲渡益と新マイホームの譲渡損が通算されて結果的に税負担が3,000万円控除を使うより軽減されるケースがないわけではないかもしれません。

将来の不動産市況は誰にもわかりません。最後は損得をきちんと理解した上でお好きな方をお選びください。

セミナー音源No.22:リアルにお金を増やす節税の設計図

インフィードモバイル

9割の人が間違えている「会社のお金」無料講座公開中

「減価償却で節税しながら資産形成」
「生命保険なら積金より負担なく退職金の準備が可能」
「借金するより自己資金で投資をするほうが安全」
「人件費は売上高に関係なく発生する固定費」
「税務調査で何も指摘されないのが良い税理士」

すべて間違い。それじゃお金は残らない。
これ以上損をしたくないなら、正しい「お金の鉄則」を