知らないでは済まされない有給休暇5日間取得義務化

働き方改革促進法が成立

長時間労働の是正、多様で柔軟な働き方の実現等、かねてから議論のあった「働き方改革」について法案が可決されました。

労務は私の専門領域ではないのですが、中小企業にも大きな影響がありそうな部分について、私の知識整理のためにまとめてみようと思います。

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働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律の概要

平成31年4月1日より施行される「働き方改革関連法」のうち主な改正点は次のとおりです。

時間外労働時間の上限規制

時間外労働の上限について、一部の業種を除き、原則、月45時間、年360時間になります。

臨時的な特別な事情がある場合でも年720時間、単月100時間未満(休日労働含む)、複数月平均80時間(休日労働含む)が限度になります。

高度プロフェッショナル制度創設

職務の範囲が明確で一定の年収(少なくとも1,000万円以上)を有する労働者が、高度の専門的知識を必要とする等の業務に従事する場合には、

・年間104日の休日を確実に取得させること等の健康確保措置を講じる

・本人の同意や委員会の決議等を要件として、

労働時間、休日、深夜の割増賃金等の規定を適用除外とします。

同一賃金同一労働

パートタイマー・アルバイトと言った非正規雇用者について、職務内容等が同一である場合、正規雇用者と均等の待遇を確保することが義務化されました。

有給休暇5日間取得の義務化

これらのようなメディアで話題になるような改正の影で、中小企業でもすぐに影響が出そうなのが「10日以上の有給休暇付与者に対する5日以上有給休暇取得義務化」でしょう。

有給休暇の付与日数

有給休暇は、正社員であってもパート・アルバイトであっても、次の要件を満たす限り有給休暇が付与されます

・雇入れの日から6ヶ月継続して勤務

・全労働日の8割以上出勤している

いわゆる正社員やフルタイムの契約社員については、初年度(半年勤務後)から10日間の有給休暇が付与されます。

なお、パートタイマーについては、週の所定労働日数により付与される有給休暇の日数は異なります。

結果的に、今回の「有給休暇5日間取得義務化」の対象となる10日以上の有給休暇付与者は

入社から半年経過した正社員とフルタイムの契約社員等

・入社から3年半経過した週4日勤務のパートタイマー等

・入社から5年半経過した週3日勤務のパートタイマー等

ということになります。

盆暮れの計画年休は有給休暇取得日数に含まれるが

では、この有給休暇の取得日数に会社が定めたお盆や年末年始休暇を当てることはできるのでしょうか?

原則として、従業員には、有給休暇をいつでも好きな時に取得をする「時季指定権」が認められています。

一方で、繁忙期等有給休暇を取得することで業務に支障をきたすと認められる場合、会社には「時期をずらしてくれない?」という「時季変更権」が認められています。

その上で、各人の有する年休のうち5日を超える部分については、労使協定に基づいて計画的に年休を与える仕組みである「計画年休」に従えば、時季指定権、時季変更権に拠ることなく有給休暇の日時を会社が定めることができます。

要するに、「計画年休」の仕組みよるお盆や年末年始の休暇については、有給休暇を取得した日数とすることができるということです。

かといって、既に就業規則で定められていたお盆や年末年始などの「所定休日」を勝手に有給休暇の取得日とすることはできません。

じゃあ、就業規則を変更し、今まで会社で一斉に休業としていたお盆や年末年始の所定休日を全てなくした上で「計画年休による有給取得日に当てる」となると、従業員側も反発するはずです。

労働者に不利益な労働条件変更をする場合は、不利益を受ける労働者とそれぞれ個別の同意が必要です。

もし、どうしても年末年始休暇等について、所定休日を減らし計画年休による有給取得日に当てるのであれば、きちんと、従業員に説明をし合意を得るようにしなくてはなりません。

半ば強引に納得させたり勝手に変更をしたとなれば、それこそこの時代、「ブラック企業」としてSNSで拡散されても致し方ないでしょう。

有給休暇取得率が思うように上がらないことに業を煮やした改正ではあり、従来からきちんと有給休暇を取得させていた会社には何ら影響のないことかもしれません。

仮に、有給休暇の取得率の低かった会社でも、これを機会に有給休暇取得が当たり前のものとして、その制約に対応できるよう労働生産性を上げよということでもあるかと。

しかし、特に労働集約型で人を配置した稼働時間単位で収益獲得をする人材派遣業や警備業などでは、生産性向上で時間短縮できる部分も少なく、有給休暇取得分は新たな人材で補充をする必要があり大幅なコストアップは避けられないでしょう。

この有給休暇取得義務は、満たせない場合には罰則もありますし、自社の評判を大きく落とすことにもなりかねません。

中小企業にとって、有給休暇取得義務化は、知らなかったでは済まされない思いのほか大きな企業経営上の課題となりそうです。

「うちには就業規則はないから関係ない」なんてことを言っていないで、まともに就業規則すら作っていなかった会社こそ、今から真剣に準備をしておく必要があるのではないでしょうか。

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