1月に満たない日数が月数の計算に与える影響|住民税と事業税では取り扱いが異なる

意外と多い月割計算

法人の事業活動に関する税金計算は、その事業年度ごとの課税標準により計算がされます。

しかし、創立時や事業年度を変更した場合の1年に満たない事業年度については、その事業年度の月数に応じて計算がされる規定がいくつもあります。

では、その月数について、1月に満たない日数がある場合はどのように取り扱うのでしょうか?

そこで今回は、1月に満たない日数の取り扱いについてまとめてみようと思います。

法人税

中小企業の軽減税率の適用上限800万円、交際費の損金不算入額800万円などは、事業年度ごとの金額ではあります。

それは、あくまでも事業年度が12ヶ月の場合の金額であり、事業年度が1年未満の場合には、それらの上限金額を12で割った金額にその事業年度の月数を掛けて計算をします。

その月数の計算に1月未満の日数がある場合には、切り上げにより1月とみなして月数を計算します。

なお、減価償却費の計算については、月割が原則ですが、1月未満の日数についても同様に切り上げて1月とみなして償却費を計算します。

消費税

消費税の納税義務の有無や簡易課税制度選択の可否については、基準期間の課税売上高により計算がされます。

基準期間が1年未満の場合には、その期間の課税売上高を基準期間の月数で割り12を掛けた金額により計算をします。

その月数の計算に1月未満の日数がある場合には、切り上げにより1月とみなして月数を計算します。

道府県民税・市民税

利益の額に関わらず、法人がその自治体に存在することで、都道府県と市区町村に「均等割」という税金を納付する必要があります。

この均等割額は年間の金額が定められており、事業年度が1年未満の場合には、均等割額を12で割った金額にその事業年度の月数を掛けた金額を納税することになります。

この均等割の計算で用いる月数の計算に1月未満の日数がある場合には、切り捨てて計算をするのが原則です。

ですから、月の途中で事業所を都道府県あるいは市区町村を超えて移転した場合には、それぞれ事業所が存在した月数で一月未満は切り捨てられることになります。

そのため、法人の設立や事業所移転は月の途中のほうが(ほんの少しですが)税金は安くなることになります。

例 3月決算で12月15日に埼玉県から東京都に事業所を移転した

埼玉県 4/1~12/15 8ヶ月と15日→切り捨て→8ヶ月分の均等割

東京都 12/16~3/31 3ヶ月と16日→切り捨て→3ヶ月分の均等割

ただし、トータルで月数が1月に満たない場合には、1月として計算をするので注意が必要です。

例 3月決算で3月15日に埼玉県から東京都に事業所を移転した

埼玉県 4/1~3/15 11ヶ月と15日→切り捨て→11ヶ月分の均等割

東京都 3/16~3/31 16日→切り捨てせず→1ヶ月分の均等割

事業税

事業税についても、中小企業は、軽減税率の適用が可能です。

この軽減税率の適用上限額も事業年度が1年未満の場合には、それらの上限金額を12で割った金額にその事業年度の月数を掛けて計算をします。

その月数の計算に1月未満の日数があった場合には、切り上げにより1月とみなして月数を計算します。

ですから、一緒に都道府県税事務所に納税する住民税と事業税で、1月未満の月数について、住民税は切り捨て、事業税は切り上げとその取扱が異なることになるので注意が必要です。

まとめ

これらの取り扱いを見ると、1月未満の日数については、金額が大きい方が有利なものは「切り捨て」、金額が小さい方が有利なものは「切り上げ」とされることが原則で、「納税者有利」に設計されていることがわかりますね。

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