個人型確定拠出年金のどこがすごいのか?

国は年金を個人でなんとかしてほしい?

確定拠出年金とは、個人が掛け金を積み立て自分の意思で運用をする年金のこと。

拠出額は確定しているが、運用成績次第ではその年金給付額が変わるわけです。

実は、この確定拠出年金はかなり節税効果があるものの、導入されて15年以上が経っても、イマイチ浸透していません。

「個人型確定拠出年金」の適用対象者が、現役世代ほぼ全員に拡大されると平成27年税制改正大綱で記されたのに、未だにその詳細や実施時期は審議中です。

今回は、この個人型確定拠出年金のメリット・デメリットについてまとめてみることにします。

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現状の加入対象者は企業年金のない会社員や自営業者

確定拠出型年金には、個人が掛け金を支払う「個人型」と企業が掛け金を支払う「企業型」があります。

個人型確定拠出年金は、自営業者や企業年金がない会社員が対象となっています。

この制度が現状の対象者には全く普及しないこともあり、今後は企業年金のある会社員や公務員、専業主婦にまで広げられ、実質的に現役世代であればほぼ全員が、この個人型確定拠出年金に加入できるようになる模様です。

個人型確定拠出年金のメリット

(1)掛け金全額が所得控除の対象に

確定拠出年金の対象は、投資信託などのリスク商品だけでなく、保険や預金なども含まれます。

これらの掛け金として拠出した金額は、一定金額まで全額所得控除の対象になります。

定期預金をしておきながら、その金額が全額所得控除されると言うのは、税法の常識から考えるとなんともすごいことです。

<年間の個人型確定拠出年金上限金額>

・自営業者:81.6万円

・企業年金のない会社員:27.6万円(+24万円の予定)

・企業年金のある会社員と公務員:(14.4万円の予定)

・専業主婦:(27.6万円の予定)

*企業型確定拠出年金加入者は総額での調整あり

*( )は新設の予定額

(2)運用期間中は非課税

運用時点で利益が出た場合、通常は課税がされその税引き後の金額が再投資されることになります。

しかし、この確定拠出年金は、運用時点での税金は非課税。運用益全額を再投資に回すことができるので投資効率上は非常に有利になります。

預金で安全確実に運用するのも良いですが、非課税の恩恵をより多く受けたいのであれば、多少のリスクを取ってでも投資信託などで運用したいところでしょう。

掛け金全額が所得控除されたこと等による節税効果を得ている時点で、単純に投資信託を購入した時よりは、”勝敗のハードル”は下がっているはずです。

なお、投資についての税制優遇措置としてNISAというものがありますが、こちらは運用益非課税の枠は一度きりしか利用できないのですから、確定拠出年金のほうがずっと税制上のメリットは大きいことになります。

(3)受け取り時のお金は公的年金ないし退職所得扱い

いくら拠出時に全額所得控除されても、運用期間中は非課税であっても、受け取り時に多額の税金が取られてはなんにもなりません。

上記の(1)(2)のメリットは単なる税負担を将来に先送りする「繰延べ」にすぎません。

本当の意味で節税効果を得るには、受取時の課税関係が最も重要です。

確定拠出年金の場合、年金形式で受け取る場合には、公的年金として公的年金控除がされ、一時金でもらう場合には、退職所得として税負担が大幅に軽減されるのです。

・退職所得=(退職金額ー退職所得控除)☓1/2が分離課税

*ただし、退職金の支給が別途ある場合、確定拠出年金と退職金を併せて退職所得控除を利用

この退職金として受給できることではじめて、個人型確定拠出年金に本当の意味での節税効果が生まれるのです。

個人型確定拠出年金のデメリット

税制上のメリットの多い確定拠出年金ですが、デメリットもあります。

ひとつは、60歳まで引き出しができないということです。

長期間、お金の流動性を失うのに、預金など低利の商品で運用では、現在価値に割り引いて考えるとあまり得な資金運用には思えません。

しかし、老後資金の準備という目的から考えると、事業でのお金の使いみちのない会社員や公務員にとってみれば、これは決してデメリットとは言い切れないとは思います。

もう一つは、運営管理手数料が掛かるということです。これは各金融機関により金額が異なります。

そのため、掛け金額が小さく、加入期間も短いと”手数料倒れ”になることもあり、それがデメリットといえそうです。

オーナー経営者や自営業ならまずは小規模企業共済から

自営業者などには、退職金の準備として、小規模企業共済というものも用意されています。

こちらも、掛け金は全額所得控除の対象でその上限金額は年間84万円(月額7万円)。

受け取り時も退職所得となり、その税負担は大幅に軽減されています。

小規模企業共済には、確定拠出年金にない中途解約の制度があります。

加入して20年未満での解約は掛け金ベースで元本割れとなりますが、どうしても資金が必要ならば、やむを得ません。

また、解約返戻金を担保代わりにして融資を受けることも可能なので、オーナー経営者や個人事業主にとっては、資金繰りに困ったときの”命綱”にもなるわけです。

老後のための退職金として積み立てたものが、簡単に引き出しできてしまってはその目的を達せられないかもしれませんが、そのお金がなくて事業が破綻してしまうなら老後の資金がどうのこうのといっていられません。

小規模企業共済が現在予定している利回りはものすごく低いですが、いつお金が必要になるかわからないオーナー経営者や個人事業主は、できるだけ流動性を確保できるお金の残し方を優先すべきと思います。

なので、これらの人は、個人型確定拠出年金には小規模企業共済に満額加入してもさらに余裕がある場合に加入すれば良いでしょう。

いずれにせよ、これだけ税制上の優遇されている個人型確定拠出年金ですが、全くといっていいほど利用が進んでいません。

国の年金制度だけでは不安で、節税しながら多少はリスクをとっても”じぶん年金”を作りたい方は、導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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