おい、やめろ!報酬等の支払調書でインボイス制度での仕入税額控除が可能に
2023年10月以降のインボイス制度では適格請求書が必要
2023年10月より消費税にはインボイス制度が導入されます。
これは、消費税の納付額の計算上控除できる消費税額は、登録した適格請求書発行事業者(以下「適格事業者」)が発行する適格請求書(インボイス)に記載された金額によるものとするという制度です。
インボイス制度では、売り手は買い手の求めに応じて適格請求書を発行する義務を負い、買い手が消費税の納付額の計算上仕入税額控除をするには、その適格請求書を保存することが義務づけられます。
一般的な商取引では、お金をもらう売り手が請求書・領収証を発行しますが、デパートなどでは、買い手が仕入れた商品の内容を記載した「仕入明細書」を売り手に提示し、売り手の承認を得ることもあり、この仕入明細書についても適格請求書と取り扱うことが可能です。
さて、原稿料、講演料、士業の報酬などで一定金額以上のものについては、支払者が相手先の住所、氏名、支払金額を記載した「支払調書」を税務署に提出をしなくてはなりません。
そこで、このインボイス制度下でも原稿料などの報酬等の支払者が、適格請求書に必要な事項が記載することで、この支払調書を仕入税額控除が可能な仕入明細書とされることになりました。
今回は、報酬等の支払調書をインボイス制度下での適格請求書とするための注意点についてまとめてみようと思います。
支払調書の提出範囲
前年の1月1日から12月31日までに以下の金額の報酬等を支払った場合、翌年1月31日までに「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」を税務署に提出する必要があります。
(1)外交員、集金人、電力量計の検針人およびプロボクサー等の報酬・料金、バー、キャバレー等のホステス等の報酬・料金、広告宣伝のための賞金については、同一人に対するその年中の支払金額の合計額が50万円を超えるもの
(2)馬主に支払う競馬の賞金については、その年中の1回の支払賞金額が75万円を超えるものの支払を受けた者に係るその年中のすべての支払金額
(3)プロ野球の選手などに支払う報酬、契約金については、その年中の同一人に対する支払金額の合計額が50,000円を超えるもの
(4)弁護士や税理士等に対する報酬、作家や画家に対する原稿料や画料、講演料等については、同一人に対するその年中の支払金額の合計額が50,000円を超えるもの
(5)社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬については、同一人に対するその年中の支払金額の合計額が50万円を超えるもの
提出範囲の金額については、消費税および地方消費税の額を含めて判断しますが、消費税および地方消費税の額が明確に区分されている場合には、その額を含めないで判断しても差し支えありません。
なお、
・法人に支払われる報酬・料金等で源泉徴収の対象とならないもの
・支払金額が源泉徴収の限度額以下であるため源泉徴収をしていない報酬・料金等
についても、支払調書の提出範囲に該当する場合には、支払調書を提出する必要があります。
12月決算以外の法人への支払いは各法人の課税期間に
個人事業主は、その事業年度は暦年(1月1日から12月31日)であり、支払調書の対象期間と一緒であるため、支払調書に適格請求書に必要な事項を記載すれば、そのまま仕入明細書としてインボイス制度下で仕入税額控除が可能な適格請求書となります。
しかし、相手先(買い手)が法人の場合、12月決算以外では、支払調書の集計期間と買い手の事業年度にズレが生じるため、支払調書をそのまま交付したとしても買い手ではそれを自身の課税期間の適格請求書とすることはできません。
ですから、支払調書をそれぞれの相手先の課税期間(決算期)に合わせて支払金額を記載する必要があるのです。
支払調書を相手先に交付するのはやめよう
いやいやいや、なんで、売り手が買い手のためにそんな面倒なことをしないといけないのでしょうか。
ただでさえ、支払調書なんていう税務署の調査の手伝いのようなことを押し付けられているというのに。
そもそも、勘違いをしている方が多いのですが、支払調書は税務署に提出するものであり、相手先(買い手)に交付するものではありません。
その様式が以前の源泉徴収票に似ていたため、士業など報酬から源泉徴収をされる事業者は、この支払調書を確定申告書に添付をしなくてはならないと思い込んでいる人も多数います。
そのため、確定申告時期になると士業の方から「いつになったら、支払調書を送ってくるのだ!」とクレームを入れられ、ただでさえ、イラついている税理士が「支払調書は税務署に出すものだ、プロなんだから、自分の売上ぐらい自分で集計しろや!」と応戦するという不毛な争いが各所で行われることになるのです。
適格請求書となる支払い明細は支払いの都度発行しているのですから、なんでわざわざそれを集計したものをもう一度発行しなくてはいけないのかと。
どうしても、それらの集計になれていないプロではない方への講演料や原稿料などは、買い手側の利便性を考慮し、売り手の好意として1年間の支払金額や源泉徴収額を記載したものを交付することはあるかもしれません。
ですが、その際にも、支払調書が確定申告書に必須の添付書類との誤解をこれ以上受けないよう、その支払金額等をExcelなどで集計するシートを作成して支出する度に入力しておき、その集計表をメールなどに添付して送付をすればよいでしょう。
税務署としては、インボイス制度での事務負担をできるだけ軽減しようという配慮かもしれませんが、悪しき慣習を増長させるようなことをしないでほしいわ。
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