収入300万円以下の副業を雑所得とする税制改正は残念ではなく当然

事業所得と雑所得の区分に具体的な基準が

国税庁が、「所得税基本通達の制定について」(法令解釈通達)の一部改正(案)(雑所得の例示等)についての意見募集(パブリックコメント)を開始しました。

その内容の中で注目すべきなのは、副業収入についての「事業所得」と「雑所得」の判断基準を明確にしようとするもの。具体的には、副業収入が300万円以下の場合には、特に反証のない限り「雑所得」にするというものです。

そこで、今回は、副業についての事業所得と雑所得の明確化についてまとめてみようと思います。

事業所得と雑所得の判断基準は曖昧

所得税法上、所得はその発生原因などにより10の種類に区分けされています。

その中の一つ「事業所得」とは、農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業を営んでいる人のその事業から生ずる所得をいいます。

一方で、残り9つのどれにも該当しない所得を「雑所得」といいますが、この「事業所得」なのか「雑所得」なのかの区分が曖昧でよくわかりません。それなのに、事業所得と雑所得ではその取扱が大きく異なるのです。

事業所得 雑所得
青色専従者給与 ×
青色申告特別控除 最大65万円控除 ×
他の所得との通算 ×
純損失の繰越控除 ×
事業税課税対象 ×
所得税確定申告不要 × 一定の要件で20万円未満

 

事業所得か雑所得かの判断基準については「社会通念による」とされており、事業所得の要件について、

最高裁判所では、「給与所得と事業所得」との判断基準として示した「自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ反覆継続して遂行する意志と社会的地位とが客観的に認められる業務から生ずる所得を事業所得」としたものを踏襲した上で、「雑所得と事業所得」との判断基準として、その「事業といえる程度の規模・態様」についても言及しています。

具体的には

(1)自己の計算と危険においてする企画遂行性の有無

取材活動、営業活動が実際に企画遂行されていた

(2)精神的肉体的労務の投入の有無について

その業務に従事していた時間が限定的なものとはいえない程度である

(3)人的・物的設備の有無について

その事業を遂行するのに必要な物的設備を有し人員の配置をしている

(4)職業・経験及び社会的地位について

生活に十分な給与収入を他から得ていることなどがない

これらを総合的に勘案した上で、事業所得か否かを判断するということです。

しかし、どの要件も明確な基準はなく、ものすごく乱暴に言えば、実務上は「自分が事業だと言ったら事業」という取り扱いになっていたといえます。

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収入金額300万円以下の副業は原則として雑所得に

今回の改正案でも、「事業所得」と「雑所得」のどちかに該当するかは、“その所得を得るための活動が、社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうか”で判定することが原則とはしています。

しかし、“その所得がその者の主たる所得でなく、かつ、その所得に係る収入金額が300万円を超えない場合”には、特に反証のない限り、「雑所得」に該当するとしているのです。

これは、副業の収入金額が300万円を超えさえすれば、「事業所得」となるわけではなく、その判断は、社会通念によるが、その副業の収入金額が300万円以下なら、特に反証のない限り「雑所得」だということです。

この改正が実施されると、収入が300万円以下の副業にかかる所得は雑所得であり、事業所得では適用可能な「青色申告特別控除」や「赤字について他の所得との通算」などが適用できないということです。

背景には副業を事業所得とする悪質な租税回避の流布

なぜ、こんな改正が提起されたかというと、副業による所得を事業所得として申告することによる悪質な租税回避行為をする輩が増えてきたからです。

事業所得の赤字は、給与所得など他の所得と通算された上、それでも相殺しきれない赤字については、翌年以降3年間に渡り繰り越して控除も可能です。(青色申告者の場合)

それであれば、「これは事業である」と主張しながら、ほんの僅かな収入に対して多額の必要経費の計上をすることで、多額の事業所得の赤字を生じさせ、その事業所得の赤字と給与等の所得を通算することで、源泉徴収された所得税の還付を受けることに加えて住民税の納付額を減らすことができてしまうのです。

黙ってやればいいことを大きな声でいってはいけない

この改正案については、不満の方も多いようですが、合理的に反論できるようなもんじゃないでしょう。

別に副業を禁止するわけでもないですし、副業収入が300万円以上ならなんの影響もない。逆に配達など少額の業務請負が赤字になることはまずないですし、その収入規模の人が、会計ソフトを使って貸借対照表まで作成した上で、電子申告をして青色申告特別控除を受けているイメージが湧かないです。

どうしても青色申告特別控除や他の所得との通算をするため、その副業は事業なのだが、特別の事情によりたまたま収入が300万円以下となったというのであれば、そのための「反証」を提示すればいいだけのことです

そもそもは、税務署だって暇じゃないし、少額の副業の申告で修正申告を求めたことなんかないのでは?ぶっちゃけ無申告だって山ほどあったはずですよ。

それを「37年間もの長期に渡って、事業所得と称したイラスト制作の赤字を給与所得と損益通算することで税金を全く払っていなかった」なんていう「さじ加減」を理解しない極端なことをされたら、そりゃ規制せざるをえない。むしろ、今まで何で規制しなかったんだと。

完全版無税入門

「マンションの消費税還付」もそうですが、あんなのは居住用の家賃が消費税非課税となった頃からそっとやられていたことなのに、まるで手柄を独り占めするかのように大々的に本に書いたり、セミナーをやったりするやつがいるから規制されるわけで。

租税回避を封じ込める改正へのクレームは、黙ってやればいいことを大きな声で言うやつに言いましょうよ。

租税回避は、法律のバグであり、発見されれば正しく修正されるのは当然のこと。なので、改正で封じ込められたら「ああ、そう。じゃあ、次に行くわ」という対応をすべきであり、グダグダ無理筋の反対論を叫んだところで第三者の共感を得ることはないのです。

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