リアルにお金の残る節税はこの4つのどれか|ただの税金の繰り延べのためにコスト負担や資金拘束をしてはいけない

全額損金に節税効果はない

思いの外、利益が上がってしまったときに、とにかくその利益を減らせればいいと、その支出額全額が損金になる節税商品に飛びつきたくなるもの。

しかし、それらは、利益という”ゴミ”を後ろに履いているだけなので、入金時にしっかり課税をされてしまいます。

要するに、全額損金算入による節税効果は幻想に過ぎないということです。

もちろん、税金など早めに支払うメリットなどないのですから、それがタダでできるのであれば、やったほうがいいのですが、そのために多額のコストが必要であったり、無駄に資金を拘束するだけであれば、ピンチでもチャンスでも自由に使えるお金をできるだけ増やしたいという節税の目的には合わないことにあります。

そこで、現実に税負担が軽減されお金が残る節税対策とはどんなものなのかについて検討をしてみようと思います。

支払ったお金が損金になるのは当たり前で節税効果はない

まず、根本的なことですが、売上を獲得するために支出をした金額については、その損金算入のタイミングはそれぞれですが、必ず損金に算入されます。

ですから、支出したお金が損金に算入されることは当たり前のことであり、節税効果などないです。

それも節税効果と呼ぶのであれば、税理士の顧問料を10倍にすれば、間違いなく税金は減りますよ。

そうではなく、お金を支出した時点では、利益と税金を減らしながら、後日お金が返ってくることを期待して節税対策をしているはず。

しかし、複式簿記の基本的なロジックとして、「支出時に損金になったものは入金時に益金となり、支出時に損金にならなかったものは入金時に益金にならない」というものがあります。

つまり、前者と後者のトータルの利益も税金も同じであるということ。それを支出時に損金になるというところをつまみ食いして節税になるというのは簿記の基本を理解していないゆえの勘違いだということです。

節税の本来の目的は、ピンチでもチャンスでも自由に使えるお金をできるだけ増やしたいということのはず。

単に「税金を支払うのがイヤ」だと、加入時点で目減りすることが確定している節税商品を購入するのは、不良在庫を捨てれば損が生じて税金が減るからと今から不良在庫になりそうな商品を探して買うような愚かなことなのです。

(1)政策的な配慮による

国が企業に対してある行為の促進をするために、税制上の優遇措置を講じることがあります。

例えば、一定の要件を満たす設備投資をした際に実施される法人税の税額控除。

この税額控除は、設備投資の取得価額に一定割合(7%または10%)を掛けた金額だけ法人税を控除できるというものです。

一定の要件を満たす設備投資をした場合には、即時償却とこの税額控除の選択が可能ですが、即時償却は、分割して食べるはずのケーキを「今日は誕生日だから」と買った時点で一気食いが認められただけのことであり、ケーキの大きさが増えるようなものではありません。トータルでの税負担軽減効果はないのです。

それに対して、税額控除は、通常通りにケーキは分割して食べていい上に、今日は誕生日だからとお小遣いをくれるようなものです。

ですから、この設備投資による税額控除にはトータルの税負担を軽減する効果はあります。

ただし、これは、あくまでも必要な設備投資をすることが決まっている場合に、適用すれば税負担軽減効果があるというものであり、何か税額控除が受けられる設備はないかと探すのは本末転倒です。

この他に、政策的な配慮により税負担軽減効果があるものには、所得拡大税制や住宅ローン控除などが挙げられます。

(2)概算の経費計上や控除が生じる

売上を獲得するために支出したお金が損金になるのは、当たり前のことであって、それは節税効果とは言わない。つまり、税負担軽減をする節税対策に期待をするのは、支出した金額以上の損金算入の余地があることでしょう。

しかし、これも複式簿記の原理ですが、原則として「支出もしないのに勝手に損金が湧いてくることはありません」

ただし、その例外があります。それは、概算による経費計上や概算による控除が認められる場合です。

それらの概算での経費計上や控除が認められる場合、実際の支出と概算計上額との間には、支出もないのに損金や控除が湧いて出る部分があり、そこには節税効果が生じます。

例えば、消費税での簡易課税によるみなし仕入率、所得税での給与所得控除、青色申告特別控除などがそうです。

なお、減価償却費が計算上生じる経費であり、現金での支出をその時点では伴うものではないことから「減価償却費は支出もないのの損金になるお得な経費」であるかのように説明をし、収益不動産が節税商品であるかのように扱われています。

しかし、減価償却費は、支出時にまとめて支出をした金額が耐用年数に按分されて損金に算入されるために支出と損金算入のタイミングがズレるだけのことです。

そのズレた瞬間をみて支出もないのに損金が生じると喜んでいますが、取得時には支出をしたのに損金が生じていないことをお忘れではないでしょうか。

減価償却は、決して概算による経費計上が認められているわけではなく、最終的にやっと支出額と損金計上額が一致するだけなので、そこに節税効果はないのです。

(3)課税の構造と税率のギャップがある

税金は課税所得×税率で計算がされます。ですから、課税所得を減らすだけでなく低い税率が適用されることでも節税効果は生じます。

例えば、実効税率約30%と一律だと思われている法人税についても、中小企業については、課税所得が800万円以下の部分については、軽減税率として約20%と10%から12%程度税率が低い部分があります。

ですから、多額の利益の生じている法人が1社しかなければその軽減税率は最大800万円までしか適用できませんが、複数社に分けて事業を運営すればその軽減税率が適用される所得は会社が増えるごとに掛け算で大きくなることになります。

あるいは、支出時に全額損金になることで、利益というゴミを後ろに履いただけで、入金時には全額が益金として課税されるにしても、支出時には多額の利益があり約30%の税負担を軽減しておきながら、入金時には利益が少なく軽減税率適用によって約20%の税率で済むならば、そこには節税効果が生じることはあります。

ただし、そのようなコントロールは現実にはかなり難しいので、思ったような節税効果を得られるケースは稀だと言わざるを得ません。

所得税については、その所得の発生原因により10の所得区分に分かれていて、課税所得の計算方法が異なります。結果的に同じ金額の利益があったとしても税負担の重たい所得と軽い所得が生じます。

それであれば、同じ利益を得たとしても軽い所得で済むように受け取ることで節税効果が生じます。

具体的には、退職所得や一時所得であれば、給与所得よりも税負担が軽減されることから、給与の代わりに退職金などで受け取るなどの方法が考えられます。

なお、「給与所得よりも退職所得のほうが税率が低いので、退職金の準備を生命保険ですると節税になる」などとワケの分からないことを言う人もいますが、退職金支給と生命保険加入はなんの関係もありません。

退職金を支給することに節税効果はあるのでその準備をしたほうがよいですが、別に生命保険に加入をしなくても退職金は支給できます。

それであれば、節税効果もなく解約返戻金が元本割れをする生命保険ではなく、元本割れのしない定期積金で準備をしたほうがトータルの手取りは確実に多くなるのです。

また、所得税については、支出時に控除される所得と入金時の所得区分を変更することでも節税効果は生じます。

例えば、減価償却費により、不動産所得に赤字を生じさせることで税負担は減るものの、譲渡時には、過去に減価償却をした分も控除すると賃貸時と譲渡時で二重に控除をすることになるため、過去の減価償却費は譲渡所得に加算され課税対象となります。

それだけを見れば、トータルの税負担は軽減されないようにも思えますが、不動産所得は最大約55%の超過累進税率による総合課税であるのに対し、譲渡所得(長期)は一律約20%の課税であるため、節税効果が生じます。

ただし、不動産所得の赤字のうち土地を取得するのに要した借入金の利息部分については、他の所得と通算されず切り捨てられます。これは目立たないのですが、ズシリと重く負担となるのです。

概算により支出もないのに損金が生じることで節税になるのに、支出をしても切り捨てられる部分があるということは、節税とは全く逆の効果が生じるということに注意しましょう。

(4)本来売上獲得に必要とはいえない支出を損金算入する

売上を獲得するための支出が損金になるのは当然のことであり、別に節税効果は生じません。

節税効果が生じるには、本来であれば売上獲得に必要とはいえないような支出を、なんとか売上獲得に必要なものなであるかのように屁理屈をつけて、損金算入を税務署に認めさせるということです。

例えば、まあ、それはいいですね。

とにかく、自身が行おうとしている節税対策がなぜ節税になるのかをもう一度よく考えましょう。

それが上記のどれにも該当しない場合には、その節税効果と思われるものが、単なる幻想に過ぎないことが多いです。

仮に、そのために、コストが掛かったり、無意味に資金を固定化するのであれば、やるだけ無駄ですよね。

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