【定額減税】夫婦共働きの子供はどっちの扶養親族として加算すればいいの?
目次
定額減税は扶養親族についても加算可能
令和6年度については、物価高対策として「定額減税」が一年限りで実施されます。
金額は一人につき所得税30,000円、住民税10,000円の合計40,000円の減税となりますが、これまでの個人の所得に関する減税とは異なり、負担する税額が少なく、減税額を控除しきれない分については、別途給付をするいわば「給付付き税額控除」といえます。
「だったら、最初から、全額給付すればよいだろう」と誰もが思うのですが、政治的な思惑もあり、このような面倒な手続きになっています。
なお、この一人につき40,000円の減税は、納税者本人だけでなく、一定金額以下の所得しかない生計を一にする配偶者や子供、老親も含まれるのですが、夫婦ともに所得がある場合には、子供や老親をどちらに加算すべきなのか、どこで判定をすべきなのか、給与計算事務の担当者にとっての悩みは尽きなさそうです。
そこで、今回は、定額減税における夫婦共稼ぎの場合の扶養親族の取り扱いについてまとめてみようと思います。
定額減税の概要
定額減税対象者
所得税については、令和6年分の所得税に係る合計所得金額が1,805万円以下(給与収入のみの方の場合、給与収入が2,000万円以下)の者が対象となります。
住民税については、令和5年度の合計所得金額が1,805万円以下(給与収入2,000万円以下に相当)の者が対象となります。なお、均等割のみ課税される納税義務者は、別の給付金があるので、定額減税の対象外となります。
定額減税可能額
納税義務者本人および扶養親族数(控除対象配偶者および16歳未満の扶養親族を含む)に基づき以下の金額を減税します。
所得税分=3万円×減税対象人数
個人住民税所得割分=1万円×減税対象人数
ここでいう減税対象人数は、納税者本人+控除対象配偶者+扶養親族(16歳未満を含む)の数です。なお、国外居住者は除きます。
減税の方法
(1)所得税の減税
給与所得者に係る所得税の定額減税
令和6年6月1日以後、最初に支払われる給与等(賞与を含みます。)につき源泉徴収される所得税等から控除されます。控除をしてもなお控除しきれない金額は、以後、令和6年中に支払われる給与等につき源泉徴収されるべき所得税等の額から順次控除されます。
公的年金等の受給者に係る所得税の定額減税
令和6年6月1日以後、最初に支払われる公的年金等につき源泉徴収される所得税等から控除されます。控除してもなお控除しきれない金額は、以後、令和6年中に支払われる公的年金等より源泉徴収される所得税等から順次控除されます。
事業所得者等に係る所得税の定額減税
原則として、令和6年分の所得税の確定申告の際に所得税額から控除されます。
なお、予定納税の対象者については、確定申告での控除を待たずに、令和6年6月以後に通知される予定納税額から納税者本人分に係る金額が控除され、同一生計配偶者又は扶養親族に係る金額については、予定納税額の減額申請の手続により控除が可能です。
控除しきれない所得税の定額減税
上記では、控除しきれない所得税の定額減税額については一定の計算方法に基づき自治体から給付がされます。
(2)住民税の減税
給与所得に係る特別徴収(給与所得者)
令和6年6月分は徴収されず、定額減税「後」の税額が令和6年7月分~令和7年5月分の11か月で均して徴収されます。
普通徴収(事業所得者等)
定額減税「前」の税額をもとに算出された第1期分(令和6年6月分)の税額から控除され、控除しきれない場合は、第2期分(令和6年8月分)以降の税額から、順次控除されます。
公的年金等に係る所得に係る特別徴収(年金所得者)
定額減税「前」の税額をもとに算出された令和6年10月分の特別徴収税額から控除され、控除しきれない場合は、令和6年12月分以降の特別徴収税額から、順次控除されます。
夫婦両方の所得税額から扶養親族分の減税は不可
扶養する子供について、納税者本人の定額減税額に加算することはできますが、夫婦二人とも所得があるからと言って、同じ子供を夫婦両方の定額減税の加算対象者にすることはできません。
この考え方は、扶養控除のときと同じであり、夫婦間の話し合いにより、どちらか片方にのみが加算対象になります。
さて、夫婦共に給与所得者の世帯であれば、それぞれの勤務先が、毎月徴収される所得税から減税額を控除していくという作業を行います。
なお、定額減税について、どちらの納税者の扶養親族とするかの判定は、会社に既に提出がされた
・給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
・従たる給与についての扶養控除等申告書
のほか、今回別途提出がされることもある
・源泉徴収に係る定額減税のための申告書
により、定額減税の加算対象にするかを判定するということになります。
このあたりも、これまでの扶養控除と大きく変わりはありません。
ただ、扶養控除と異なり注意すべき点もあります。
これまでは、16歳未満の子供については、扶養控除の対象にならないため、扶養控除申告書の住民税の欄に記載をしないこともあったと思います。
ですが、この定額減税については、扶養親族の年齢による区別はないので、これまで記載をしていないこともある16歳未満の子供についても、きちんと住民税の欄に記載をすることが必要です。
給与計算事務の担当者はこの点については、従業員に徹底する必要があるでしょう。
適用除外の高額所得者は配偶者側で減税を受けることも
今回の定額減税については、合計所得金額1,805万円(給与収入だけなら2,000万円)超の納税者は適用がされません。
しかし、年の途中では、その年の年収が判明しないのに、既に6月からは減税事務が始まってしまいます。
そのため、年の途中の「月次減税事務」の段階では、その年収による判定は行わないとされています。
つまり、仮に令和6年度の給与収入が2,000万円超となることが明らかであっても、一旦は月次減税事務により、無理やり減税を行う=源泉徴収税額を減らすということになります。
ですが、当然、合計所得金額が1,805万円超となった場合には、そのまま減税分をもらいっぱなしということにはならず、その給与収入が2,000万円超であれば確定申告により、一旦減税を受けた分をまとめて返さなくてはなりません。
頼んでもいないのに勝手に源泉徴収税額を減らされた分を後でまとめて返せとは、まるで国から借金をしているようなものであり、うかうかお金を使うこともできなくなってしまうでしょう。
もし、夫婦共働きで、一方が給与収入が2,000万円を超えることが明らかで、もう一方の配偶者がそうではない場合には、あえて定額減税においては、給与収入2,000万円以下の納税者の方の扶養親族として定額減税を受けることで、そのような理不尽な手続きを回避することはできることになります。
なお、既に勤務先に扶養控除申告書に扶養親族としての届出があったとしても、夫婦どちらもが扶養控除申告書の変更手続きをすることは可能であるとされています。
扶養控除はどうなるのか?
とはいえ、所得税については、課税所得が大きい部分ほど高い税率が適用される超過累進税率が適用されています。
ということは、その課税所得を減らす控除については、税率の”階段”が高い課税所得が高額の者から控除をしたほうが、税負担軽減の効果は大きいことになります。
そうなると定額減税では、給与収入2,000万円超の納税者が後でまとめて定額減税分を返すという理不尽な取り扱いを回避するため、配偶者の方の扶養親族としたものを、確定申告時に自分の扶養親族だと変更して申告をすることになると。
その場合には、当然、配偶者側で、定額減税受けていたけど、もう一方で扶養控除したいから、こちらの扶養控除からは外すとして、確定申告をやり直すということになるのでしょうか?
全く持って無意味な事務作業です。
やっぱり、年末調整一括でいいのでは?
中小企業においては、年末調整の時点で、扶養控除申告書をかき集めるのが一般的であり、その点からしても、こんなよくわからん手続きが必要になるくらいなら、従業員の了承が得られる前提ですが、所得税は、年収も扶養親族もはっきりする年末調整の時点でまとめて定額減税したほうがいいのではないでしょうか。
国はあくまでも、早期の給付を目指すという建前のために、表立って「年末調整一括の定額減税でよい」とは言わないとは思いますが。
たった一年の政治家の人気取りのような政策にそこまで付き合う必要あるんですかね。別に脱税しているわけでもないし、何のペナルティもないですから。
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