インボイスがなくても仕入税額控除が可能なのは?
消費税の仕入税額控除に適格請求書が必須に
2023年10月、消費税法にはインボイス制度が導入されます。 これは、消費税の計算上、課税売上に係る消費税額から差し引く課税仕入に係る消費税(仕入税額控除)については、「原則として」登録した適格請求書発行事業者が発行した「適格請求書」(インボイス)が必要になるということです。
原則があるということは例外もある。
そこで、インボイス制度になっても適格請求書(インボイス)なしで仕入税額控除ができるのはどんな時なのかについてまとめてみることにします。
電車賃、自動販売機、郵便切手など
商品を購入したり役務提供を受けたりしてお金を支払う「買い手」は、課税期間の末日の翌月から2ヶ月を経過した日から7年間、この適格請求書を保存しなくてはいけません。
インボイスがなくても仕入税額控除が可能なのは以下のものに限定されます。
① 3万円未満の公共交通機関(船舶、バス又は鉄道)による旅客の運送
② 出荷者等が卸売市場において行う生鮮食料品等の販売(出荷者から委託を受けた受託者が卸売の業務として行うものに限ります。)
③ 生産者が農業協同組合、漁業協同組合又は森林組合等に委託して行う農林水産物の販売(無条件委託方式かつ共同計算方式により生産者を特定せずに行うものに限ります。)
④ 3万円未満の自動販売機及び自動サービス機により行われる商品の販売等
⑤ 郵便切手類のみを対価とする郵便・貨物サービス(郵便ポストに差し出されたものに限ります。)
②と③は特別なものなので、ざっくりといえば、インボイスが不要なのは「公共交通機関、自販機、郵便切手」のみと考えて良いでしょう。
さすがにこれらはインボイスなんか発行してる余裕はないですよね。
現行では、帳簿の記載のみで仕入税額控除の認められている「3万円未満の仕入れ」についても、原則としてインボイスの保存が必要になるので注意が必要です。
クラウド会計システムを経由させて会計処理をしたクレジットカード決済分は、法人税については領収証の保存は不要になりましたが、消費税の課税事業者(簡易課税は除く)は、結局インボイスの保存が必要になります。
現在、適格請求書の記載内容を電磁的記録で提供する「電子インボイス」の規格作成が電子インボイス推進協議会で進められています。
インボイス制度導入を機会に請求書等のやり取りについては、紙から電子データへ移行することを願っています。
買取業者の免税事業者・個人からの販売用の仕入れ
個人消費者が買取事業者に販売をする場合、自分が受け取る代金に消費税が上乗せされているかなど興味はありません。
結果的に、実質的に消費税は上乗せされることなく買取価格が設定されているはずです。
それなのに、買い取った側では、その買取価額には消費税額が含まれているものとして仕入税額控除ができる”おいしい”状態になっています。
それがインボイス制度に変わることで、個人消費者や免税事業者からの仕入れについては、今までできていた仕入税額控除ができなくなる。
その結果、同じ金額の仕入れをしていても、課税事業者(簡易課税事業者の除く)である、マイホームを買い取る不動産業者、リサイクルショップ、中古車販売業者など個人からの仕入れの多い業者については、インボイス制度により、消費税の納税額が大幅に増えることになります。
その影響はあまりにも大きいという判断からか、次のような例外規定が設置されました。
なお、請求書等の交付を受けることが困難な、次の取引については、一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められます。
古物営業、質屋又は宅地建物取引業を営む事業者による適格請求書発行事業者でない者からの古物(※)、質物(※)又は建物(※)の購入 ※買い手の棚卸資産として購入する場合に限ります。
つまり、古物営業、質屋又は宅地建物取引業を営む事業者の売却目的での仕入れについては、今までどおり免税事業者や個人消費者からの買い取りについても消費税の控除が可能となったのです。
これは、あくまでも販売目的での仕入れについてです。
これらのリサイクルショップや中古車販売業者、宅建業者であっても、販売目的以外の自ら使用するものや諸経費支払いなどの課税仕入については、その仕入税額控除を受けるにためにはインボイスが必要となるのです。
(簡易課税を選択した事業者は不要です)
小規模事業者のための緩和措置(2022.12.16追記)
令和5年度税制改正大綱により
・基準期間(2期間前)の課税売上高が1億円以下または特定期間(前期の前半6ヶ月)の課税売上高が5,000万円以下の事業者は
・令和5年10月1日から令和11年9月30日までの仕入れについては、
・支払対価10,000円未満であれば帳簿の記載のみで仕入税額控除が可能
つまり、インボイスの保存は不要となりました。
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