【現実】税理士が10年間本を書き続けるとこうなったー本を書くという作業は割に合うの?合わないの?

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税理士が本を出すとどうなるのか?

ちょうどこれから監修させていただいた15冊目の本である
「個人事業での起業本」が発刊されますが、
最初に本を書いてからもう10年が経とうとしていることに気が付きました。

最初に書いたのも「起業本」なので、10年経ってまた元に戻ったというか。

士業やコンサルタントの方の中には、いつかは本を出したいと
思われている方もいると思います。

そこで、今回は、税理士が10年間に渡り15冊の本を出してみて
仕事にどんな変化があったのかを考えてみようと思います。

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読者ターゲットによって本業へのインパクトは全く異なる

大きく分けると私の著作は、
「中小企業経営者向け」と「一般ビジネスマン向け」に分かれます。

税理士としての顧客ターゲットは中小企業者向けであり、
その人達になんらかの問題解決策を掲示することで、
その主張に共鳴した方が顧問契約をしていただくというのが
本を書くことの理想です。

本気で中小企業経営者とその志願者向けに絞って書いた本というのは、
これらの本。

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残りの本は、法律的な事実などをまとめて解説した
いわゆる実用書と一般ビジネスマン向けのビジネス書になります。

実用書というのは、意外とロングセラーとなりがちで、
ビジネス書と言われるものが1万部も売れればヒットと
言われるのに比べてずっと部数も大きくなります。

一般ビジネスマン向けの本も先日出したばかりの本を除けば、
重版されるのは3割程度と言われる中ですべて重版されるなど、
これといった代表作がない代わりに、野球で言えば
「全てシングルヒットで出塁」といった状況。

結果として、その実用書と一般ビジネスマン向けに書いた本の
部数を合計すると、実は20万部を超えていることになります。

では、その本により、どれだけ顧客が増えたか?

結論は、直接的には0です。

もう一度いいますが、実用書と一般ビジネスマン向けに書いた本によって
税理士の顧問先となったお客様は0です。

なぜなら、いわゆる実用書は、著者独自の主張が強調されていないため
著者名が読者の印象に残りにくいのと、
そもそも一般ビジネスマンが税理士と顧問契約をしていただく
可能性はほとんどないからです。

では、中小企業経営者向けに書いたものはどうか。

5冊の総発行部数は4万部に届かないくらい。

「会社の財務」(日経BP社)は一冊約25,000円の高額本なので
実質的は4冊。

そのうち、一冊を除いては、全て3刷りまで重版されていて
概ね1万部ずつの販売になっています。

これらの本を経由して、どれだけ税理士の顧問契約につながったかというと
合計で50社程度にはなるはずです。

というのも、応援してくださるお客様が知人等に私を勧めてくださる際に
まとめて購入していただいた本をパンフレットのように手渡して下さった結果、
そこから顧問契約につながり、さらにそのお客様が別のお客様を
ご紹介いただくという連鎖になったから。

つまり、元々あったシステムの上で、これらの本が効果的なツールとして
機能したということです。

全くつながりのないところから、本を見て税務顧問契約を頂いたのは
おそらく10件程度ではないでしょうか。

だったら、WEBでPPC広告でも打った方がずっと効率よく
集客はできるでしょうね。

もちろん、実用書や一般ビジネスマン向けの本からでも顧客誘引に
繋げられる方もいると思うので、大切なのは、顧客誘引のための
仕掛け作りということだと思います。

少なくとも、本を出せば、勝手に向こうから顧問契約希望者が
殺到してくるということは私の経験からはなかったです。

一般ビジネスマン向けというカテゴライズをされるのはかなり危険

一般ビジネスマン向けと中小企業経営者向けでは、その市場規模は
10倍以上違うはずです。

そのため、部数は一般ビジネスマン向けの方が伸びやすく、
出版社からのオファーもそちらのほうが多くなりがちです。

部数が伸びれば自身の認知度も上がりますし、いただく印税も多くなる。
ただ、税理士が「一般ビジネスマン向け」というカテゴライズを
されるのは、チョット危険です。

と言うのは、一度「一般ビジネスマン向け」という認識がされると、
セミナー講師の依頼などは、そちら向けのものばかりになります。

「一般ビジネスマン向け」も「中小企業経営者向け」も両方やりますと
言っても、一度「一般ビジネスマン向けの人」というカテゴライズを
された人が、そこを抜け出すのは思いの外難しいものです。

実際に、ある著名セミナー主催会社などでも、一度「一般ビジネスマン向け」
として依頼がされた人には、まず「中小企業経営者向け」のセミナー講師の
依頼はしないと言っています。

セミナーというのは、すでに問題解決を求めた人が参加しているので、
そこで有効な解決策を提示することによって、参加者が顧客になってもらえる
可能性が高い機会です。

私自身も、ターゲットが絞り込まれた問題解決型のセミナーで講演をさせてもらった時に
一件も顧問契約をいただくことがなかったということも、あまりなかったと記憶しています。

その効果的な顧客獲得の機会を得る可能性を狭めてしまうというのは、
税理士としてはチャンスではなくリスクと考えたほうがよいでしょう。

ブランディング上有利になるのか?

本を出すことは「個人版のIPOをすること」などとおっしゃる人も
いるようですが、それは相当なインパクトのある主張をした本が
圧倒的な部数の販売ができた時ではないかなと。

少なくとも、私のような販売部数では、
街で誰かに声をかけられるようなこともないですし、
人生が変わるようなことも全くなかったですね。

ブランド人などには、絶対になれておりません。(汗

そもそも、出版社は著者のブランディングなど全く興味はないです。

良い本を作って一人でも多くの読者に届けるために汗をかいています。
そのために、自分が本当に伝えたい主張とは相容れない編集方針により、
著者と編集者がぶつかることもあります。

中には、販売部数を伸ばすために、知らないうちに
センセーショナルなタイトルにされていたり、
本人が全く言ってもいない煽り文が添えられることもあり、
それによって著者が批判をされるということもあります。

なんとも理不尽な話のようでもありますが、
お金をもらって本を出すということは、そういうことも
覚悟するということでもあるのです。

もし、自分のブランド構築を優先したいのであれば、
自費出版でやれば良いでしょう。

誰もが知っている大手版元でも、一定数量の部数を買い取る
という条件であれば、自分の書きたい本を出すことは可能です。

そのためには、中にはベンツ1台分くらいのお金は
用意しないといけないこともありますが、自分が思うように
ブランド価値を構築したいのであれば、その支出もやむを得ません。

(実際にブランド構築ができるかどうかは、保証できませんが)

本を書くという作業は割に合うの?合わないの?

結論から言うと、時間効率の高い仕事ができている
士業やコンサルタントの方であれば、
少なくとも本を書く時間で別の仕事をすることで、
いただく印税以上の報酬はまず間違いなく稼げるはずです。

自分で言うのもなんですが、私自身は本を書くのはかなり早い方で、
ライターさんに依頼しないでも、仕事が終わってからの時間と土日を使って、
早ければ3週間程度で一冊本を書き上げます。

それでも、ゲラチェックなどの作業も必要で、
税務申告書を書いていたほうがずっと時間単価は高いはず。

その点からすれば、本を書くことによって「機会損失」が生じているので、
本を書くのは「割にあわない」ということになります。

では、本を書くことは無駄なのでしょうか?

そんなことはないと思います。

私が本を書いたことで、本を出している別の世界のプロフェッショナルの方々と
共通認識ができて友人になることも出来ましたし、
中には、顧問先になっていただいた方たちもいらっしゃいます。
特に貴重なのは、どうすれば読者にわかりやすく伝わるのかと
ギリギリまで文章を考えたということが、
自分の知識や体験を整理することにつながり、それをそのまま
顧問先などに提供できたということです。

それに加えて、制作物としての本を編集者さんやデザイナーさんたちと
一緒に作るという作業そのものが、得難い貴重な体験で楽しいものなのです。

なので、本を書きたいと思っている方は是非そのチャンスを
つかめるよう頑張ったほうがよいでしょう。

* *

さすがに、15冊目の本を書き上げて、そろそろネタも尽きてきました。

これからも良い本を書くには、もっともっと経験を積んで
有用なインプットを増やさないといけません。

そのためにも税理士としての活動を今以上に頑張りますので、
今後ともどうぞよろしくお願い致します。

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