法人で所有する仮想通貨は期末に時価評価する必要があるのか

個人では仮想通貨の含み益への課税はなし

個人で所有する仮想通貨について他の通貨への交換や使用などにより生じた利益については、含み益が実現したものとして雑所得となります。

一方で、個人で所有する限りいくら値上がりがしたとしても含み益のままでは課税されることはありません。

では、法人で所有する仮想通貨についてはどうなのでしょうか?

そこで今回は、法人で所有する仮想通貨について、期末時点で時価評価替を行うことで含み益や含み損を損益として計上する必要があるのかについて検討してみようと思います。

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会計上と税務上の期末時点での評価の違い

実は、会計の利益の考え方と税務の課税所得の考え方は同じ部分も多いのですが異なる点も多々あります。

金融資産などの期末時点の評価額についても、決算書上の利益と税務申告書上の課税所得では、金額が異なるのです。

仮想通貨の期末時点での評価額については会計上も税務上もまだどのようにするのかという明確な規定はありません。

ですが、会計上は、法人で所有する仮想通貨については、「活発な市場が存在する場合」には毎期期末時点での評価を、「活発な市場が存在しない場合」には取得価額を持って評価をすることが求められそうです。

1.期末における仮想通貨の評価に関する会計処理

仮想通貨交換業者及び仮想通貨利用者は、保有する仮想通貨(仮想通貨交換業者が預
託者から預かった仮想通貨を除く。以下同じ。)について、活発な市場が存在する場合、市場価格に基づく価額をもって当該仮想通貨の貸借対照表価額とし、帳簿価額との差額は当期の損益として処理する。

仮想通貨交換業者及び仮想通貨利用者は、保有する仮想通貨について、活発な市場が
存在しない場合、取得原価をもって貸借対照表価額とする。期末における処分見込価額(ゼロ又は備忘価額を含む。)が取得原価を下回る場合には、当該処分見込価額をもって貸借対照表価額とし、取得原価と当該処分見込価額との差額は当期の損失として処理する。

前期以前において、前項に基づいて仮想通貨の取得原価と処分見込価額との差額を損失として処理した場合、当該損失処理額について、当期に戻入れを行わない。

2.活発な市場の判断規準

第 5 項における活発な市場が存在する場合とは、仮想通貨交換業者又は仮想通貨利用者の保有する仮想通貨について、継続的に価格情報が提供される程度に仮想通貨取引所又は仮想通貨販売所において十分な数量及び頻度で取引が行われている場合をいうものとする。

実務対応報告公開草案第53号「資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取扱い(案)」の公表|ASBJ

税務上の外国通貨等の期末時点での評価

仮想通貨の法的な位置づけについては「支払手段」とされており、通貨でも有価証券でもないとされています。

しかし、国税庁が考える仮想通貨の課税のタイミングや計算方法をみると、どうも外国通貨などと同様に考えているのではないかと思われます。

そこで、法人で所有する外貨建て資産の期末時点での評価方法について見ていくことにします。

発生時換算法

法人が外貨建ての取引を行った時点での時価で評価をする方法

期末時換算法

期末時の時価で評価をする方法

外貨預金

短期外貨預金(満期日が決算日から1年以内)

法定換算方法は期末時換算法。届出により発生時換算法の選択も可能

長期外貨預金(満期日が決算日から1年超)

法定換算方法は発生時換算法。届出により期末時換算法の選択も可能

外国通貨

期末時換算法

つまり、外貨預金であれば、取得時の評価のままとすることも、期末時の時価で評価替えをすることも可能であるのに対し、外国通貨そのものの場合には、期末時の時価での評価替えが必須ということになります。

仮想通貨については期末時の評価替えは不要

では、仮想通貨はどちらなのか。

結論は、まだわかりません。

これは個人的な考えですが、期末時換算法を取るべき資産は、外国通貨や一定の有価証券などとされているのは、明記されたもののみが対象となる「限定列挙」であると考え、現時点では、期末時点での時価で評価替えが不要ではないかと。

税務通信のNo.3495号にも同様の記載がありました。

仮想通貨について、期末時に時価で評価替えをするということは要するに含み損益も課税対象にするということ。

国から見ると、仮想通貨の含み益ついて課税できる反面、含み損について本業の利益と通算されて税金が減ることにもなります。

それでは、仮想通貨の価格の乱高下の影響が税収にも影響を与えることになります。予算を司る財務省がわざわざそんなことを選択するのか疑問もあります。

ですから、少なくとも、現時点では、法人で仮想通貨の含み損について期末時換算法により本業の利益と通算するという処理が認められる可能性は低いのではないかと考えます。

含み損の実現には一度売却して再度購入をすればよいが

含み損の計上は認められなくとも、売買等により確定した損益については否応なく法人の課税所得計算に取り込まれます。

それであれば、含み損を抱えた仮想通貨についていずれ値上がりをすると考えるのであれば、期末までに一旦売却をした上で、再度取得をすれば良い。

と考えるのですが、ビットコイン以外のいわゆるアルトコインは、販売所の売買差額があまりに大きく取引額の10%程度になるものもあります。

含み損の実現のために、わざわざそこまでの手数料を支払う必要があるのか慎重に考える必要があるでしょう。

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