外貨預金はやってはいけないー外貨預金・FX・外貨MMFの税金の比較

平成28年度からの金融一体課税

以前は、金融商品ごとに課税の仕組みが異なっていたものが、平成28年度の改正によりグループ化され課税の方式がかなり整理されています。

それをみていくと、どうも外貨預金というのは全く選ぶ意味がないというか、他の金融商品よりも税制上ずっと不利なものなのではないかと。

そこで、今回は、外貨預金と他の「為替商品」の課税上の違いをまとめてみることとします。

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外貨預金の課税方式

外貨預金をすると一般的に円預金よりも高い利率の利息を得ることができますが、為替変動による損益が生じます。

この外貨預金による利息は20.315%の利子所得として源泉分離課税がされますが、為替差益については、個人の場合、雑所得として総合課税がされます。

つまり、外貨預金の為替差益は、他の所得が多い方であれば、累進課税により最高で55.945%もの税金が掛かることになるのです。

一方で、為替損失を被った場合には、その損失は他の株式などの利益とは通算(相殺)することはできず、雑所得以外の給与等他の所得との通算もできません。

給与収入が1箇所からのみで年末調整がされている人などであれば、「20万円以下の給与所得・退職所得以外の所得」について確定申告をしなくても良いことになっていますが、そうでない場合には、「儲かったら他の所得と合算され総合課税、損をしてもその損失は足切り」というなんとも不利な課税を強いられることになります。

ですから、多額の所得のある方にとって「雑所得としての総合課税」は、絶対避けたいものなのです。

給与所得者で確定申告が必要な方(タックスアンサー)

<外貨預金の課税>

・利子は20.315%の源泉分離課税

・為替差益は、雑所得として総合課税(最大55.945%)で源泉徴収なし

・為替差益は、20万円までなら申告不要の余地あり

・為替差損は、他の株式や給与所得等の通算は不可

・為替差損は、繰越控除は不可

FX(外国為替証拠金取引)の課税方式

外貨預金と同様に為替損益を狙うFX(外国為替証拠金取引)については、個人の場合、雑所得ですが、こちらは申告分離課税となります。

こちらも給与収入が1箇所からのみで年末調整がされている人などであれば、20万円以下の給与所得・退職所得以外の所得について確定申告をしなくても良いことになっています。

一方、FXで生じた損失については、「他の先物取引に係る雑所得等」と通算はできます。しかし、他の給与所得などとの通算はできません。

また、FXで生じた損失が「他の先物取引に係る雑所得等」と相殺しきれない金額については、翌年以後3年内の各年分の「先物取引に係る雑所得等」の金額と相殺することができます。

<FXの課税>

・儲かったときは、雑所得の申告分離課税(20.315%)で源泉徴収なし

・儲かったとしても、20万円までなら申告不要の余地あり

・損をしたときは、他の先物取引に係る雑所得等のみ通算可

・通算しきれないときは、翌年以降3年間の繰越控除可

外貨MMFの課税方式

外貨MMFの収益分配金は、平成27年までは源泉分離課税でしたが、平成28年以降、20.315%の源泉徴収がされるものの申告分離課税になりました。

一方、平成27年までは債券や外貨MMFや債券の売却益等については非課税でしたが、平成28年度から債券や外貨MMFの売却益等(為替差益を含む)については「株式等の譲渡所得」として原則源泉徴収なしの申告分離課税となりました。

これらは特定口座(源泉徴収ありならば申告不要も)での管理が可能であり、要するに外貨MMFは、債券などと同様「株式グループ」に仲間入りして一体で課税がされるようになったのです。

株式グループに仲間入りしたので、外貨MMFの収益分配金・売却損益等は、上場株式等の譲渡損益や配当等との通算が可能となりました。

改正により、外貨MMFは儲かった時の税制上の優位性はなくなったものの、損をした時は、むしろ有利になったといえるでしょう。

<外貨MMFの課税>

・収益分配金は、利子所得として申告分離課税で源泉徴収(20.315%)

・売却益等は、株式譲渡所得として申告分離課税(20.315%)

・売却益等は、20万円までなら申告不要の余地あり

・売却損益は、収益分配金、他の上場株式譲渡損益、上場株式配当等と通算可

・特定口座内での管理が可能で、源泉徴収ありを選択すれば確定申告不要に

・通算しきれない売却損については、翌年以降3年間の繰越控除可

証券税制早わかり 債券の税金(みずほ証券)

外貨預金を選択する理由が見当たらない

「これで整理されたのか!」と思われるかもしれませんが、平成27年以前はもっと複雑でした。

さて、三者の課税方式の違いを見ると「儲かったら総合課税で、損をしたら足切り」という外貨預金をあえて選択するメリットが見当たりません。

その上、為替手数料については、FX、外貨MMF、外貨預金の順に高くなることが多いでしょう。

確かに、外貨預金は元本保証であるのに、外貨MMFは元本保証ではありませんが、運用先が1年未満の米国国債などであり元本割れのリスクはほとんどありません。

また、外貨預金は預金保護の対象でもありませんし、一度に運用先が破綻する可能性の少ない外貨MMFのほうが破綻リスクは小さいはず。FXも信託保全がされているので事業者の破綻リスクはさほど変わらないでしょう。

ということで、元本保証の効果や破綻リスクはまともな業者と取引すればそれほど差はないともいえます。

それであれば、外貨預金についても将来課税方式が変わる可能性もありますが、現時点ではメリットが見当たらないので、個人投資家は、もう外貨預金はサッサと解約して他の金融商品にシフトしたほうが良いのではないでしょうか。

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