新型コロナウイルスによる赤字にどこまで耐えられるのかを知っておこう
目次
コロナ禍で赤字転落の企業も多数
新型コロナウイルスが収束する時期はよくわからず、仮にウイルスが収束はしても、何らかの行動規制は残るはずですし、消費も設備投資も減退しているために、すぐに経済活動が元のように戻るとは思えません。
業種による違いはあるのものの多くの事業者にとっては、減収ないし赤字も見込まなくてはならないのではないかと。
そこで、今回は、業績低迷時にどれだけの赤字が見込まれ、どれだけそれに耐えうるのかを事前に予測しておく方法について考えてみようと思います。
赤字はやむを得ないが債務超過は避けたい
今後の経済状況について「リーマンショック超え」「世界恐慌以来」などという悲観的なキーワードで語られる中、一期、二期の赤字は避けられない会社も多いかと思います。
では、単年度での赤字はやむを得ないとしても、事業開始からのトータルで損をするまでにいくら余力があるのか。
それは、貸借対照表の純資産の部にある「繰越利益剰余金」の金額を見ればわかります。
この「繰越利益剰余金」というのは、単年度の利益から税金を支払ったものを積み上げていったものであり、事業という「ギャンブル」を始めて、トータルでいくらプラスになっているのかというのを表しています。
世の中で一般に「内部留保」と言われるものは、この「繰越利益剰余金」のことであり、決して、この金額だけ会社の金庫にお金が残っているわけではありません。
いずれにせよ、今まで繰越利益剰余金が5,000万円あったものの、今回のコロナウイルスの影響で単年度の赤字が1,000万円出てしまったとしても、まだ繰越利益剰余金は4,000万円(5,000万円ー1,000万円)残るということです。
ですから、この繰越利益剰余金の残高までの赤字であれば「事業が振り出しに戻ってしまった。また、一から頑張るか」と諦めもつくということでしょう。
この繰越利益剰余金に資本金を加えたものが「純資産」であり、要するに「純資産」というのは、元金に”ギャンブル”のトータルの損益を加えたものということです。
例えば、元金1,000万円で始めたポーカーで、累計3,000万円勝ったので、いまは4,000万円に増えたということでしょう。
では、この純資産が0になるということはどういうことか?
それは、ギャンブルで元金までを溶かしてしまったということです。
先程の例で言えば4,000万円まで一時は増やしたお金が、負けが込んでとうとう0円になったということです。
ただ、会社もギャンブル同様に借金をすることもできます。
自分の元金だけでなく、借金した金もギャンブルに突っ込んでみたものの負けが続くと純資産はマイナスとなります。
例えば、元金1,000万円だけでなく借金2,000万円の合わせて3,000万円突っ込んでみたものの、これまでの赤字の蓄積が1,500万円になっているような状態です。
このときの純資産は▲500万円(1,000万円ー1,500万円)です。
このように純資産がマイナスとなることを「債務超過」といいます。
これは、今会社をやめて手持ちの資産をすべて換金したとしても、借金を返しきれないという状態であり、金融機関は新たな融資を原則としてしません。
仮に融資をするとしても、融資の難易度は「二段階」くらいハードルが上がると言って良いでしょう。
ですから、多くの会社は、単年度の赤字を出すにしてもこの債務超過にだけはなりたくないと考えています。
逆に言えば、純資産の金額というのが、債務超過に転落にすることなくギリギリ受け止めることができる赤字の上限額とも言えるわけです。
赤字にならないために最低限必要な売上高
では、赤字にならないために、どれだけの売上高が最低限必要になるのでしょうか?
この「利益が0になる時の売上高」のことを「損益分岐点売上高」といいます。
つまり、この損益分岐点以上の売上高があれば黒字になり、損益分岐点以下の売上高しかなければ赤字になるわけです。
損益分岐点売上高を知るためには、まずは、経費を「固定費」と「変動費」に分ける必要があります。
変動費とは、売上高に連動して発生する経費であり、固定費とは、売上高に関わりなく発生する経費です。
両者の区分には、勘定科目区分法や最小二乗法などというものがありますが、物販やサービス業でザックリと知るだけであれば、変動費は売上原価、それ以外は全部固定費という理解でひとまずOKです。
さて、売上高から変動費を差し引いたものを「限界利益」といいます。変動費≒売上原価ということであれば、ほぼ粗利益ということでしょう。
この限界利益を売上高で割ったものが「限界利益率」というもので、ぼほ粗利益率と考えて良いでしょう。
では、売上高が0の状態を思い描いてください。実際に、コロナの影響で営業自粛というのは、この状態です。
その時の赤字はいくらかというと、売上高は0、それに連動する変動費も0です。しかし、固定費だけは売上高が0であっても生じます。
つまり、固定費というのは、売上高が0のときの赤字額なのです。
固定費が大きい会社ほど、営業自粛のダメージが大きいのはそういうことなのです。
一方で、売上高が上がるたびに変動費も増えるため、その差し引きである限界利益分だけ利益が増えます。
そして、この限界利益と固定費の額が一致したときに利益が0になる。その時の売上高が損益分岐点売上高ということです。
つまり、損益分岐点売上高とは
限界利益=固定費
限界利益=売上高×限界利益率
固定費=売上高×限界利益率
となることから、左右を移行すると
売上高=固定費/限界利益率
という算式で、損益分岐点売上高が求められるということです。
ですから、赤字にならないために最低限必要な売上高は、固定費(販売管理費+支払利息)を粗利益率で割れば大体の金額はわかるということなのです。
例えば、年間の固定費が2,400万円の会社で、粗利益率が20%であれば、年間の損益分岐点売上高は1億2,000万円(2,400万円÷20%)となります。
大体月に1,000万円は売上高がないと赤字になってしまうということです。
予想される売上高ではどれくらいの赤字になるかを想像する
では、とても損益分岐点までの売上高が上がらず赤字を覚悟しなければならない場合に、どれくらいの赤字を覚悟しなくてはならないのか。
これは、単純に予想される売上高から予想の粗利益額を計算し、固定費を差し引けば計算できます。
上記の例で、もし年間の売上高がどうがんばっても8,000万円にしかいかないというのであれば、
8,000万円×20%ー2,400万円=800万円
の赤字は覚悟せねばならないということ。
この想定される赤字額と純資産と比べて、どれくらいの期間この状態が続いても債務超過に転落はしないかという最悪の事態を想定できるわけです。
どれくらい赤字になるのかがわからないというモヤモヤした状態のほうが不安が大きく、最悪の事態を想定したほうがむしろ、腹をくくるのにはいい。
また、この最悪の状態から赤字を減らし、ギリギリ赤字に耐えられる期間を伸ばすためには、固定費をどう削減するかを考えることができるようになるものなのです。
資金が底をついたらゲームオーバー
もちろん、この検証は、赤字と純資産という「利益計算」から出されたもの。その手前に手許の預金が底をついてしまったら、その時点でゲームオーバーです。
逆に言えば、いくらでも借りられればどんなに赤字でも会社は潰れない。ただ、そのお金を借りるのが債務超過になると格段に難しくなるので、一気に倒産しやすくなるということです。
「手許のお金がないので決済のために赤字受注をしてさらにお金が足りなくなる」という負のスパイラルに陥ることを避けるためにも、とにかく手許資金の金額を大きくできるよう可能な限りの借り入れをして、できるだけ”高台に逃げよ”と言っているわけです。
なお、「手許の資金がどれだけの期間持つか」と言うのは、将来の収入(良好、普通、最悪の3パターンくらい)と支出を予想した資金繰り表を作ってみればわかるでしょう。
最悪、債務超過になったとしても、すぐに倒産するわけではないですからね。
逆に、もし、お金が余ったら、返せばいい。
「必要なときだけ必要な額を借りればいい」という資金繰りの基本は、この緊急時には使えないということは、緊急融資にこれだけの時間がかかる現状をみれば、明らかじゃないですか。
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