暗号資産に関する税務上の取扱いまとめ|譲渡・使用・マイニング・レンディング

暗号資産に関する税務上の取扱いについての改定(令和3年12月)

暗号資産(仮想通貨)についての税務上の取り扱いについては、FAQ(よくある質問とその答え)が国税庁から公表されています。

これまで適宜項目の追加がされていましたが、令和3年12月にも新たに「ステーキング」「レンディング」などの取り扱いが加えられました。

そこで、今回はこれまでのFAQをベースにして暗号資産の課税関係をまとめてみることにします。

法人税・所得税

暗号資産の売買を通じて利益を生じたり、暗号資産を無償で受け取った場合には、法人であれば法人税が、個人であれば所得税(原則として雑所得)が課税されます。

売買・使用

暗号資産を売買した場合、譲渡対価(売ったときの金額)ー取得費(買ったときの金額)について課税対象となります。

法人の場合、暗号資産の譲渡損益については、法人の他の所得と合算の上、まとめて法人の課税所得となります。つまり、譲渡損が生じた場合でも法人の他の所得との通算が可能ということです。

個人の場合には、暗号資産の譲渡益については、雑所得として*、他の所得と合算の上累進課税が適用されるという総合課税の対象となりますが、譲渡損については他の所得との通算ができないのです。

なお、暗号資産を譲渡して別の暗号資産を購入した場合でも、暗号資産を一旦譲渡し、そのお金で別の暗号資産を購入したと考えます。

同様に暗号資産を決済手段として商品を購入した場合も、暗号資産を一旦譲渡し、そのお金で商品を購入したとします。

つまり、暗号資産で他の暗号資産や商品等を購入した場合であっても、一旦譲渡をしたとされた時点でそれまでの譲渡損益については課税対象となるということです。

暗号資産取引が雑所得ではなく事業所得とされるケース

1.その暗号資産取引自体が事業と認められる場合

暗号資産取引の収入によって生計を立てていることが客観的に明らかである場合

2.その暗号資産取引が事業所得等の基因となる行為に付随したものである場合

事業所得者が、事業用資産として暗号資産を保有し、棚卸資産等の購入の際の決済手段として暗号資産
を使用した場合

事業所得とされると、その取引による利益も損失も、給与所得などの他の所得との通算がされます。

分岐

暗号資産はその利便性向上のためのアップデートがなされ、その際に「分岐」(フォーク)によって新たな暗号資産が誕生し、旧所有者に対して新たな暗号資産が付与されることがあります。

このときに無償で新たな暗号資産を取得したことになりますが、その暗号資産の時価は0であるため、新たに取得した暗号資産の取得価額は0となり法人、個人ともに課税関係は生じません。

これは、あくまでもまだ相場がない暗号資産なので時価が0とされるのであり、何らかの理由で暗号資産を無償で付与された(ボーナス、エアドロップなどの)ケースでは、その暗号資産が既に活発に取引される取引所があるなど「時価がある」場合、その時価での所得があったとされるでしょう。

なお、新たに取得した暗号資産を譲渡した際には、取得価額が0円であれば、譲渡対価がそのまま譲渡益となります。

マイニング・ステーキング・レンディング

マイニングとは、暗号資産の取引承認に必要となる複雑な計算を手助けした成功報酬として暗号資産を受け取ることです。

ステーキングとは、取引所を通じてその暗号資産を使わず保有することでブロックチェーン維持に寄与する報酬を暗号資産で受け取ることです。

レンディングとは、取引所に自分が所有する暗号資産を貸し付けることでその報酬を暗号資産で受け取ることです。

これらのマイニング、ステーキング、レンディングについては、暗号資産を受け取った時点でその時価相当額が課税対象となります。

なお、その報酬を受け取るために要した費用についてはその課税所得の計算上、必要経費ないし損金に算入することが可能です。

期末時価評価(含み損益)

個人は、暗号資産の年末時点での評価損益を認識する必要はありません。

法人は、活発な市場が存在する暗号資産*については、事業年末ごとに時価での評価損益を当期の損益として計上する必要があります。

つまり、個人では暗号資産の含み損益への課税はないが、法人では暗号資産の含み損益についても毎期課税対象となるということです。

活発な市場が存在する仮想通貨とは、法人が保有する仮想通貨のうち次の要件の「全て」に該当するものをいいます。

イ 継続的に売買価格等が公表がされ、かつ、その公表がされる売買価格等がその仮想通貨の売買の価格又は交換の比率の決定に重要な影響を与えているものであること。

ロ 継続的に上記イの売買価格等の公表がされるために十分な数量及び頻度で取引が行われていること。

ハ 次の要件のいずれかに該当すること。

 (イ) 上記イの売買価格等の公表がその法人以外の者によりされていること。
 (ロ) 上記ロの取引が主としてその法人により自己の計算において行われた取引でないこと。

消費税

売買・使用

暗号資産の譲渡は支払手段の譲渡とされるので、消費税は非課税とされます。

なお、支払手段等に該当する暗号資産の譲渡については、「課税売上割合」の算出に当たって非課税売上高に含めて計算する必要はありません。

マイニング・ステーキング・レンディング

マイニング(採掘)及びステーキング(保有)による報酬は、役務提供の対価であるため消費税の課税対象とも考えられますが、役務の提供を受ける者、反対給付をする者の個別・具体的な存在が特定できないことから、消費税の対象外とされています。

一方、レンディング(貸付)による報酬は、貸付先が国内の取引所であれば消費税の課税対象、貸付先が国外の取引所であれば消費税対象外とされます。

暗号資産に関する税務上の取扱いについて(情報)|国税庁

暗号資産は、一般的な金融資産とは取り扱いが異なることが多いので注意が必要ですね。今後も暗号資産についてのFAQは項目が追加されていくでしょうからその都度こちらも改定していくようにいたします。

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