基準期間の途中で適格事業者になった場合の納税義務の判定

消費税の納税義務は基準期間で判定

消費税の課税対象となる売上高(課税売上高)が1,000万円以下の事業者については、消費税の納税義務が免除されています。

その消費税の納税義務については、消費税の集計期間である「課税期間」ではなく、その2期間前の期間である「基準期間」で判定をするものとされています。

なぜ、そんな面倒なことをするかというと、消費税の「課税期間」が始まってから、当初は免税事業者だと思っていたもが、売上が伸びて集計してみたら課税事業者であったといっても遡って修正ができません。

そのため、課税期間の初日の時点で、消費税の納税義務があるのかの判定の基となる課税売上高の集計が完了しているようにするため、その課税期間の2期間前の課税売上高で判定をしているのです。

これまでは、消費税の納税義務の有無については、その集計期間である「課税期間」ごとに切り替わっていたのですが、インボイス制度になったことで、課税期間の途中に免税事業者から課税事業者に切り替わることもあります。

では、基準期間の途中で、免税事業者から課税事業者に切り替わった場合、消費税の納税義務の判定はどうなるのでしょうか。

今回は、インボイス制度下での納税義務の判定についてまとめてみることにします。

納税義務の判定は税込売上?税抜売上?

基準期間の課税売上高については、消費税込みの金額と消費税抜きの金額のどちらで、消費税の納税義務の有無を判定をするのでしょうか?

これは、その事業者が課税事業者なのか、免税事業者なのかによって異なります。

課税事業者の場合には、その基準期間の課税売上高について税抜の本体価格で、免税事業者の場合には、課税売上高について税込の金額が、1000万円以下なのかどうかで消費税の納税義務の有無を判定するのです。

これは、課税事業者については、取引の総額には消費税が含まれている、免税事業者については取引の総額に消費税は含まれていないと考えるためです。

9月決算以外の法人は基準期間の途中で切り替わることも

インボイス制度は令和5年10月よりスタートしました。

この10月1日が含まれる基準期間については、9月決算以外の法人と個人事業主について、その期間の途中で免税事業者から課税事業者に切り替わる事業者もいることになります。

免税事業者期間+適格事業者期間の課税売上高で判定

インボイス制度により、基準期間の途中で免税事業者から適格事業者に切り替わる場合、消費税の納税義務はどのように判定をするのでしょうか?

納税義務の判定についての考え方は、インボイス制度になっても変わることはありません。

ですから、免税事業者であった期間については、課税売上高の消費税込みの金額を、適格事業者になってからの期間については、課税売上高の消費税抜きの金額を「合計した金額」により消費税の納税義務を判定することとなるのです。

特に注意が必要なのは、個人事業主の令和7年度の消費税の申告についてです。

インボイスを発行できるよう適格事業者になった免税事業者については、令和8年9月30日までの日の含まれる課税期間までは、その消費税の納税額を売上に伴い受け取った消費税額の2割でもよいという「2割特例」という制度があります。

この「2割特例」は、あくまでも、これまでは免税事業者であった事業者が、インボイス制度になって泣く泣く適格事業者になった場合に適用されるもので、制度開始前から自ら課税事業者を選択していた場合や基準期間の課税売上高が1,000万円超となったことで納税義務が生じる事業者には適用されません。

さて、令和5年度については、10月1日から適格事業者登録をした免税事業者の場合、9月30日までは免税事業者、10月1日以降は適格事業者(課税事業者)となります。

ですから、この令和5年度を基準期間とする令和7年度の消費税の納税義務の判定については

 ・1/1~9/30 課税売上高(税込)

 ・10/1~12/31 課税売上高(税抜)

をそれぞれ合計した金額がもし1,000万円を超えている場合には、令和7年度は2割特例は適用できないことになるわけです。

出典|週刊税務通信No.3777

これまで、免税事業者であった事業者は、課税売上高を意識しながら集計するという習慣がなく、適格事業者になってからの課税売上高を集計すればよいと考えていたかもしれませんが、基準期間の途中で免税事業者から適格事業者に切り替わった場合には、その免税事業者の期間の課税売上高も忘れずに合算する必要があるのです。

【インボイス】課税期間の途中で免税事業者から適格事業者になった場合の消費税の申告

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