社長の経費精算は現金勘定よりも短期借入金で処理したほうがいいワケ
社長の経費は財布の中の領収証の塊
従業員の経費精算については、領収証と引き換えに現金ないし給与と一緒に振り込むなどきちんと精算がされます。
しかし、社長の経費精算となると中小企業の場合には、何もされておらず、ただただ未精算の領収証が財布の中に溜まっていき、気が向いたときに経理にその領収証をガサッと渡すということが多いのではないかと。
その際に、現金勘定で処理をしていたことが多いかと思いますが、実際には、現金など管理していないので残高が合わない意味のないものになっているはずです。
では、どうしたらいいのか。そこで今回は、社長の経理精算についての合理的な処理方法について考えてみます。
できるだけクレジットカード決済を利用する
まず、社長であれ従業員であれば、経費精算の手間を大幅に省くために有効なのは、できるだけクレジットカードで決済をするということです。
クレジットカードで決済をしたものは、そのクレジットカード会社のサイトで電子データとして保存がされ、それをCSV形式でダウンロードしたり、会計ソフトで自動的に仕訳生成までできるものも多いです。
ですから、まずは、法人契約のカードを経費精算用に各人に手渡し、可能な限り経費精算はその法人カードによって行ってもらう。
そうすることでその決済は法人の預金通帳から引き落としとなるので、わざわざ各人に経費精算のお金を支払うという手間がなくなります。
もし、法人カードが作成する枚数に制約があるのであれば、個人名義で経費精算専用のカードを作ってもらっても良いです。
こちらも、会計ソフトでそのクレジットカード利用のデータを取り込み自動で仕訳生成も可能になる。
ただ、そのお金は個人の預金口座からの引き落としとなるので、その分については、別途給与の支払い時などに一緒に個人に振り込みをすることで精算が必要になるでしょう。
クレジットカード支払いができない経費は
しかし、世の中には未だにクレジットカードでの取引ができないなものもあります。
そのような場合には、従来どおりまずは社長に一旦経費を立て替えてもらう。
その上で、まずは、freeeやマネーフォワードなどのクラウド経費精算システムを利用して、自動仕訳生成をするという方法を検討します。
それを利用しないのであれば、そのまま領収証を提示し、現金や振り込みにて精算をするという順番になるでしょう。
なお、2020年10月以降、ユーザー側で決済データの改ざんのできないクラウドサービスを用いた経費精算については、領収証の保存が不要になります。
詳細はまだわかりませんが、クレジットカード会社やキャッシュレス決済会社のオンラインデータからクラウド会計で自動仕訳生成したものや現金支払いの領収証等のデータについてはクラウド経費精算システムで処理がされたものについては、紙ベースの領収証の保存が要らなくなるのではないかと。
これが、クラウドでの経費精算システム利用の大きなメリットのひとつになるはずです。
このおかげで、中小企業だと、クレジットカード決済をした飲食代などの領収証は社長が破棄しちゃっていることも多く、税務調査でなにも指摘事項がないと「領収証が保存されていないので消費税の仕入税額控除の要件を満たさない」などと税務署員が言ってくることもあり、「ハア?経理処理の不備で否認するというは税理士に直接ケンカを売るということだぞ。だったら、後は自分でやれや」などとという頭のおかしな税理士との揉め事も少なくなるんでしょうね。
後日個人に支払いをする経費は短期借入金で
では、個人に対して後日精算の必要な経費については、どんな経理処理を行うのか?
個人名義で決済がされた費用や個人が現金で支払った経費については、いずれその個人に支払いをする必要があります。
つまり、会社から見れば一時的にお金を個人から借りているのと同じです。
ですから、「消耗品費/短期借入金」などとして記帳をしたり、自動仕訳生成ができるようにしておくとよいでしょう。
しかし、中には、これを「消耗品費/現金」として処理をしているケースも多いのではないかと。
ただ、実際には、現金残高などきちんと管理していないので、この記帳をすると現金残高はどんどんマイナスになっていく。
それではおかしいので、そのマイナスがなくなるように「現金/短期借入金」という仕訳を入れているのではないでしょうか。
実際に、税務署でも古いタイプの調査官はこのような処理を求めてきます。
私は、独立当初から「キャッシュレス会計推進派」であり「会社に現金は置くな。現金の帳簿もつけるな」というアドバイスをしていたので、よく税務調査で揉めましたね。なぜ、現金勘定を通さないのだと。
しかし、こんなことは無意味でしょう。現金なんて管理していないんだし。
税務署も最近はその点は理解をしているようで、現金勘定での処理をしていないことをもって経理処理がおかしいなどと言うことは少なくなってきました。
それであれば、経費発生の段階から「経費/短期借入金」としたほうが手間は省けます。
もっというと、実は、社長の経費精算については、あえて現金勘定を使わず、短期借入金で処理をしていたほうが良いことがあります。
それは、税務調査で、個人的な経費と認定をされたときです。
その経費については、法人での損金算入が否認される上、社長に対する経済的利益(賞与)であるとして、個人に対して所得税の課税を求められます。まさに、法人税と所得税の”往復ビンタ”です。
これに対して税理士サイドは、「では、そのお金は会社に返す」という反論をします。そうすることで、法人での損金不算入は致し方ないにしても、個人に対する給与課税を回避しようとするのです。
このお金は、会社から見れば、個人に対して返済を求めることのできる「短期貸付金」となります。
これが、現金や預金などの資産で精算がされたものについては、同一の者に対して仮に「短期借入金」があったとしても、「短期貸付金」として、認定利息計上を求めてきます。また、その金銭消費貸借契約書を作成し、印紙を貼れということまで言ってきます。
しかし、そもそも短期借入金により決済をしたものは、その取り消しをするにすぎないので、あえて認定利息の計上も求めないという区分けを税務署もしているようです。
(見解の相違か仮装隠蔽かなど申告内容やまとめの交渉内容により異なります)
ですから、わざわざ、現金勘定など通さず、直接短期借入金として経費計上をしている方が普段の経理処理だけでなく、税務調査でも無駄な認定利息課税やその計上の手間もかからないということなんですね。
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