家屋の賃貸借に伴う礼金、敷金償却の収益・費用計上時期

敷金償却、礼金という家賃以外の取引

家屋の賃貸借契約をすると、毎月の家賃以外に、敷金や礼金が発生することが一般的です。

礼金は返金されないものの、本来敷金は退去時に全額(退去時の原状回復費用は控除される)が返金されるのが原則。

しかし、敷金についても、退去時に一定金額の償却がされた上で返還されることもあります。

では、それらの返金されない金額について、賃貸人と賃借人はそれぞれいつの時点で、収益・費用とすべきなのでしょうか?

そこで、今回は、不動産賃貸借取引について生じる敷金、礼金等の収益・費用計上時期についてまとめることにします。

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受け取った側の収益計上時期

(1)礼金

家屋又は土地を賃貸することにより一時に受け取る権利金や礼金は、貸し付ける資産の引渡しを必要とするものは引渡しのあった日、引渡しを必要としないものについては、契約の効力発生の日の収入に計上します。

名義書換料、承諾料、頭金などの名目で受け取るものについても同様です。

(2)敷金償却

敷金や保証金は本来は預り金ですから、受け取っても収入にはなりません。

しかし、契約書上、返還をしないと明記された金額(敷金償却)については、返還を要しないことが確定した日にその金額を収入に計上する必要があります。

例えば、契約書で、「退去時には、敷金の30%を償却した金額を返還する」と記載されているのであれば、その賃貸契約締結時に敷金の30%分の返還を要しないことが確定したことになるので、その物件の引き渡し日または契約の効力発生日で収益計上をすべきということになるのです。

では、退去までの期間で敷金償却の割合が異なる場合はどうでしょう?

例えば、退去が契約から1年未満は10%、3年未満は25%、3年以上は45%とされていたとします。

この場合には、当初からいつ退去をするにしても10%の敷金償却は確定していることになります。

なので、引き渡し日または契約の効力発生日で敷金の10%相当額の収益を計上すべきということになります。

そして、1年経過をすると、15%(25%-10%)の敷金償却が上乗せされることが確定するため、その時点で敷金の15%相当額の収益を計上します。

さらに、3年経過をすると、20%(45%-25%)の敷金償却が上乗せされることが確定するため、その時点で敷金20%相当額の収益を計上します。

つまり、賃貸期間の経過に従い敷金償却が増額されていく場合、契約により返還しないと定められた日に新たに返還しないことが確定した金額だけ順次収益に計上するということです。

支払った側の費用計上時期

(1)礼金

礼金を支払う場合、その支出時に費用となるように思われます。

しかし、礼金の支払いは、その支出の効果が1年以上に渡ると考えられるので、支出時に全額損金算入はされず、税法上の繰延資産となります。

一旦、繰延資産(礼金、または長期前払費用など)として資産に計上された上で、その支出の効果が及ぶと考えられる期間で、それぞれ月割り按分された金額が損金に算入されます。

家屋の賃借に伴い支払われる礼金(権利金)の償却期間は原則として5年です。

ただし、契約書上、賃借期間が5年未満で、「契約の更新時に別途礼金の支払いをする」旨の記載があれば、償却期間をその賃借期間とすることができます。

なお、礼金の金額が20万円未満であれば、少額であるため、支出時に全額損金算入が可能です。

(2)敷金償却

敷金の償却=返還不要部分についての経理処理は、礼金と同様に考えます。

なお、時の経過に応じて敷金償却の割合が異なる場合、契約により返還しないと定められた日に新たに返還されないことが確定した金額だけ、新たに礼金を支払ったものと同様と考え、それぞれ月割りでの償却をしていくということでしょう。

消費税は賃料と同様、用途で判断

消費税については、その家屋の用途に従います。

居住用物件については、礼金、敷金償却も、消費税は非課税。事業用物件については、礼金、敷金償却も消費税は課税対象となります。

消費税増税前後の賃貸契約についての消費税まとめ|賃貸契約の更新料の消費税の税率はどっち?

なお、支払う側は、損金に算入されるときではなく、礼金支出時、敷金償却発生時に全額が消費税の控除の時期となります。減価償却と同じですね。

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