金利が気にならない好業績時こそ金利見直しを|成功する金利削減交渉4ステップ

金利が気にならない好業績時こそ金利引き下げ交渉を

契約で定めた融資の金利は、変更できないものなのでしょうか?

実は、条件次第では、契約の途中でも金利引き下げの余地はあります。

特に当初に融資を受けた時より市況の金利水準が大きく下がっていて、自社の業績も好転している場合には、金利引き下げの余地が大きくなります。

そこで今回は、金利が気にならない好業績な時だからこそやるべき金利削減交渉のポイントについてまとめてみます。

スポンサードリンク

黙って言われた金利を支払っても銀行と信頼関係など築けない

もちろん、涙ながらに融資を受けるような業績では、いつ金利を引き上げられても仕方がなく、金利引き下げの交渉などできません。

一方で、好業績であれば、あまり支払っている利息など気にならないかもしれませんが、むしろ積極的に金利引き下げの交渉をすべきなのです。

「交渉したところで引き下げられる利息額など大したことない。つまらない交渉をして金融機関との信頼関係を壊す必要などない。」

では、黙って金融機関に言われたままの利息を支払い続けていれば、金融機関との信頼関係が築けるものなのでしょうか?

残念ながら、単に「金利に鈍感な先」と思われるだけです。

もし、金融環境が変わり、金利が上昇する局面では、「あそこは頼めば金利を上げてくれるはず」と真っ先に金利引き上げの打診が来るでしょう。

知っておきたいあなたの会社の「実質金利」

金利引き下げ交渉をする上で、知っておきたい数字があります。

それは、「実質金利」というものです。

融資を受けた金額というのは、そのすべてが投資や支払いなどに利用される訳ではありません。預金として残るものもあります。

もし、5000万円を年利2%で融資を受けて、2000万円は預金として残っていたとします。

この時の支払利息は100万円(5000万円✕2%)です。2000万円について受取利息もありますが金額が僅少なので0とします。

この時には、契約上5000万円の融資を受けたものの、同じ銀行の預金口座には2000万円が残っているため、実質的に融資を受けたのはその差し引きの3000万円(5000万円—2000万円)のみということになります。

すると、3000万円の融資で100万円(100万円-0円)の利息の負担をしていることになる。これを金利に直すと約3.3%(100万円÷3000万円)となるのです。

自分では2%の金利で融資を受けたつもりなのに、実際には約3.3%の金利の負担をしていたということです。

この実質的な融資に対する金利のことを「実質金利」といい、算式は次のようになります。

実質金利=(支払利息—受取利息)÷(借入金—預金)

これは預金が残り、借金と預金が両建てになっている金額が大きいほど、この実質金利は高くなります。

例えば、先ほどの条件で3000万円の預金が残っていた時の実質金利は5%に、4000万円の預金が残っていた時の実質金利は10%に跳ね上がります。

金融機関が融資をした先に対して、定期積金を求めたり、大口の入金を自行の口座にするように打診してきたりするのは、融資が返済されない時の保全のためということに加えて、この実質金利を高めようとするためなのです。

こういうと「預金と借金の両建ては、こんなにも無駄な利息を払っているのか。やはり、できるだけ両建てはしない方がいい」と思われた方もいるかもしれません。

しかし、この実質金利について説明をしたのは、何も銀行がそっと融資先の知らないところで利益を得ているという指摘をしたいわけでも、預金と借金の両建てしないようにせよといいたいわけではありません。

「これだけの実質金利を取っているのだから、もう少し金利引き下げの余地があるのではないか」という金利引き下げの交渉の材料にしてほしいということです。

両建てにした預金と言うのは、いつでもその預金を使うことの出来る権利を得ているということです。

それがビジネスをする上で選択肢を増やしている訳ですから、両建てにして支払った金利によってその選択肢を買っていると言っても良いでしょう。

選択肢を増やし競争を有利に運ぶためには、たとえ“両建て”による無駄な金利を支払ったとしても手許のお金を確保する。そのためには、借金をすること自体には躊躇しない。

だからこそ、借金についての金利条件については常にシビアな姿勢を貫いて欲しいのです。

成功する金利引き下げ交渉4つのステップ

では、具体的に金利引き下げ交渉はどのように行うのでしょう。

まずは、既存の融資をしてくれている銀行(既存行)に、最近の金利水準や自社の業績、実質金利などを材料にして、現状から金利引き下げの余地があるのではないかという打診をします。

その時点で、既存行が金利引き下げに応じてもらえればよいのですが、なかなか応じてくれないことも多いものです。

そのような場合には、新規に融資取引を狙う銀行(新規行)に既存行の融資の「肩代わり」(融資返済のための資金の融資を受ける)をしてもらえないかという打診をします。

もし、新規行から現状の金利よりも良い条件の提示を受けたのであれば、その時点で、既存行に他行への肩代わりを受ける旨の報告をします。

そのまま、既存行が新規行の肩代わりを認めるのであれば、そのままでも良いですが、多くの場合、既存行が新規行の提示した金利まで引き下げに応じるので肩代わりはしないで欲しいと言ってくると思います。

なぜなら、好業績の企業の融資を肩代わりされるというのは、既存行に取って大きなマイナスとなるからです。

特に、主力の金融機関であれば、決済のための普通預金も含め、比較的多くの預金を有していて、実質金利が高めのオイシイお客様であることが多いのです。

場合によっては、新規行が更なる金利引き下げをしてくることもありますが、まるでオークションのように金利引き下げ競争を煽るようなことは、私はおすすめしていません。

できれば、新規行の提示した金利まで、既存行に現状の金利を引き下げてもらいそのまま融資を継続する

というのも、融資の肩代わりをされるということは、最悪の場合、その金融機関との融資のパイプを閉ざしてしまうことにもつながるからです。

低い金利の提示を受けるたびに、融資の肩代わりを受けていては、融資のパイプを狭めてしまいます。

これでは、複数の金融機関との融資のパイプを持ち、資金の安定供給と競争の促進を図るということを目指しているのに、本末転倒となってしまうでしょう。

あくまでも、金利引き下げ交渉の目的は、「ぬるい」融資取引をしている既存行の目を覚ましてもらうためなのです。

では、新規行への対応はどうしたら良いのでしょう。

肩代わりの打診をした時にも、「既存行が金利引き下げに応じた場合には、そちらで借り続けるが良いか」と申し伝えた上で、別の資金需要が発生した場合に、新規行から融資を受けるようにすれば良いのです。

こうすることで、複数の金融機関からの融資のパイプをつくり上げることにつながることでしょう。

競合は、競争力の弱い県外店舗を狙え

では、どのような金融機関に肩代わりの打診をすれば良いのでしょうか?

実は、同じ金融機関であっても、支店ごとに提示される金利は違います。

同じ地方銀行であっても、大きなシェアを有する地元の支店では、高い金利の提示をしながら、競争力の弱い「県外店舗」では、新規開拓のために”金利のバーゲンセール”を行っていたりするのです。

地方銀行の東京支店は、上場した地元企業の東京の拠点の対応をするのが主力業務で、一般の融資に注力していないことが多いので例外ですが、例えば、千葉県に拠点のある地方銀行の埼玉県での支店などを競合先に選定すると効果的です。

ただし、県外店舗は収益性が悪いことが多いので撤退されることもままあります。

そのため、主力金融機関というよりは、サブの金融機関として取引をしたほうがよいでしょう。

「そんな、金融機関と厳しい交渉などしたら、業績悪化の際には助けてくれないのではないか?」

そもそも、業績悪化の際に金融機関は助けてくれるものなのでしょうか?

年商が5億円程度の企業であれば、メインバンクなどという言葉自体幻想にすぎないと思います。

業績が良ければ、各金融機関からの融資の打診があふれかえり、業績が悪くなれば、信用保証協会の利用を前提にしないとなかなか融資には応じてくれない。

それが中小企業に対する金融機関の融資姿勢だと思っておいたほうが良いでしょう。

これまでに何度も厳しい金利引き下げ交渉のアドバイスをしてきましたが、そのような交渉をしたからといって、「江戸の敵を長崎で打つ」ような仕打ちを金融機関から受けたことなどありません。

むしろ、「ぬるい」条件提示などされずに、最初から「適正」な金利の提示がされています。

少なくとも、黙って金融機関の提示する金利を支払い続ければ、業績悪化した時に助けてくれるということにはつながらないでしょう。

銀行とは「お金の仕入先」のようなもの。

なにもしないのに金融機関から「金利の水準も下がって来たし、御社の業績も良いので金利を下げておきました」などと言ってくることもないのです。

金融機関からは、「あそことは取引を拡大したいが、一筋縄ではいかないタフな会社」と思われるような緊張感のある取引を心がけたいものです。

お金を残す法則

手許資金の厚みは選択肢の幅。必要な手許のお金を確保するためならば借金をすることに躊躇しない。その代わりに金利条件については、常にシビアな姿勢で取り組む。

まずはここから金融機関対応基礎の基礎

<出典>

ケチな社長はなぜお金を残せないのか? ケチな社長はなぜお金を残せないのか?
吉澤 大かんき出版 2015-03-24
売り上げランキング : 299197Amazonで詳しく見る by G-Tools

9割の人が間違えている「会社のお金」無料講座公開中

「減価償却で節税しながら資産形成」
「生命保険なら積金より負担なく退職金の準備が可能」
「借金するより自己資金で投資をするほうが安全」
「人件費は売上高に関係なく発生する固定費」
「税務調査で何も指摘されないのが良い税理士」

すべて間違い。それじゃお金は残らない。
これ以上損をしたくないなら、正しい「お金の鉄則」を