【インボイス制度】免税事業者からの課税仕入についての法人税での処理|控除対象外消費税とは異なる

インボイス制度の法人税への影響

インボイス制度になると、登録した適格事業者(適格請求書発行事業者)からの仕入れ等しか消費税の控除ができなくなります。

ということは、これまで控除が可能であった免税事業者からの仕入れについては、消費税の控除ができなくなるということです。

では、その控除ができなかった部分の金額については、法人税にはどんな影響を与えるのでしょうか?

今回は、インボイス制度後の免税事業者との取引についての法人税の処理についてまとめてみようと思います。

経過措置期間の免税事業者等との取引

インボイス制度導入から一定期間は、免税事業者等との取引について、消費税相当額に一定割合を掛けた金額だけ消費税の仕入税額控除が経過措置として認められます。

具体的には、導入から当初の3年間は80%、そのあとの3年間は50%が控除可能となります。

では、免税事業者等から購入した資産等について、経理処理はどうするのか。

インボイス制度になると、免税事業者や消費者から購入した資産等については、その支払対価には消費税は含まれていないものと考えます。

具体的な処理としては、法人が税込経理の場合には、相手が誰であっても、支払対価がそのまま、取得価額になります。(*経過措置対象として区分しておく必要はあります)

法人が税抜経理方式の場合には、適格事業者以外の者からの課税仕入れについて、支払対価の額のうち消費税相当額の80%を仮払消費税等の額とし、残額を仕入れや固定資産として法人税の所得金額の計算を行うことになります。

仕入税額控除の対象外となる部分は消費税ではない

なお、この消費税の仕入税額控除ができなかった「控除不能額」と、消費税の95%ルールにおける「控除対象外消費税額等」とは別のものです。

インボイス発行事業者以外の者からの課税仕入れのうち、仕入税額控除の対象外となる部分の金額はそもそも消費税額等ではないため、控除対象外消費税額等としての処理はできません。

ですから、免税事業者から固定資産を購入し、控除のできない消費税相当額が生じた場合でも、課税売上割合が80%以上であれば、即時損金算入が可能になるというものではありません。

費用にかかるものであれば、その費用に加算がされ、支出時に損金、固定資産にかかるものであれば取得価額として償却期間で損金に算入されます。

例えば、免税事業者から1,100万円の建物を取得した場合、その消費税相当額は100万円(1,100万円÷1.1×0.1)となりますが、その80%相当額である80万円は仮払消費税として消費税の納付額の計算上控除されるのに対して、残額の20万円は建物の本体価格相当額(1,100万円ー100万円)に合算され1,020万円が建物の取得価額として減価償却により費用化されるということです。

◆控除対象外消費税

資産に係る控除対象外消費税額等は、次のいずれかの方法によって、損金の額または必要経費に算入します。

(1)その資産の取得価額に算入し、それ以後の事業年度または年分において償却費などとして損金の額に算入します。

(2)次のいずれかに該当する場合には、法人税法上は、損金経理を要件としてその事業年度の損金の額に算入し、また、所得税法上は、全額をその年分の必要経費に算入します。

イ その事業年度または年分の課税売上割合が80パーセント以上であること。

ロ 棚卸資産に係る控除対象外消費税額等であること。

ハ 一の資産に係る控除対象外消費税額等が20万円未満であること。

(3)上記に該当しない場合には、「繰延消費税額等」として資産計上し、次に掲げる方法によって損金の額または必要経費に算入します。

イ 法人税

繰延消費税額等を60で除し、これにその事業年度の月数を乗じて計算した金額の範囲内で、その法人が損金経理した金額を損金の額に算入します。

なお、その資産を取得した事業年度においては、上記によって計算した金額の2分の1に相当する金額の範囲内で、その法人が損金経理した金額を損金の額に算入します。

会計ソフト側で、免税事業者との取引については、そのコードを入力するだけで、消費税の控除不能額が算出されますが、一々別管理するのはやっぱり面倒ですね。

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