クラウドファンディングの課税関係と資本コスト|人からお金をもらってタダで済むわけがない

クラウドファンディングという資金調達方法

クラウドファンディングとは、クラウド(群衆)から広く資金調達をする方法のことで、元々は「こんなことをやりたいけどお金がない。お金さえあれば」という主催者の思いに共感した人からお金を募る仕組みのことです。

実は、群衆から広く資金を調達する方法としては、寺院の改修費用などを信者から集める際の「勧進」という仕組みなどが昔から用いられてきました。決して全く新しい資金調達の方法ではありません。

それがインターネットにより、より広範な人たちに対して、スマートに行われるようになったことで注目されるようになったということでしょう。

では、このクラウドファンディングで資金を調達した場合、税金や資金調達コストはどれくらい掛かるのでしょうか?

そこで、今回は、クラウドファンディングで資金を調達した場合の課税関係とその資金調達のコストについて考えてみようと思います。

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クラウドファウンディングの課税関係

クラウドファンディングは、お金を出した人が有する権利関係により次のように別れます。

(1)投資型

投資型のクラウドファンディングとは、そのお金の提供の見返りとして、主催者に対して出資持分を求めたり、期日に資金の返済を求めるものです。

これは、さらに「出資型」と「融資型」に分かれます。

出資型であれば、クラウドファンディングでお金を集めた者に対して、出資持分を要求し、融資型であれば、条件に応じた元金返済と利息支払いを要求するでしょう。

この点については、広く思いに共感した人からお金を募っているものの、特定の者から融資や出資を受けるのと何ら変わりはありません。

ですから、この投資型のクラウドファンディングで資金を集めたとしても、その時点では、主催者に課税関係は生じません。 出資型であれば「資本金」、融資型であれば「借入金」として経理処理をすればよいのです。

(2)購入型

購入型のクラウドファンディングというのは、そのお金の提供の見返りとして、何らかの商品や役務の提供を求めるというものです。

具体的には、主催者の思いを叶えるための応援をし、その主催者の思いが実現した成果物としての商品や役務の提供を受ける。

主催者への応援という考えがベースにはあるのでしょうが、経済的には、お金を払って商品や役務提供を受けるという通常の販売行為となんら変わりがありません。

ですから、主催者からすると、お金を受け取った時点では前受金とし、商品を手渡したり、役務提供が完了した時点で売上高が計上されることになるのです。

(3)寄付型

寄付型のクラウドファンディングとは、お金は提供するものの、主催者に対して何らの見返りも求めないものです。

主催者からすれば、返還を要しないことが確定しているため、お金をもらった時点で贈与を受けたことになります。

贈与を受けた場合の課税関係は、お金をもらった側とお金を払った側が個人なのか法人なのかによって次のように異なります。

お金をもらった側が個人の場合

(1)お金を払った側が個人の場合

贈与税の課税対象となります。

なお、その人がその年に受けた贈与の額の合計金額が110万円までは非課税となります。

(2)お金を払った側が法人の場合

一時所得となり所得税の課税対象となります。

なお、ふるさと納税の返礼品などと合わせて次の算式で計算された金額が一時所得となり、給与所得など他の所得と合算されて総合課税の対象となるのです。

一時所得=(総収入金額ー必要経費ー50万円)☓1/2

お金をもらった側が法人の場合

お金を払った側が、個人であれ、法人であれ、もらった金額が益金となり法人税の課税対象となります。

クラウドファンディングの資金調達コスト

銀行からの融資であれば、約定通りの返済だけでなく金利の支払いも求められるものが、クラウドファンディングであれば、応援だからそれが求められない。

なんとも良いこと尽くめで有利な資金調達方法のようですが本当にそうでしょうか?

クラウドファンディングを組成するためには、クラウドファンディング運営業者への支払いなどの費用が掛かります。

例えば、クラウドファンディングサイトCAMPFIREでは、集まった支援金の17%(税別)の手数料が差し引かれます。銀行の融資と比べればかなり高いです。

さらに、資金調達をする際には、お金を出す人の期待に応えるためのコストである金利や配当など「資本コスト」にも気を配る必要があります

そこで、ここでは、その「資本コスト」を通常の銀行の融資と比較してみることにします。

(1)融資型の調達コスト

融資型であれば、クラウドファンディングであっても銀行からの融資と同様に返済も金利の支払いも求められます。

一般的には、銀行からの融資は受けづらいが故にあえて融資型のクラウドファンディングでお金を集めたわけですから、その金利水準は、金融機関からの融資よりもかなり高めになります。

(2)出資型の調達コスト

出資型であれば、事業が成功したら時には配当金の支払いはするものの、失敗してもその返還義務も金利の支払いの義務もありません。

融資に比べるとなんとも有利な条件のようです。

そのため、中には、必要資金の調達については、出資のほうが”優れた資金調達方法”としてまずは検討すべきものであり、それが出来ないために渋々融資を受けているかのように考えている方もいるようです。

しかし、現実には、それは全くの誤解です。

というのは、出資をする側の立場に立ってみればわかります。

例えば、友人の会社に返済期限1年後、年利2%で融資をするとしましょう。

その時に、友人から「融資ではなく出資にしてくれ」と言われたらどうでしょうか?

儲かったら配当するなどという曖昧な約束では、融資と同じ年利2%のリターンで出資など出来ないでしょう。

融資の10倍ないし20倍以上のリターンが期待できなければ、とてもじゃないが出資などする気にはなりません。

回収に不安がある分だけ、出資のほうが融資よりも「お金を出す側の期待リターン」ははるかに高いのです。

この「お金を出す側の期待リターン」は、そのまま「お金を受け入れる側の資金調達コスト」となります。

なぜなら、お金を出す人の期待に応えないと次に誰もお金を出してくれなくなるからです。

つまり、お金を出す側の期待リターンの高い出資のほうが、お金を受け入れる側の資金調達コストは銀行の融資よりも圧倒的に高いということなのです。

事実、出資をしたら、株主として議決権を行使し経営に参画できる上、過去の純資産と将来稼ぐお金についてもその持ち分相当を有することになる。

儲かってからその出資持分を買い戻すとすれば、出資者は相当に高い金額を要求するでしょう。

「出資なら融資と違って利息も元本の払わなくても良い」などと自分に都合の良いことだけを考えて出資を受けたのであれば、この時点で、「実は、出資はコストが高い」という意味に気がつくはずです。

その上、融資のコストである利息は法人税法上損金になりその税効果だけ負担は軽減されますが、出資のコストである配当は損金にならず、同じ支払い額であっても、コストは融資の方が税効果分だけ安く済むのです。

出資の方が融資よりも調達コストが高いワケ|オーナー社長にとっての自己資本

(3)購入型の調達コスト

購入型のクラウドファンディングでは、当然のことながら、出資者に対して、商品や役務の提供をしなくてはなりません。

お金を出す側も主催者の思いを実現してほしいという応援の意思はあるにしても、「購入型」の場合には、多くの人は、その「お礼」が「購入に要するお金」に比べて有利であると判断することでそのクラウドファンディングに応じているのでしょう。

つまり、購入型のクラウドファンディングは、顧客の認知を得るために時には原価割れ覚悟で行うオープニングセールのようなものなのです。

購入型のクラウドファンディングは、SNSなどを通じてファンを獲得し、どれだけ早く目標額を大きく上回る資金を集めることが出来たのかをアピールすることで、事業の”着火剤”としては大いに役立つことでしょう。

しかし、決して「もらったお金」ということではなく、その後に通常よりも利益率の低いことを覚悟で商品や役務の提供をする責務を負っているという当たり前の事実を理解しておく必要があるのです。

(4)寄付型の調達コスト

では、なんらの見返りを求められない寄付型のクラウドファンディングはどうでしょう?

なんらの見返りも求められていないのですから、その資金調達コストは0となる。

果たしてそうでしょうか?

むしろ、なんらの見返りを求められていないからこそ、調達コストは高いのではないかと。

お金を出す側は本心から「応援の趣旨でしたものでお礼など要らない」とは言っても、当然、主催者がその思いを実現することを期待しているはずです。

出資のところで説明をしたように、お金を出す側の期待は、そのままお金を受ける側のコストになるのです。

例えば、主催者がその事業の履行のために全力を注いでいないとか、逆に成功をした後でまるで自分ひとりで成功したかのように「オラついている」姿を見れば、期待をした人ほど裏切られたという気持ちは強くなるのではないかと。

当然、そういう人が次も応援してくれることはないどころか、強い恨みをもって去っていくことでしょう。

それは熱愛報道が出たアイドルのファンを見ればわかります。

「何も返さなくてもよい」と心からの応援をする人ほど、実は、主催者に対する期待も大きいものなのです。

つまり、何も見返りを求めないというお金を受け取るほうが、その恩義に応えるという重責を担うことになるため、銀行の融資よりも資金調達のコストは高くなると覚悟すべきでしょう。

 

確かに、クラウドファンディングは、ファンと巻き込みながら事業の初速アップに寄与することもある魅力的な資金調達の方法ではあります。

しかし、クラウドファンディングは自分の信用を担保にした資金調達であることを肝に銘じておかねばなりません。

その分、クラウドファンディングは、お金を出してくれた人に対してより誠実な対応が求められるのです。

もらった側が忘れがちだが、金額に関わらず出した側は忘れていないのが「お金」というものではないかと

ですから、それだけ”重たい”資金調達方法が今のあなたにとって最適な資金調達方法なのかを考えて実施する必要がある。

資金調達の世界に決して”タダメシ”など存在しないのです 。

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