「会社で買ったフェラーリを社長個人に売って節税を」とかいう話

本当なのか?都市伝説なのか?

「ベンツは4ドアなら損金になるが2ドアなら損金にならない」などという本がベストセラーになりましたが、ベンツが2ドアを理由に税務上否認されるということはまずないでしょう。

よく聞く話に「会社でフェラーリを買って節税を」というものもあります。

「どうでしょう?」と言われれば、まあ「自己責任でお好きにどうぞ」ということなのですが、実際の税務上のリスクはどれくらいあるのかを考えてみます。

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減価償却に節税効果なんてない

フェラーリのような高級車を会社で買うことが、なぜ節税になるかというと

・車の購入対価についてはその利用可能期間に減価償却費として費用を按分する

・特に4年落ち以上の中古車であれば、期首に購入すると購入対価全額が即減価償却費になる

・その減価償却費により法人の利益を圧縮、税金の支払額も減少する

・一方で、フェラーリは価値の下落幅が小さいので売ればお金がかえって来る

ということのようです。

結論から言うと、このプランでは「節税にはなりません」

確かに、多額の減価償却費が計上されれば、その期の所得は減り、税金の支払額は軽減されるでしょう。

一方、減価償却がされてしまえば、その分取得費は小さくなっています。

換金した時の利益は、譲渡対価ー取得費で計算されますが、もし、それまでに購入対価全額の減価償却がされていたとするならば、譲渡時の利益は譲渡対価のすべてということになるのです。

当然、そこでガッツリと税金は課税されます。

つまり、このフェラーリを購入することで、購入時の税金は減った分、譲渡時の税金はまるまる増えるのでトータルの税負担は同じで節税にはなりません。

単に税金を支払う時期を将来に申し送りしただけのことです。

(購入時と譲渡時の課税所得に対する税率は同じものだとします)

そもそも、「減価償却費は支出もないのに損金になる」というのは大きな間違いです。

減価償却費というのは購入対価を按分しただけなので減価償却費の合計=購入対価です。

減価償却費が購入対価という支出を上回って損金になる余地などないのです。

「支出もないのに損金になる」というのは、あくまでも減価償却をした時点の話であり、それ以前に購入対価分の支出をしていることを忘れてしまっているのでしょう。

「単に税負担の繰延であっても、今期は利益が出たけど翌期以降利益が出るかはわからないので、今期の税金の支払いを減らして手許の資金を残しておきたい」などという人もいますが、当面の税金の支払額の減少額以上の購入対価の支払いをしているので確実に手許のお金は少なくなります。

それも、本当に「将来利益が出るか不安だ」というのであれば、「フェラーリを買い将来転売して儲ける」なんていう脳天気なプランに不安を感じないのが不思議で仕方がありません。

そもそも転売で利益が出ることは稀で、値落ち幅は小さいにしても購入時よりも譲渡時のほうが安くなることがほとんど。

その”フェラーリ投資”によって損をした分、税金が安くなるというのは当たり前のことであり、これがお望みの「節税」なのかといわれればそうではないはずです。

「好きなフェラーリに会社の金で乗れた」というならそれはそれでいいですが。

フェラーリの減価償却は損金になるのか?

フェラーリのような嗜好性の高い車を会社が購入した場合、それが本当に事業に必要な経費と認められるのかという疑問もあります。

「フェラーリであっても、会社に必要な資産と認められる」という裁決例(H07.10.12行為計算否認/スポーツカーとモーターボートの事業供用(一部取消し))もあり、これが「フェラーリで節税」の根拠になっているようです。

しかし、判例はあくまでも個別の「事実認定」の結果であり、「フェラーリ=事業に必要な経費」とされたわけではありません。

この時の判例では、実際に相応の走行実績があったことに加えて「個人でも車は別に所有していて、プライベートではその車を使用していてた」という事実が、そのフェラーリが会社で使用されるための資産であるという有力な判断基準とされました。

ですから、なんでもかんでもフェラーリを購入しても会社の損金となるわけではなく、利用状況次第ではその損金性を否認される可能性もあります。

特に複数台所有するとなると「相応の理由」が必要でしょう。むしろ、「複数台並べることに意味がある」と。

「一体誰が見に来るのだ」と思うような地方の”フェラーリミュージアム”には、ひょっとしたらそんな事情があるのかもしれません。

簿価で個人に譲渡をしても問題ない?

さらに、一旦会社で購入したフェラーリを帳簿価額で社長に売却をする。そのフェラーリを個人で売却すると利益が出るが自家用車を譲渡しても「生活に通常必要な動産の譲渡」なので非課税になるということまで考えているようです。

会社から社長に所有資産を譲渡する場合には、時価により譲渡をすることになります。

では、この時価はどのように計算するのでしょう?

いろいろな計算方法はあるとは思いますが、その一つに「再調達原価」という考え方があります。

これは、「今同じ資産を購入してくるのにいくらお金がかかるのか」ということ。

中古車であれば、新車での購入価額から経過年数に応じた減価償却分を控除した金額ということになります。

ということは、会社での帳簿価額(簿価)に近いのではないかと。

事実、車両や備品などについては、会社から社長に譲渡する場合には、簿価で譲渡するというのが一般的です。

それであれば、会社が保有するフェラーリも簿価で社長に売っても良いのではないかと。

しかし、これはまずいでしょう。

再調達原価が時価の一つの根拠ではあるとは思いますが、フェラーリは取引事例も多く、仮になくても専門業者に見積もりを取ることも可能です。

フェラーリに関しては、その取引事例や見積もり価額と再調達原価では、取引事例等のほうが時価の根拠としては有力です。

両者に大きな違いがあれば、簿価での譲渡では、時価よりも低すぎるとして否認される可能性は高いでしょう。

もし、時価よりも著しく低い金額で譲渡されたとするならば、会社は時価で譲渡したものとされる上に、その分個人は得をすることになるので、その差額については、社長に対する賞与となります。

結果として、法人税も所得税もとられる”往復ビンタ”となり、この節税対策をやらなかった時よりも税負担が増加することにもなるのです。

仮に、簿価での譲渡が問題ないとされたとして、フェラーリが「生活に通常必要な動産」となるかも疑問はあります。

「生活に通常必要な動産」ではないとなれば、そのフェラーリの譲渡益は動産の譲渡所得として他の所得と合算の上「総合課税」がされるので、個人で税金が課税されてしまいます。

個人で複数の車を所有していたとなると「生活に通常必要な動産」とするのはまず無理。

かといって、なんとか強引に通勤用の唯一の車だと認められるよう、他の車を売却してフェラーリだけで日常生活を送るというのもどうなんでしょうか。

一説には「乗るたびにプロが整備をしないといけない」と言われるほど繊細な車で、実際著名芸能人が「3回乗ってエンジンが焼き付いた」などという話をあるようです。

コンビニにアイスを買いに行くたびに整備に回すというのは、節税のためにするにはどうなのかと。

節税額より整備費用のほうが高くなるのではないでしょうかね。

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