関係会社間の業務委託費について税務調査で否認されないためにやっておきたい事前準備

関係会社間取引は税務調査でよく見られる

同じオーナーが所有する会社間や親子会社間など関係会社間の取引は、所得の平準化による節税効果などを狙った利益操作に用いられやすいので、税務調査ではかなり厳しく見られます。

業務委託費について「経営指導料として月額100万円」なんていう大雑把なものでは、その支出を否認され、時には両社で課税されるという”往復ビンタ”になることもあるのです。

そこで今回は、そうならないようには、事前に何をしておけばよいのかという話しをしてみます。

委託した内容と報酬額を契約書で明示する

経営指導料として月額◯◯円というような具体的に何を委託したのかがよくわからないものや報酬額の計算根拠が不明な支出について税務署もそれを認めるようなわけにはいきません。

最低限、支払う報酬額がどんな業務をそれぞれいくらで委託したものであるのかを契約書等で明示する必要があります。

金額の算定根拠を明示する

もちろん、契約書でその金額を明示したとしてもその報酬額に妥当性がなければ、やっぱりダメなわけです。

では、具体的に報酬額はどのように決めればよいのでしょうか?

有力な根拠の一つは「第三者に依頼した場合にいくら掛かるのか」というものだと思います。

ですから、まずは、「経営指導料」というザックリとしたものではなく、依頼する業務を具体的に細かく区分けし、それぞれの業務について第三者に依頼した場合に支払うであろう金額を積み上げた契約書を作成する必要があるのです。

業務を履行した実態を明らかにする

契約書さえ作れば、それでOKというわけではありません。

受託者側がその契約書に定めた業務をきちんと履行したことを証明しなくてはなりません。

その業務を自社で行ったのであればその業務日報のような記録や、他社に再委託したのであれば、その契約書や支出の事実がなければならないわけです。

全くその業務を履行する人材もいないし、他社に依頼した事実もなく、単に契約書や請求書を作成し支出をしただけでは、否認されても致し方ないでしょう。

想定問答集を作っておく

本来自社内で行えばよい業務をあえて関係会社に委託するには相応の理由が必要です。

税務調査でもそのような質問をされますので、その時にしどろもどろにならないよう、事前に想定問答集を作っておきましょう。

具体的には、

(1)何を依頼しているのか?

(2)報酬額算定の根拠は?

(3)なぜ、報酬額が月額固定なのか?

(4)なぜ、わざわざ別の会社を設立したのか?

(5)なぜ、受託会社の得意先は当社しかないのか?

(6)なぜ、両者ともオーナーが同じなのか?

などというものがそれぞれの状況に応じて質問されるはずです。

ここでどれだけ説得力のある説明ができるかが税理士の力量だともいえます。

何も指摘のされない申告をすることは誰にでもできますが、節税による効果を得るには指摘されるぐらい”踏み込んだ”上でその指摘を”押し戻す”のはそれなりの知恵と胆力が必要なのです。

いずれにせよ、関係会社間取引については、ドラマのように「スカッと税務署を黙らせた」というような完全勝利ができればよいですが、そうでなくとも税務署が「なんだか利益操作の匂いはするが、ああ言えばこう言うので、更正を打つのは手間がかかって面倒だからもういい」となんとか負けずに守り切れるよう、事前に可能な限りの準備をしておきましょう。

決算期に利益の上がっている会社から別の関係会社に「請求書を作ってお金さえ実際に払えばそれでOK」というわけじゃないんですよ。そんな事したら仮装隠蔽による重加算税の対象にされるのでご用心を。

*グループ法人税制の話はややこしいのでまた別の機会にいたします。

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