仮想通貨(暗号資産)は決算期で時価評価をする?しない?

値動きが乱高下する仮想通貨

一時期のブームは去ったもののその値動きの粗さから投資目的での取得がされることの多い「仮想通貨」。

今は「暗号資産」と呼ばれるんでしたっけ。

この仮想通貨の譲渡損益については、個人であれば「雑所得」とされます。雑所得は儲かったときには給与所得など他の所得と合算の上累進課税による総合課税がされるのに、損をしたときにはその損失は給与所得等とは合算ができない不利な取り扱いを受けます。

そこで、法人で仮想通貨取引をするということも多いでしょう。

では、この仮想通貨を法人で所有した場合、期末時点で時価評価をする必要はあるのでしょうか?

そこで、今回は、有価証券の期末時点での評価方法についてまとめてみることにします。

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有価証券についてはその目的により期末時の評価方法が異なる

法人税法では、法人が所有する有価証券については、その所有目的により以下のように期末時の評価方法が異なると定められています。

(1)売買目的有価証券

売買目的有価証券とは、一言でいうと「短期的な価格の変動を利用して利益を得る目的で取得した有価証券」として政令で定めるもの。

例えば、専任のトレーダーが売買を繰り返す有価証券のことです。

第百十九条の十二 法第六十一条の三第一項第一号(売買目的有価証券の評価益又は評価損の益金又は損金算入等)に規定する政令で定めるものは、次に掲げる有価証券(第百十九条の二第二項第二号(有価証券の一単位当たりの帳簿価額の算出の方法)に掲げる株式及び出資に該当するものを除く。)とする。

一 
内国法人が取得した有価証券(次号から第四号までに掲げる有価証券に該当するものを除く。)のうち、短期的な価格の変動を利用して利益を得る目的(以下この号及び次号において「短期売買目的」という。)で行う取引に専ら従事する者が短期売買目的でその取得の取引を行つたもの(以下この号において「専担者売買有価証券」という。)及びその取得の日において短期売買目的で取得したものである旨を財務省令で定めるところにより帳簿書類に記載したもの(専担者売買有価証券を除く。)

二 
金銭の信託(法第十二条第一項ただし書(信託財産に属する資産及び負債並びに信託財産に帰せられる収益及び費用の帰属)に規定する信託を除く。)のうち、その契約を締結したことに伴いその信託財産となる金銭を支出した日において、その信託財産として短期売買目的の有価証券を取得する旨を財務省令で定めるところにより帳簿書類に記載したもののその信託財産に属する有価証券

三 
適格合併、適格分割、適格現物出資又は適格現物分配により被合併法人、分割法人、現物出資法人又は現物分配法人(以下この号において「被合併法人等」という。)から移転を受けた有価証券のうち、その移転の直前に当該被合併法人等において前二号又は次号に掲げる有価証券とされていたもの


四 
内国法人が第百十九条第一項第五号、第六号、第八号、第九号又は第十一号(有価証券の取得価額)に規定する合併、分割型分割、株式分配、株式交換又は株式移転(以下この号において「合併等」という。)により交付を受けた当該合併等に係る合併法人若しくは同項第五号に規定する親法人、分割承継法人若しくは同項第六号に規定する親法人、同項第八号に規定する完全子法人、株式交換完全親法人若しくは同項第九号に規定する親法人又は株式移転完全親法人の株式(出資を含む。以下この号において同じ。)で、その交付の基因となつた当該合併等に係る被合併法人、分割法人、現物分配法人、株式交換完全子法人又は株式移転完全子法人の株式が前三号に掲げる有価証券とされていたもの

この売買目的有価証券については、期末時の評価を時価法により評価した金額(時価評価金額)とします。

つまり、譲渡はしなくても、売買目的有価証券は、含み損益について、決算の都度、益金または損金に計上をするということです。

(2)売買目的以外有価証券

上記の売買目的有価証券ではない有価証券については、原価法により期末評価をします。

これは、取得したときの原価で評価をするということ。

つまり、一般に企業が保有するであろう「売買目的以外有価証券」については、譲渡をするまでは含み損益を計上はしないということです。

仮想通貨は時価で期末評価と明示

では、仮想通貨については、期末時の評価はどうなるのでしょう。

これまで、その取扱いについては明示がされていませんでしたが、平成31年度税制改正大綱により、平成31年4月1日以後に終了する事業年度から、一定の要件を満たす「活発な市場が存在する仮想通貨」については、期末時に時価評価が必要とされることが明示されたのです。

つまり、法人が仮想通貨を保有している場合、決算の都度、評価損益を益金または損金に算入するという処理を繰り返し洗い替えにより行う必要があるということです。

「活発な市場が存在する仮想通貨」とは、法人が保有する仮想通貨のうち次の要件の全てに該当するものをいいます。

イ 継続的に売買価格等が公表がされ、かつ、その公表がされる売買価格等がその仮想通貨の売買の価格又は交換の比率の決定に重要な影響を与えているものであること。

ロ 継続的に上記イの売買価格等の公表がされるために十分な数量及び頻度で取引が行われているこ
と。

ハ 次の要件のいずれかに該当すること。
 (イ) 上記イの売買価格等の公表がその法人以外の者によりされていること。
 (ロ) 上記ロの取引が主としてその法人により自己の計算において行われた取引でないこと。

仮想通貨に関する税務上の取り扱いについて(Q&A)|国税庁

つまり、ビットコインやイーサリアムなど取引所で売買されるような仮想通貨については、期末時に時価評価が必要で含み損益を計上するということですね。

取引所で取り扱われないようなよくわからない「草コイン」はケースバイケースということでしょう。

その期末時の評価方法については、移動平均法またが総平均法による原価法によるものと定められています。

 

ただ、現実に仮想通貨の間で転売を繰り返されると、譲渡損益額の計算はもうお手上げ状態になります。

確かに計算ツールなるものもあるにはあるのですがうまく動かないことも多く、結局Excelで無理やりルールを定めて計算するということもあるはず。

税務調査でも、最初は税務署員も「どうなってるんだこの処理は」と息巻いてみたものの、「おまかせしますからそちらで計算してください」というと、最後には「まあ、ここは触らないようにしましょ」ということになりがちなんですよね。

税理士としては、「仮想通貨は、決算の前に一旦全部売ってくれや」と言いたくなるものなのです。

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